「動物と共に考えること。その可能性の提示に、ワクワクさせられた」―美村さん
私はこの類の動物本が大好きでよく読むが、それでも知らない話が多く載っていた。冒頭、おおよそ’90年代までの動物実験は人間用の言葉やパズルで行われてきたことを挙げ、「人間の都合に引き寄せるのではなく、彼ら本来の行動から知的レベルを測らなければ意味がないのではないか」と著者は問いかける。
例えば、’07年にジンバブエの保護区のチンパンジー「ジュリー」が、耳の後ろに草の葉をつけ始めた。これを彼女の周囲のチンパンジーが真似しだし、‘13年に彼女が亡くなると、しだいに廃れた。
まさにファッションの盛衰そのものだが、これはそのまま道具の使用方法の伝播であり、彼らが石器時代にあることを意味するのだという。
死期を悟った象が向かうとされた「象の墓場」の実態には特に驚いた。実際は仲間が死ぬと土や草をかける(=埋葬する)ので遺体が見つからないのだそうだ。そして、仲間たちはその後、何年もその場へ墓参りに訪れる。
また、ヒッチコック的に見えるカラスの円舞も、知り合いや親族カラスによるお葬式なのだという(彼らの舞う中心部に遺体がある)。
人間との共通点を特に興味深く感じるが、それはあくまでこちら側にとって理解しやすいというだけだ。「違う」ことの重要性、動物について考えるのでなく「動物と共に考える」可能性の提示にワクワクさせられた。
本書はペットにも敬意を表し「伴侶動物」と呼称する。わが家で暮らす岩魚(いわな)・アロワナ・モンハナシャコがこの話を知ったら、彼らはなんと言うだろうか。
- PHOTO :
- よねくらりょう
- WRITING :
- 美村里江
- EDIT :
- 宮田典子(HATSU)、喜多容子(Precious)