「好きなものだけに囲まれた家」中国料理研究家・「華都飯店」オーナー、馬衣真さんのご自宅を訪問

「必要なものより、好きなものを。古今東西、雑多にミックスされているけれど、どこか統一感があるのは、"好き"が共通ワードだからかも」
美しく朽ちた100年以上前の古い中国の棚に、やわらかな風合いのエルメスの木のテーブル。現代アート作品に、アンティークショップで見つけた古道具…。
東洋と西洋、新しいものと古いもの、名品と名もなきもの。部屋に集うベクトルの異なるアイテムたちは、まるで最初からそこに置かれるためにつくられたかと錯覚するくらい、見事に調和しています。
「考えてみれば、"必要"だからと選んだものはほとんどありません。どれも、理由はわからないけど、強烈に"好き"なものばかりです」





「インテリアのほとんどは、旅先で出合ったもの。旅の思い出やその土地の空気や歴史が感じられるから」
そう笑うのは、三代続く中国料理の老舗「華都飯店」のオーナー、馬衣真さん。創業者の孫娘として経営に携わる一方で、中国料理研究家としても活躍しています。
「シノワズリな家具や小物は、祖母や母から譲り受けたもの、実家から持ち込んだものなどもあります。でも、わが家のインテリアのほとんどは、海外、国内問わず、旅先で出合ったもの。夫婦で散歩途中にふらりと入ったアンティークショップやギャラリー、骨董市でひと目惚れして持ち帰ることが多いですね。滞在中のホテルやレストランで見かけて気になったものがあれば、似たものを後日インターネットで探して購入したこともあります。共通しているのは、直感で"好き!"と、ビビビッときたものだという点。恋に落ちるのと同じように理由なんてないんです(笑)。特にアンティークは一期一会ですから、あまり迷いません。そのせいで、帰路はスーツケースに入りきらない大きな荷物を抱えてたいへんな思いをしたことも…」



そんなアイテムたちは、旅先での思い出や、訪れた土地の空気感や歴史をまとっていて、一緒に暮らすとより愛着がわく、と衣真さん。
「必要なものより、好きなものを。古今東西のものが雑多にミックスされているけれど、どこか統一感があるのは、住む人の"好き"が共通ワードだからかもしれません。逆にいえば、心から好きだと感じないものは、たとえわが家のインテリアに合うとすすめられようが、今、必要なものだろうが、置かないかも。それゆえ、うちは数年間、ダイニングテーブルやソファ、コーヒーテーブルがない日が続きました。不便といえば不便でしたが、本当に気に入るものに出合うまでは妥協しない。そこは、夫婦に共通していますね」

馬さんのHouse DATA
●間取り…3LDK
●家族構成…夫と息子
●住んで何年?…約13年
「家で過ごす時間が長くなるからこそ、心地よい空間の大切さに気づきます」
居心地のよさと、洗練と。大きな窓から明るい陽光が入り込むリビングには、そこかしこにアートが。
「骨董も好きですが、今の時代をともに生きているアーティストの作品も好きです。リビングの絵は、窓から見える景色を描いてもらったもの。Ryu Itadaniさんの作品です。12、3年前、彼がまだ駆け出しのころに購入した作品を描き直してもらいました。十数年の間に変化した作家としての手法や、景色(ビルが増えました)が楽しめます。また、ずっと恋い焦がれていた美術作家・須田悦弘さんの作品も昨年、縁あってついにわが家に。時節柄、自宅にいることが多くなる今だからこそ、"好き"なものに囲まれた心地よい空間の大切さに、改めて気づく日々です」









- TEXT :
- Precious.jp編集部
- BY :
- 『Precious8月号』小学館、2020年
- PHOTO :
- 長谷川 潤
- EDIT&WRITING :
- 田中美保、古里典子(Precious)