好奇心と革新。1895年にパリで創業したベルルッティの核心には常にその言葉があった。一世紀を超えるベルルッティの熟練の靴づくりは、伝統や常識を覆す自由闊達な提案の繰り返しであったのだ。
茶や黒が通例とされた紳士靴の世界に、瑞々しく、鮮やかで、独創的な色を持ち込んだのは1980年代。これは、オルガ・ベルルッティの発明、パティーヌと呼ばれる着色技法が成し得た偉業である。トバコビス、オータムリーフ、キャビア…多彩なカラーパレットには想像力を搔き立てる名前が付けられている。
そしてオルガの発明はもうひとつ。漆器のように輝くパティーヌを可能にしたのが、その土台となるヴェネチアレザーだ。厳選された高品質皮革を使ったフルグレインレザーを特別な鞣なめし製法にかけることで、靴に格別のしなやかさと上質感を実現。かくして、今日のベルルッティの個性を確立する伝統技法が生まれたというわけだ。
見るものを圧倒し、履くものに気品を与えるベルルッティのスニーカー
そして、ベルルッティの世界観を唯一無二のものに押し広げたのが、2019年秋冬コレクションでクリエイティブディレクターを務めたクリス・ヴァン・アッシュだ。同年以降、クリスは自らの好奇心に従いベルルッティのレガシーに光を当てながら独創的なクリエイションでファッションの世界を革新し続けている。
こちらのスニーカーはその証左でもある。ヴェネチアレザー製のアッパーに大胆に描かれたのは、18世紀の手書き文書に着想を得たカリグラフィにオマージュを捧げた、定番モチーフのスクリットに見られるクレスト(紋章)をデフォルメしたもの。デザインで好奇心を刺激する『プレイタイム』という名のスニーカーは、きっと大人の週末を鮮やかに彩るはずだ。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2020年秋号より
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- PHOTO :
- 小池紀行(パイルドライバー )
- STYLIST :
- 菊池陽之介