美しく品性があって、繊細かと思ったらとても大胆で。おまけにユーモアもたっぷりある。〝エルメス〞というブランドは、つくづく所有する喜びを感じさせてくれる。ここで紹介するスニーカーもまた、その好例といえよう。
メゾンを象徴する鮮やかなスニーカー
エルメスの『ブーメラン』
エルメスが初めてスニーカーを世に送り出したのは、1998年のこと。当時「職人の手仕事が感じられ、裸足ではいても長持ちするレザーのスニーカーを」と提案して、それを形にしたのが、シューズ&ジュエリーのクリエイティブ・ディレクターを務めるピエール・アルディだ。構想から発表まで、実に3年の月日を要したというから、その道のりは簡単ではなかったことがわかる。それは馬具メーカーとして興り、受け継がれてきた伝統素材と現代的なスニーカーを結びつけることで実現した、ひとつの偉業でもあった。それから、二十余年。熟練の職人たちの手によって改良を重ね、その技術と叡智は現在のスニーカーに結実している。
それが、『ブーメラン』と名付けられた写真の逸品である。デザインは過去のアイコニックモデルをリファインしたもので、アッパーは最高級のカーフ製。そしてハイライトは、オールホワイトに映えるアウトソールのオレンジカラーだ。メゾンを象徴する鮮やかな色が足取りに合わせてリズミカルに覗く、なんとユーモアのある仕掛けであろうか!しかも、それがあなただけが知る秘密という点も愉しく、センスがいい。エルメスの『ブーメラン』はオレンジ色の足跡となって、大きな弧を描きながら街中を駆け巡るのだ。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2020年秋号より
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- PHOTO :
- 小池紀行(パイルドライバー )
- STYLIST :
- 菊池陽之介