フィンランドのコロナ禍、ステイホームで街は閑散とするなか、いつどこへ行っても混み合っているのが、「図書館」です。読書好きなフィンランド人にとって図書館は欠かせない存在であり、その利用率は非常に高いです。娯楽の少ないフィンランドでは、小さな田舎町にもあるほど図書館は、生活の中で誰もが自由に使える「学び」、「ほっとできる」、「楽しめる」マルチ施設です。今回は、ヘルシンキ郊外の町、キルッコヌンミ(Kirkkonummi)に10月、オープンしたばかりの図書館、「Fyyri」を紹介します。

建築にも注目したい!フィンランド、キルッコヌンミの新図書館「Fyyri」へ

ひと際目立つこの建物は?

Kirjastoは、フィンランド語で図書館の意味。
Kirjastoは、フィンランド語で図書館の意味。

キルッコヌンミは、ヘルシンキ中心部より西へ車で30分ほどのところにある住宅街の町。Fyyriとは、スウェーデン語のFyr、「灯台」の意味で、海の近くの町だから名付けられました。

建築デザインは、ヘルシンキの設計事務所、「JKMMアーキテクツ」によるもの。近年では、ヘルシンキ中心部のAmos Rex美術館の設計も手がけるなど注目の設計事務所です。2階建てのこの建物は、1980年代に建てられたオリジナルの図書館のコンクリートを利用し、モダンに改築したものです。

図書館としての機能だけではなく、地域コミュニティの全ての世代の人々が活用できる場所として、さまざまな用途に対応しています。

大きな窓に面した読書エリア、会議室、アート展示スペース、3Dプリンタなどの機器を備えた作業場、子供が楽しめる屋内クライミング、大人数が集うことのできるイベントスペース、電子レンジなど完備した食事が取れる部屋などがあります。

窓に面する読書コーナーは、集中できる空間です。
窓に面する読書コーナーは、集中できる空間です。

一歩中に入ると、白を貴重に、木の温もりが感じられる家具で統一され、窓から差し込む光と照明が素敵で見事な空間を創り出しています。

座り心地の良い椅子で、落ち着いて勉強できるエリア。
座り心地の良い椅子で、落ち着いて勉強できるエリア。
コロナ禍、ソーシャルディスタンスが取れるよう、一部の椅子や机は使用不可でテープが貼られています。
コロナ禍、ソーシャルディスタンスが取れるよう、一部の椅子や机は使用不可でテープが貼られています。
子供から大人までそれぞれの背丈に合わせ座れるようにデザインされたくつろげるコーナー。
子供から大人までそれぞれの背丈に合わせ座れるようにデザインされたくつろげるコーナー。
子供のコーナーでは、靴を脱いで自由に遊ぶ子供たちの姿が多く見られます。
子供のコーナーでは、靴を脱いで自由に遊ぶ子供たちの姿が多く見られます。
1階から2階へ続く階段は、大人数が集まることができるイベントスペースとしても機能します。
1階から2階へ続く階段は、大人数が集まることができるイベントスペースとしても機能します。
2階のDVDや音楽コーナーの窓からは、外の景色が楽しめます。十分に光を取り入れられるよう配慮した設計。
2階のDVDや音楽コーナーの窓からは、外の景色が楽しめます。十分に光を取り入れられるよう配慮した設計。
1階のカフェエリアは大きな窓ガラスに面した長い空間になっており、壁には雑誌や新聞がずらりと並んでいます。カフェ利用のみ訪れる人も多いです。
1階のカフェエリアは大きな窓ガラスに面した長い空間になっており、壁には雑誌や新聞がずらりと並んでいます。カフェ利用のみ訪れる人も多いです。
キャンドルに見立てたライトも素敵な空間を演出しています。

フィンランドに、またひとつ素敵な図書館が誕生しました。これからも長く地元の人々に愛される場所となることでしょう。いつか、世界が自由に安心して行き来できる日が来たら、ぜひ訪れていただきたい場所のひとつです。

キルッコヌンミ図書館 Fyyri

KMMアーキテクツ

この記事の執筆者
学生時代7年間のロンドン生活を経て、2015年よりフィンランド・ヘルシンキ在住。ヘルシンキを拠点にライターとして、ライフスタイル・食・デザイン・ファッションなどの分野で活動中。現地コーディネーターとしてフィンランド及びヨーロッパと日本をつなぐコミュニケーション全般に携わる。趣味は、旅行と料理。著書に、『デザインあふれる森の国 フィンランドへ 』(イカロス出版社)がある。
PHOTO :
Janne Räsänen