本日から視聴がスタートする動画プロジェクト「Zange Utopia ~ Dune ~」。美しい旋律に乗ってしなやかに踊る肉体美、そして、その肉体と一体化し表情を変化させる軽やかな衣装…。すべての感性を繋ぎ合わせ動画として完成した新しいアート作品は、5人のクリエイターにより自由な感性で制作された、特別なプロジェクトです。

コロナ禍に始動した、そのきっかけや、いまの時代に生きる表現者としての使命など、Precious.jpでは5名のアーティストにスペシャルなインタビューを実施しました。前編では、作品への想いや参加した意図などをお聞きしました。

非日常が引き合わせた、5つの才能。きっかけは?「Zange Utopia ~ Dune ~」の誕生秘話に迫る

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動画アート「Zange Utopia ~ Dune ~」より

「清水康彦 監督から、突然メールで“音源”が送られてきまして…正直、監督のその意図はわからなかったのですが(笑)、自分なりに解釈して、ちょっとしたアイディアを送ってみたんです。そんなことがきっかけでした」と、ファッションデザイナーの芦田多恵さん。

緊急事態宣言が発令され、コレクションのキャンペーン撮影もキャンセルになり、立ち往生せざるを得なかった、そんな渦中でのやりとりだったと語ります。「キャンペーン動画を清水監督に撮影していただく予定だったのですが、中断してしまって。ちょうどそんな時期でしたね」。

「Zange Utopia」とは、コロナ禍に金子ノブアキさんがつくられた33分に及ぶアンビエント楽曲。その一部である「Dune」の音源を聞いたその瞬間に、“バレエダンサーの柄本弾さんが踊っている姿が頭に浮かんだ”と、多恵さん。その発想に「いいですね、やりましょう」と清水監督が同調したところからスタート。

TAE ASHIDAやjun ashidaのキャンペーンビジュアルを撮影されているフォトグラファーの荒井俊哉さんは、俳優の斎藤工さんが主演を務めた清水監督作品『MANRIKI』の撮影も担当。気づけば自然に繋がり、メンバーがフィックスしていたといいます。

非日常が引き合わせスタートした、運命的なプロジェクト「Zange Utopia ~ Dune ~」。Precious.jpでは、今回参加されたクリエイター5名(ファッションデザイナーの芦田多恵さん、ミュージシャンで俳優の金子ノブアキさん、映像監督の清水康彦さん、バレエダンサーの柄本弾さん、フォトグラファーの荒井俊哉さん)に、このプロジェクトに参加した理由やいまという時代について、それぞれの想いを、率直にお聞きしました。

7つの質問で紐解く。5人のクリエイターが寄り添う、“いま”という時代に生きる表現者のカタチ

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動画アート「Zange Utopia ~ Dune ~」より

Q1:今回のプロジェクトに参加された“意味(や理由)”を教えてください。

金子:コロナ禍に於いて生まれた自己、そして他者との向き合いや人生と命の意味。それを何か形にと、何も考えず本能のままに音源化しました。それを気に入ってくれた清水監督が皆を繋いでくれました。本当に感謝しています。 

清水:コロナ禍を体験し、すべての人が課題共有できたことにより、以前は関わりを持たなかった相手とも隔たりを越えて共有できた。「今こそ自由に、関わり合うことに挑戦すべき」そういったテーマからこのプロジェクトが始まりました。

芦田:コロナ禍にあって、クリエイターが通常通り制作活動が出来なかったり、発表の場を失ってしまうという事態のなか、「むしろそういう時だからこそ出来ることに取り組むことに、大きな意味があるのではないか」という思いがわき、参加しました。

柄本:コロナ禍で今までの日常が過ごせなくなり、個々のアーティストの力が結集して作り上げられた作品だと思います。今は苦しい時ですが、夜明けというか、この先の光を信じて踊りました。きっかけを作ってくださったデザイナーの芦田多恵さんには大変感謝しています。

荒井:何しろ、面白そうなプロジェクトだったので、すぐに「やりたい」といいました。


Q2:実際に参加されみて、いかがでしたか?

金子:音だけを作っていた当時はまさかこんな超一流のメンバーと共作出来る事になるとは想像もしていなかったので、嬉しい驚きに満ちあふれています。

清水:まだまだ検証段階ですが、原始的に楽しいと実感しました。そしてこれからも挑戦を続けたいです。

芦田:普段でしたらなかなかご一緒出来ない、異色とも言えるメンバーと一つのものを創造するという作業は、予想以上に刺激的で、心から楽しむことが出来ました。

また、自主制作ということによって各々がストレスなく自分の出来ることを精一杯ぶつけ合い、調和するという作業にもなりました。初めてのことでしたが、本当に素晴らしい経験をさせていただけたと思っています。

柄本:金子ノブアキさん、芦田多恵さん、清水康彦さん、荒井俊哉さん…コロナ前の生活ではなかなか交わる事のできない、一流の皆さんと繋がって、その素晴らしい感性や技術に触れて刺激を受けながらひとつの作品を作れた事が何よりも嬉しく、楽しかったです。

(後日談ですが)いつも公演を見てくださる芦田多恵さんに加えて金子ノブアキさんや清水監督も僕のバレエを見に来てくださり、嬉しかった。この作品は、バレエだけの世界で生きてきた僕の、どこかの扉を開けてくれたような気がします。

荒井:金子君の曲だけを聴いて思い描いた事。ダンさんの舞を単純に撮る作業。タエさんの素材を楽しむ事。やはり、写真は、記録なのだと感じました。

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動画アート「Zange Utopia ~ Dune ~」より

Q3:どんな人に観てもらいたいと、感じますか?

金子:贅沢を言えば出来るだけすべての人に一度は体感して頂きたいと思います。ここまで多くの人が同じ苦しみを共有する時代は本当に稀な事だと思うので、我々と一緒に何かを感じ取っていただけると本当に嬉しいです。

清水:我々と同じように、新たな活動を模索している人全てに知ってもらいたいです。

芦田:今回さまざまなジャンルに属する5人が集まったので、自分が属する世界以外の方達にも観ていただけることが、とても楽しみです。また、コロナ禍にあって、疲れてしまった人達にも!きっとこの動画が癒しや希望になると思うので。

柄本:今回のメンバーの各々の分野の方々に。その分野でない人にも。繰り返しになりますが未来への光のようなものを感じてもらえたら嬉しいです 。

荒井:すべての人に。


Q4:次回作があるとするならば、どんな作品にしたいと思いますか。

金子:今回は僕が先に作ってしまっていたので、次は他のメンバーの生み出したものに僕の共感や力を乗せたいなと思います。本能的に呼び合うタイミングは自然にやって来ると思います。

清水:テーマに基づいて、さまざまなジャンルの方々とコラボレーションしていきたいです。具体的なものだと、例えば人が集まれる野外で(規制が必要かと思いますが)、芦田さんの衣装を着た柄本さんが金子の音楽にのせて踊る姿を、直接皆さんに披露できたら…! 素敵ですね。

芦田:もしまたこのメンバーで制作するとしたら、無限の可能性があるように思います。今回は最初に音楽があり、そこからインスパイアされての作業でしたが、次回はその順番が変わると、また何か違った発想が生まれるのでは、と思います。

柄本:もっとたくさんのメンバーでやってみたいですね 。多過ぎても収拾がつかなくなるかなぁ(笑)。

荒井:続編では無いものを。

※後編(Q.5〜7)は明日、12月26日(土)配信予定です。そちらもお見逃しなく!


「Zange Utopia ~ Dune ~」に、あなた自身も視聴者として参加を!

新時代が生んだ、新たなるアートの在り方…。アートは、観客があって、初めて完成します。ぜひ、「Zange Utopia ~ Dune ~」を自身のフィルターを通して体感し、自身の感性でその世界と対話して下さい。

「Zange Utopia ~ Dune ~」を制作した5名のクリエイター

金子ノブアキさん
ミュージシャン・俳優
(かねこ のぶあき)バンド活動以外に2009年よりソロ活動も始動し、3枚のアルバムを発表。音楽、映像、照明を駆使したソロライブは高い評価を受け、アートや舞台、映画などの音楽制作も行いあらゆるジャンルの壁を超えて活躍中。俳優としては映画やドラマ、CMに出演し際立った存在感で魅了。 
清水康彦さん
映像監督
(しみず やすひこ)企業CM、ファッション映像、MV、ドラマ、長編映画など、多方面で活躍。金子ノブアキが音楽監督を務める映画「MANRIKI」で長編初監督を務める。
芦田多恵さん
ファッションデザイナー
(あしだ たえ)1991年にコレクションデビュー。2012年には、自身の名を冠した「TAE ASHIDA COLLECTION」を発表。同年秋、第54回日本ファッション・エディターズ・クラブ特別賞受賞。各界の著名人や女優などを多く顧客に持ち、エレガントでモダンなスタイルで、 東京のファッションシーンを牽引。2019年よりメンズラインも手がける。
柄本 弾さん
バレエダンサー
(つかもと だん)5歳よりバレエを始め、2008年東京バレエ団に入団、2013年よりプリンシパル。2019年はウィーン国立歌劇場やミラノ・スカラ座にて『ザ・カブキ』で主演。 モーリス・ベジャール振付の『ボレロ』を踊ることを許された唯一人の日本人男性ダンサーで恵まれた容姿と豊かな表現力で観客を魅了する。2019〜20年、NHKEテレ『旅するフランス語』にレギュラー出演するなど舞台以外にも活躍の場を広げている。PHOTO:Satoshi Minakawa
荒井俊哉さん
フォトグラファー
(あらい しゅんや)栃木県出身。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。エディトリアル、ファッションを中心に活動する傍ら、多くのミュージシャンのポートレート、ライブ、バックステージ撮影をする。またミュージックビデオも多数手がける。
この記事の執筆者
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PHOTO :
荒井俊哉
EDIT&WRITING :
石原あや乃