「こんなことも知らないの?」「あなたのためを思って言っているのよ」―こんな言葉で相手を不愉快にさせる人が、あなたの職場にもいませんか?

「あの人さえいなければ、職場の雰囲気がもっとよくなるはずなのに……」などといくら念じてみても、都合よくその人が異動したりなど、してくれるはずがありません。むしろその人の言動を思い浮かべることでイライラが募り、仕事のパフォーマンスが落ちたり、会社に行きたくなくなったりなど、自分に悪い結果しかもたらさないでしょう。

そこで、『「とにかく優位に立ちたい人」を軽くかわすコツ』の著者で心理カウンセラーの石原加受子さんから、職場の困った人から身を守る方法について教えていただきました。

■職場の困った人は特定の人をターゲットにしている

 
 

職場で攻撃的な言動を繰り返すトラブルメーカーを、よくよく観察してみましょう。おそらく彼女ないし彼は、誰かれかまわず無差別に攻撃を仕掛けているわけではなく、用心深く、相手を選別しているのではないでしょうか?

職場の困った人は、自分自身が傷つけられるのを人一倍恐れているようなところがあります。自分が傷つけられたくないからこそ、他人に先制攻撃しているのです。

これほど自身が傷つくことを恐れている彼らですから、自分を取り巻く人たちがどれくらい脅威の存在なのか、野生動物のように敏感に嗅ぎ分けています。「この人にからんだら、危ない」と判断すれば距離を置こうとしますし、逆に「この人なら支配しやすい」と見るや、徹底的にいじめぬくのです。

つまり、職場の困った人から身を守るためには、「彼らからターゲット外に認定されること」が有効だといえるでしょう。以下から、具体的にどうすればいいのか、心がけたい5つの習慣をご紹介します。

■職場の困った人の振り回されなくなる5つの良習慣

 
 

(1)職場の困った人を敵視しない

職場の困った人(=Aさん)が、あなた以外の人物(=Bさん)を怒鳴りつけたり、ネチネチと嫌味を言ったりしていたら、あなたはどんなふうに感じますか? おそらく「あんな言い方しなくていいのに、Aさんはひどい…」「Bさんがかわいそう」と感じる方が多いことでしょう。

でも、前述したとおり、職場の困った人は相手を選んで攻撃を仕掛けています。Bさん自身が、Aさんを引き寄せ寄せているともいえるのです。

一見すると、Aさんが加害者、Bさんが被害者ということになりそうですが、どちらが良い悪いという問題ではありません。あくまでAさん、Bさんふたりの関係性の問題なのです。ですから、自分以外の誰かが職場の困った人から攻撃を受けているのを見かけても、過度に加害者を敵視したり、被害者に同情したりしないほうがいいでしょう。

というのも、加害者を悪者扱いしていると、その感情は相手にも伝わってしまいます。「Aさんはひどい」「Bさんはかわいそう」という見方をしていると、Aさんはあなたからネガティブな感情をもたれているのを敏感にキャッチして、今度はあなたに攻撃の矛先を向けるおそれがあるのです。

職場の困った人から自分の身を守るためには、その人が引き起こすトラブルを善悪で判断するのではなく、「これはふたりの関係の問題なのだ」と冷静にとらえるようにしましょう。

(2)たえずリラックスする練習する

職場の困った人がターゲットに選ぶのは、びくびくおどおどしている人です。逆に、彼らがもっとも敬遠したくなるのは、堂々とした人だといえます。「怒られたらどうしよう」「あの人から目を付けられたくない」そんなふうに相手の顔色やご機嫌をうかがっている人ほど、職場の困った人のセンサーに引っかかってしまうのです。

では、びくびくおどおどした態度をしてしまう人は、どのように改めればよいのでしょうか?

大切なのは「リラックスした状態でいる」こと。たえずリラックスする練習を心がけましょう。

びくびくおどおどしている人は、表情や態度から、相手の腹を探ろうと意識が他者に向きがちです。このように他者中心の考えにとらわれるのではなく、自分がどう感じているのか?に焦点を当ててみましょう。

とくに、リラックスという感覚を実感することは大切です。もっとも簡単な方法のひとつは、自分の全身に力を入れてから一気にゆるめること。肉体を緊張・弛緩させて、そのときの自分の感じ方に意識を向けるだけでも、リラックスの練習になります。

ほかにも、ゆっくりお風呂に入っているとき、大好きな人と何気ない会話をしているとき、おいしいものを食べているときなど、日常生活のさまざまな場面で、自分の気持ちよさに意識を向け、「私は今リラックスしている」という感覚をつかむようにしましょう。

リラックスという感覚を自分で実感できるようになれば、自然と表情もおだやかになり、態度も堂々としたものになります。リラックスする練習を積み重ねていけば、職場の困った人は徐々に、あなたから距離を置くようになるでしょう。

(3)顔を上げる

職場で「この人、苦手だな」と思う人がいると、無意識のうちにうつむいたり、苦手な人から顔を背けたりしがちです。

しかし、そのように萎縮した態度をとればとるほど、相手にとって格好の餌食です。職場の困った人は、獰猛な野生動物が小動物を追い回すがごとく、しつこくあなたに絡んでくるようになるでしょう。

つまり、彼らのターゲットからはずれたいのであれば、職場では毅然と顔を上げること。(2)でもお伝えしたように、職場の困った人がもっとも苦手とするのは、堂々とした態度の人なのです。自分が職場の困った人を過度に避けるような態度を取っていないか、ときどきチェックしてみるといいかもしれませんね。

(4)話をするときは相手の正面に立つ

職場の困った人から、「ちょっと○○さん」と呼びつけられたときには、どんな態度を取ればいいのでしょうか?

相手と顔を合わせたくないからといって、パソコンで作業しながら返事する……というのは完全に逆効果。相手が「軽く扱われた」「無視された」と感じて、ますます攻撃的になるのは火を見るより明らかです。

苦手な人と話をするときこそ、作業は中断して、相手の正面に立ち、顔を合わせるようにしましょう。何度も繰り返しますが、職場の困った人は堂々とした態度の人が苦手です。逃げるのではなく、リラックスモードで向き合えば、相手はひるんであなたに絡みづらくなるでしょう。

ただ、ひとつだけ注意点が…。こわばった態度のまま相手の正面に立つと、対決姿勢のように受け取られます。リラックスの感覚を思い出しながら、相手の正面に立つようにしましょう。

(5)しっかりと息を吐きながら発声する

堂々としているように見せるためには、発声のしかたも大切です。しっかりと息を吐きながらリラックスして声を出すように心がけましょう。

人は緊張していたり、何かにおびえていたりする状態では、(a)喉に力が入り、息を吸いぎみに声を発しています。逆に、(b)しっかり息を吐き出すことを意識しながら言葉を発すると、メリハリのある気持ちのいい声に聞こえるのです。

試しに、「はい、わかりました」と(a)と(b)の方法で、それぞれ発声してみてください。両者で明らかに聞こえ方が違うのを、実感できることでしょう。職場の困った人に狙われやすい人は、彼らの前で無意識のうちに(a)の発声方法を取ってしまっているのでは?

日ごろからしっかりと息を吐き出す発声法を心がけていれば、よりいっそうあなたの態度は堂々としたものとなり、彼らにつけいるスキを与えないことでしょう。

職場の困った人から逃げ回ったり、逆に争う姿勢を示したりするのでは、泥仕合になるのは必至。厄介な人を引き寄せないための良習慣を日々続けて、心穏やかに仕事に邁進しましょう。

PROFILE
石原加受子(いしはら かずこ)さん
心理カウンセラー。「自分中心心理学」を提唱する心理相談研究所オールイズワン代表。日本カウンセリング学会会員、日本学校メンタルヘルス学会会員、日本ヒーリングリラクセーション協会元理事、厚生労働省認定「健康・生きがいづくり」アドバイザー。思考・感情・五感・イメージ・呼吸・声などをトータルにとらえた独自の心理学をもとに、性格改善、親子関係、対人関係、健康に関するセミナー、グループ・ワーク、カウンセリング、講演等を行い、心が楽になる方法、自分の才能を活かす生き方を提案している。
公式サイト
『「とにかく優位に立ちたい人」を軽くかわすコツ』石原加受子・著 学研プラス刊
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
中田綾美