1889年にローマで創業した「マリーニ」は、100%手作りによる、ビスポークのシューズブランド。王道のクラシックスタイルは、クラシコイタリアの装いにも似合ううえ、コンフォタブルな履き心地と美しく年輪を刻む上質な革で、一生を通じて添い遂げられる名品だ。このたび4代目当主のダニエレ・マリーニ氏が来日。東京と大阪でトランクショーを開催した。メンズプレシャスのエグゼクティブファッションエディター、矢部克已が、マリーニの魅力に迫った。

4世代にわたるハンドメイドの技術

親日家だった3代目当主のカルロ氏と共に、これまでにも来日したことのあるダニエレ氏。カルロ氏が2017年1月に死去し、今回初めて4代目当主として日本の顧客からのオーダーを受けることとなった。

 1899年、イタリア・ローマで創業した伝統的な靴店「マリーニ」。その4代目当主となるダニエレ・マリーニ氏が、トランクショーのために来日した。
 初代のジュゼッペ氏が同店を創業し、1920年代頃までは、なんとサルヴァトーレ・フェラガモも一緒に仕事をしていた、という伝説的な名店だ。メンズの靴をジュゼッペ氏がつくり、レディースの靴をフェラガモが手がけていたが、やがて、それぞれの道を歩み出した。今でも「マリーニ」で、レディースのス・ミズーラ(オーダーメイド)を展開しているのは、そんな礎に立ってのことだが、世に広く知られているのは、やはり、メンズのどっしりとした、安定感のあるはきやすい靴だ。

 14歳の頃から学校に通いつつ、靴づくりの手伝いを始めたという、4代目のダニエレ氏に、「マリーニ」の靴づくりの秘密を聞いた。

「手で革をカットするところから、アッパーとソールを縫いつけて、仕上げにいたるまで100%手づくりによる、オーダーメイドの靴が『マリーニ』の誇りです。創業当時から4世代にわたり、まったく変わらない靴づくりを続けています。なかでも一番『マリーニ』らしいモデルが、ローファーでしょう。ペンドリーニ(タッセル)をデザインし、磨くとより美しさが増すやわらかい素材の、ラマの革を使用するのが、うちの持ち味のひとつです」

やわらかく快適な履き心地の秘密

マリーニを代表するローファー(サンプル)。デザインは王道のクラシックで、アッパーには天然のシボが入るラマの革を使用。
オーダー会ではUチップも人気。こちらのサンプルは、アッパーにゼブー(コブ牛)の革を使用。表情のある革がクラシカルなデザインにいっそうの風格を与えている。
取材時にダニエレ氏が履いていたローファーも美しかった。カプレット(子ヤギ)とホワイトアリゲーターのコンビで、軽くコンフォタブルな履き心地の、夏向けの靴だ。もちろん、こちらもオーダーできる。

 革は、アッパーの裁断だけではなく、ソールの革も手でカットする。ソールの中ものにコルクやシャンクを使わない、独自の靴づくりによって、美しさに加え、やわらかくて快適なはき心地も生み出すのである。
「ヒールの部分も、決して、出来合いのかかとを張り付けるのではありません。ヒールの曲線に合わせ、革を一枚一枚積み上げてつくるのです。
 ローマの靴を代表する『マリーニ』は、トウスプリング(つま先の反り返り)がほとんどなく、靴底がベタッと地面に付くのが特徴。つま先とかかとが均等に、地面に接地することで、安定感のある快適なはき心地が得られるのです」

イタリアの名優と同じ靴も誂えられる!

トランクショーは、サルト神宮前店3階のオーダーサロンで行われた。採寸〜仮縫いを経て、約半年後に納品される。オーダー価格は、50万円〜(税抜き)。
今回、初めて「マリーニ」の靴をオーダーしたという男性に、完成したオーダーシートを見せてもらった。豊富なモデルと素材が揃い、ディテールも細かく対応するということから、モデル選びには相当悩まれていたが、最終的にどんな服装にも合わせやすいUチップを選んだ。
伝統のローマンスタイルを継承する、若き当主、ダニエレ・マリーニ氏(35歳)。今回は北京やソウルでもトランクショーを実施したのち、9月中旬に東京と大阪でイヴェントを開催した。

(問い合わせ先)※次回のトランクショー開催時期は未定です。
■サルト神宮前
東京都渋谷区神宮前3-31-20 野津ビル2F・3F
TEL:03-3408-3982
http://www.sarto.jp

■ALBERO
住所:大阪府大阪市中央区淡路町2-5-8 船場ビルディング419
TEL: 06・6210・2250
https://www.facebook.com/alberocoltd/

この記事の執筆者
ヴィットリオ矢部こと本誌エグゼクティブファッションエディター矢部克已。ファション、グルメ、アートなどすべてに精通する当代きってのイタリア快楽主義者。イタリア在住の経験を生かし、現地の工房やテーラー取材をはじめ、大学でイタリアファッションの講師を勤めるなど活躍は多岐にわたる。 “ヴィスコンティ”のペンを愛用。Twitterでは毎年開催されるピッティ・ウォモのレポートを配信。合わせてチェックされたし!
Twitter へのリンク