1972年にデビューした初代シビックをほうふつさせる丸いヘッドライトと、全長4mを切るコロッとした2ドアハッチバックというスタイルで登場した、Honda e。このホンダ初の量産型EV(電気自動車)は走行性能だけに留まらず、レトロなデザインを現代風に解釈したエクステリアとダッシュボード一杯に並べられたディスプレイの先進性に視線が集まっている。

デザインの力で人気を博したあの時代を思い出す

どれだけ走れるかではなく、生活圏で楽しく過ごすことに注力して開発された。デザインの力が自分の心を、周囲の景色を変える。
どれだけ走れるかではなく、生活圏で楽しく過ごすことに注力して開発された。デザインの力が自分の心を、周囲の景色を変える。ちなみに本文では東京をクルージングと書いているが、テスト車両の撮影地は横浜。
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しっかり積める広さの荷室を備えているところもいい。
しっかり積める広さの荷室を備えているところもいい。

オーバーハング(車軸からボディ先端までの距離)を切り詰めた、Honda eのハッチバックスタイルは、かつて本田宗一郎が褒めたといわれた初代シビックのイメージを強く感じさせる。当時、4輪の販売戦略で行き詰まっていたホンダを、このシビックが救ったといわれるほどのヒット作だった。思えば、このころに登場した軽自動車のライフも含めて、ホンダがデザイン的に面白くなりつつあった頃だった。

そのデザインが現代に蘇ったような、それでいて新しさを強烈に感じさせるエクステリアには、街の風景を楽しくする力がある。実際にHonda eで東京の青山通りから永田町、そして銀座から丸の内と走らせると、かなりの視線を感じた。その証拠にコインパーキングに止めておくと、通行人の多くは立ち止まって眺めたり、車内を覗いたりと、なかなかの注目度なのだ。

遠くへでかけることだけがクルマの目的ではない

サイドミラーの代わりに小型カメラが付く。張り出しを抑えているので、細い道で左右幅いっぱいに走り抜けることができる。
サイドミラーの代わりに小型カメラが付く。張り出しを抑えているので、細い道で左右幅いっぱいに走り抜けることができる。
心躍るインテリア。サイドカメラの画像はコンソール左右のモニターに表示される。ミラーを目視する場合との違和感が少なく、とても見やすい。
心躍るインテリア。サイドカメラの画像はコンソール左右のモニターに表示される。ミラーを目視する場合との違和感が少なく、とても見やすい。
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Honda eの1充電あたりの航続可能距離は、カタログ上のWLTCモード値で283km(標準仕様)、上級グレードのAdvanceは259kmとなっていて、実質的には200km前後。これからの季節はヒーターなどを使用するから、もっと短いかもしれない。

ホンダはこのクルマを“都市型EV”として開発したとうたっている。確かに通勤や休日にショッピングモールまでの足とするなら、特に不便は感じないだろう。さらに後輪駆動としたことで前輪が驚くほど切れ、その最小回転半径は4.3mと小回りがきく。これもシティコミューターには欠かせない特性だ。

インテリアも街乗りに合うしつらえ。ドアを開けると目に飛び込んでくる、2画面が並ぶ「ワイドスクリーンHonda CONNECT ディスプレイ」は、新しさと都会的な香りがする。実はこのダッシュボードのデザインも、初代シビックに通じるレイアウト。シンプルだが、どこか安らげるリビングのような空間であり、先進性もある。

EVを論じるときに必ず引き合いに出される航続距離は確かに重要なポイントだ。だが、走行用バッテリーのリチウムイオン電池のコストが車両価格を大きく左右する現在、近場での使用を前提としたEVとして登場したHonda eは、我々に新しいクルマとの付き合い方を提案してくれる。割り切りではなく、目の前の景色に彩りを添えてくれる存在として。それは、高速・遠距離移動がおぼつかなかった時代へのリスペクトなのかもしれない。

【HONDA e】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:3,895×1,750×1,510mm
車両重量:1,510kg
駆動方式:後輪駆動
トランスミッション:電気式無段変速機
バッテリー容量:35.5kWh
モーター最高出力:100kw(136PS/3,078~11,920rpm)
モーター最大トルク:315Nm/0~2,000rpm
価格:¥4,100,000~(税抜)

問い合わせ先

ホンダ

TEL:0120-112010

この記事の執筆者
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで「いかに乗り物のある生活を楽しむか」をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
PHOTO :
篠原晃一
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