カトラリーとロールキャベツの入ったお皿

ベルギーのレストランでサービスをしていたころ、予約が入ると、マダムはリストに「2couverts」「6couverts」と書いていました。couvertは、フランス語でカトラリーのこと。「何名様」を「何カトラリ ー分」だなんて、しゃれた言い回しだと感じたものです。

カトラリーといえば西洋食文化の真骨頂! と思いますが、食事用としてナイフ・フォーク・スプーンとそろえるようになったのは、意外にも、ガストロノミー革命が起こった18世紀以降。それまでは、大きな鍋や皿に入った料理を取り分けるために、調理道具としてのナイフやスプーンが使い回されていた程度で、基本的には“手食”でした。

スープは器代わりの硬いパンに入れ、具は手づかみ、汁はパンをちぎって浸して食べていたといいます。 ところで、イタリアのなんでもない食堂やスペインのバルに行くと、ナイフだけ、やけにごつい、でもよく切れるものが出てきます。ちょっと野蛮な感じもしつつ、「肉を食べるぞ!」と肉食本能が刺激されるようです。そこで気がついたのは、カトラリーはフォーマルなスーツのように、3 つぞろえである必要はないのだということ。

ひとつで何役もこなす箸と違い、カトラリーは、各々が本領を発揮して成立するもの。用途に応じ、ブランドやつくり手を入れ替えてみるのもいいと思うのです。

まだ春浅い日には、透き通った温かいスープに、春キャベツの緑が爽やかなロールキャベツをつくりたくなります。それも、スープストックから。鶏手羽と香味野菜を鍋に放り込み、じっくり煮出したスープはなんとも滋味深い味。キャベツと豚バラ肉と交互に包んでタコ糸でしばると、小さなプレゼントのよう。

あとは、スープの中でのんびりと熱を通します。3つそろったカトラリーは…スープのぬくもりをそのまま伝えてくれる木のスプーンと、硬さの違うキャベツと肉の層をきれいに切ってくれるナイフに替えて、今日の食卓に並べてみます。

<今回のアイテム:カトラリー> 食べ物を、食器から口へ運ぶのが食具=カトラリー。スプーンの語源は「木片・貝殻」で、自然の形を利用した石器時代からの原始的な道具。ナイフは紀元前15世紀に青銅製や鉄製のものが誕生して以降、調理にも使われるように。フォークは狩りに使われたさすまたが原型とも。西洋では手食文化が長く、カトラリーが各自用に並べられ始めたのは18世紀以降といわれている。

■ビクトリノックスのキッチンナイフ

左から/STトマト・ベジタブルナイフ¥1,000・グルメナイフ¥1,600(ともに税抜)

細かな波刃で、熟したトマトや果物もつぶさずに切れる。肉料理のテーブルナイフにも。

■クチボールのGOAシリーズ

左から/ディナー用のフォーク¥1,100・スプーン¥1,100・ナイフ¥1,800(すべて税抜)

ポルトガル発、機能とデザインが融合したシンプルな形は箸とも好相性。手になじむ。

■須田次郎さんの木のスプーン

左から/れんげ¥1,500・スプーン¥1,200(ともに税抜)

須田さんが自ら切った木や家具屋の端材でつくるカトラリーは、木目やゆがみなど素材の特徴が生きた風合い。

問い合わせ先

※この情報は2016年3月7日時点のものになります。詳細はお問い合わせください。

この記事の執筆者
TEXT :
城 素穂さん スタイリスト
2017.8.25 更新
1978年生まれ。デザイン事務所、スタイリストのアシスタントを経て独立。主に食まわりのスタイリングを中心に、雑誌や書籍で活動。2008年から1年間、ベルギー・アントワープのレストランで、食ともてなしを学ぶ。将来の夢は、おばあさんになったら、小さな食堂のマダムをやること。 好きなもの:食べること、つくること、旅行、器、古いもの、食に関する学術書、職人
クレジット :
撮影/濱松朋子 スタイリング・料理・文/城 素穂