「わび」の名品とは何だろう? それを考える上で絶対に避けて通れないのが、「わび」という哲学を確立した立役者であり、今でいう敏腕プロダクトデザイナーでもあった千利休の趣味=利休好みを知ることだ。
その中には初代長次郎作の『黒楽茶碗』に代表される、現代においては名品というカテゴリーに収められているものも多いが、本来は漁師の魚籠を花入れにするなど、従来の価値観に囚われず、素朴かつ自由な精神でモノを選んでいた。むしろその茶会では、名物茶器を排除していたほどだ。彼の好んだ素材とは、木地や黒もしくは朱の塗り。ミニマルながら本質を深く突いた、一種の凄みを感じさせるものだった。
「わび」の名品
そでを通して完成する「余白」のあるシャルべの白シャツ
不完全さを魅力とするアット ヴァンヌッチのネクタイ
華美さを排除した奥ゆかしいユーゲンのコート
時計のあるべき姿を脇目もふらず追求したグランドセイコーの『SBGH219』
そんな観点のもと、選び抜いたファッションアイテムたち。いずれもハイクオリティではあるが、決して完成されすぎず、どこか広がりの余地がある「間」を持っている。それは人間が身につけ使い込んで、はじめて豊かさを表現してくれるのだ。
※価格はすべて税抜、参考価格です。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2020年秋号より
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- PHOTO :
- 唐澤光也(RED POINT)