3つ星レストラン御用達スパゲッティ「マンチーニ」から、オリジナル単一品種「ノンノ・マリアーノ」登場

昨年行われた小麦の収穫祭にはイタリア各地から3つ星シェフが集まった。
昨年行われた小麦の収穫祭にはイタリア各地から3つ星シェフが集まった。

“Ci sono tanti tipi di storie e di sicuro quella di nonno Mariano è stata scritta sulla terra. In mezzo ai suoi campi il nostro pastificio affonda le proprie radici. Il suo esempio è stato per me il seme da cui tutto è partito.” Massimo Mancini

【訳】歴史というものはさまざまな形で存在するが、ノンノ・マリアーノの歴史は土地に刻まれている。わたしたちのパスタ工房「マンチーニ」は彼が遺してくれた畑の中に深く根ざしている。その生き様は、私の中に種を残し、そして芽吹いた。「マンチーニ」は全てそこから始まったのだ。 マッシモ・マンチーニ

3つ星シェフを招きパスタを食べて収穫を祝う

社長のマッシモ・マンチーニ自ら工場を案内してくれた。小麦まで自社畑で生産するパスタメーカーはイタリアでも希少だ。
社長のマッシモ・マンチーニ自ら工場を案内してくれた。小麦まで自社畑で生産するパスタメーカーはイタリアでも希少だ。

昨年の7月、マルケ州にあるプレミアム・パスタ・メーカー「マンチーニ」本社を訪れたときのことだ。その日は伝統的な小麦の収穫祭「トレッビアトゥーラ(Trebbiature)」であり、創業者であり現社長のマッシモ・マンチーニが、「マンチーニ」を使用する3つ星シェフを招き、ともにパスタを食べて収穫を祝うというそれはそれは豪華な収穫祭だった。

ロベルト・チェレア@ダ・ヴィットリオ(Roberto Cerea@Da Vittorio)、エンリコ・クリッパ@ピアッツァ・ドゥオモ(Enrico Crippa@Piazza Duomo)、リッカルド・モンコ@エノテカ・ピンキオーリ(Riccardo Monco@Enoteca Pinchiorri)、ジョヴァンニ・サンティーニ@ダル・ペスカトーレ(Giovanni Santini@Dal Pescatore)、といったイタリアを代表するそうそうたるトップシェフとともに畑を見学し、パスタ工場を視察し、夜はともにワインとパスタで収穫を祝った。しかしそれは単なるイベントではなく、「ノンノ・マリアーノ」のアンテプリマ、つまり内覧会も兼ねていたのだ。

小麦も自社の畑で生産

乾燥パスタの原材料となるのは古代小麦。現在はモノ・クルティヴァルと呼ばれる、単一品種のみを使用したパスタが人気だ。
乾燥パスタの原材料となるのは古代小麦。現在はモノ・クルティヴァルと呼ばれる、単一品種のみを使用したパスタが人気だ。

ノンノ・マリアーノとはマッシモの祖父マリアーノ・マンチーニ(1908〜2013)のことであり、マッシモが多大な影響を受けた農業家だ。マリアーノが蒔いた種子はマッシモの中に確かに根付き、農学部卒業後の2010年、マッシモは実家の農地を整備し「パステフィーチョ・マンチーニ」創業を決意する。

それは祖父から渡された小麦農家というバトンを一歩押し進め、小麦を自社生産しパスタも作るという「パスティフィーチョ・アグリーコロ(Pastificio Agricolo)=農業パスタ生産者」という形態で、そのハイクオリティゆえに現在は3つ星レストラン御用達パスタと呼ばれるまでの世界的な名声と評価を獲得している。

マンチーニ社が独自の研究を重ね、開発したオリジナル品種にはマッシモの祖父の名前が採用された。
マンチーニ社が独自の研究を重ね、開発したオリジナル品種にはマッシモの祖父の名前が採用された。

収穫祭でマッシモが見せてくれた実験畑カンポ・スペリメンターレ(Campo Sperimentale)では、全ての硬質小麦の始祖とされるファッロ・ディ・コッコ(Farro di Cocco)をはじめ、多くの希少品種が栽培されており、小麦栽培に最適な方法と環境作りの研究に役立っている。実はその一角にこれまで7年かけて独自に開発してきた品種があり、「ノンノ・マリアーノ」という名称も取得していると話してくれたのだ。

それはマリアーノが105才という長寿をまっとうした時からマッシモの頭に浮かんでいたアイディア。新しく開発した品種に、偉大なる祖父の名前を冠することを目標としてきたのだ。その畑で作られたオリジナル硬質小麦「ノンノ・マリアーノ」100%を使用したクリュ・パスタとも呼べる究極のプレミアム・パスタ「ノンノ・マリアーノ」が2020年11月11日、イタリアで正式に発売された。

ちなみにこの日は農家にとっては、種を蒔く暦の上では新年を迎える記念すべき日だ。そしてこの「ノンノ・マリアーノ」は「マンチーニ」の独占ではなく、希望する栽培家は誰でも栽培できるように協力するという。つまりマッシモは、祖父マリアーノの名前が末長くイタリアの大地に残るよう努力し、実現させたのだ。

「ノンノ・マリアーノ」https://www.pastamancini.com/

今回発売された「ノンノ・マリアーノ」には収穫初年度の小麦が使用されており、ワインならばファースト・ヴィンテージに相当する貴重なもの。直径2.2mm、茹で時間8〜10分という食べ応えも、噛み応え十分。

その味わいはまだ楽しみに想像するしかないが、昨年も開催したイタリア中部大地震支援のためのチャリティイベント「アマトリチャーナデイ」では、マッシモがふたつ返事で50キロのパスタ無償提供を約束してくれ、会場では1000人近い来場者に味わっていただいた。その味を覚えている方も多いことと思うが、そうしたマンチーニ・ファンにとっては日本上陸が待ち遠しい、そんなパスタとなること間違いない。

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モンテ物産

この記事の執筆者
1998年よりフィレンツェ在住、イタリア国立ジャーナリスト協会会員。旅、料理、ワインの取材、撮影を多く手がけ「シチリア美食の王国へ」「ローマ美食散歩」「フィレンツェ美食散歩」など著書多数。イタリアで行われた「ジロトンノ」「クスクスフェスタ」などの国際イタリア料理コンテストで日本人として初めて審査員を務める。2017年5月、日本におけるイタリア食文化発展に貢献した「レポーター・デル・グスト賞」受賞。イタリアを味わうWEBマガジン「サポリタ」主宰。2017年11月には「世界一のレストラン、オステリア・フランチェスカーナ」を刊行。