米国人作家レナード・コーレン氏は著書『Wabi-Sabi わびさびを読み解く』の中で、「わびさびにもっとも近い英語は、おそらく『rustic』だろう」と解説している。「シンプル、人為的でない、あるいは野暮ったい、表面がザラザラとした、デコボコした」といった意味を持つこの言葉は、コーレン氏によると「わびさび美学の限られた面しか表していない」というが、その響きと意味合いは、直感的に「錆び」が転じて生まれた「さび」の美意識を指す言葉として、最もしっくりくる。そう考えると、「さび」の名品は以下のような条件が挙げられる。
自然素材からつくられた簡素なもの。土臭いもの。長い時間を経て朽ちゆくもの……。色褪せたジーンズなど、まさしく「さび」の極致ではないか。ただし気をつけたいのは、殊更に「さび」を狙った加工品などに手を出さないこと。芭蕉や山頭火の俳風のように、突き放した不完全さにこそ、「さび」の豊かさ、面白さは宿るのだ。
「さび」の名品
枯淡の境地を感じさせるドレイクスツイードジャケット
原始的なアプローチで表現したストール
「さび」の精神が見出した色褪せたインディゴのジーパン
冬の海を想起させる寂しくも豊かなインバーアランのニット
※価格はすべて税抜、参考価格です。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2020年秋号より
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- PHOTO :
- 唐澤光也(RED POINT)