「大切なのは、私という建築家ではなく、これまで存在してきた空間、もの、時間なのです」。ブラジルの建築家、カルラ・ジュアサーバさんに、仕事に関する価値観やライフスタイルをうかがいます。「すでに存在しているものを利用する」という、彼女の建築手法とは?

■大げさなデザインは必要ない。そこにあるものを大切にすることを心がけています

建築家・エキシビジョンデザイナーのカルラ・ジュアサーバさん

エキシビションデザイナーとは、ミュージアムでの展覧会や、展示会場のパビリオンを手がけるデザイナーのこと。カルラさんは、ブラジルにおけるその先駆け的存在です。2012年に「Rio+20(国連持続可能な開発会議)」で「人類パビリオン」を担当。もともと存在していた鉄の骨組みを利用し、経済的で組み立てやすいリサイクル素材を使ったクリエイティビティーとエコな視点が評価をされ、女性建築家を対象にした国際建築賞を受賞し、注目を集めました。現在は国内外で講演活動、ワークショップも行っています。

「すでにあるものを利用するのが私の建築スタイルですが、何もないように見える場所にも、光、水、木、風など、必ず何かが存在してきたのです。そこに、新たなコミュニケーションを加える。大げさなデザインは必要ありません。そのものに寄り添うように、場所、時間との関連性を大切にしながら、設計していくことを心がけています」と、彼女は語ります。

■つねに学ぶ心を忘れずに。手探りで進みながら獲得した、自分だけのスタイル

人気ビーチ、コパカバーナ地区の、ビーチまで歩いて3分の賑やかな繁華街にあるカルラさんのオフィス。大きな机と天井にまで届く本棚のほかは、なんの家具もないシンプルな空間で、まるで思索にふけるように、カルラさんはプロジェクトに向き合います。

「教えられたことを教えられたとおりに設計する建築に興味はなかった。大学を卒業してからは独学で、仕事で学びながら自分のスタイルを獲得してきました。自分の道を進もう、と。フリーランスで働くことはとても不安だったし、今でもそれは変わりませんが、手探りで進みながら、つねに学ぶ心を忘れずにいようと思っています」

ブラジル女性には珍しく、エネルギーを静かに燃やすような口調で語った彼女。

「大切なのは、私という建築家ではなく、これまで存在してきた空間、もの、時間なのです」

とても意味深い言葉です。

■世界各国キャリアへ 、5つの質問

Q1:仕事の成功のためにしている習慣は?
あまり話さない。仕事に集中してあまり話さないほうが成功する。
Q2:バッグに必ず入っているもの3つは?
口紅、鍵、財布。
Q3:あなたの街のストレス解消スポットは?
特にない。ストレスがたまったときはどこでもいいからひたすら歩く。
Q4:理想の週末の過ごし方は?
どこでもいいが、夫と息子と3人で過ごす。
Q5:人に言われてうれしいほめ言葉は?
Amir(アミール=息子の名前)。iをoに変えるとAmor(愛)になる。

PROFILE
カルラ・ジュアサーバさん
建築家、エキシビジョンデザイナー
41歳。リオデジャネイロ生まれ。芸術家の祖母に大きな影響を受けて育つ。父親の仕事の都合で幼少期からフランスなど海外在住経験を積む。大学で建築を学びながら、エキシビションデザイナーとして、当時先駆けを担った女性の下で仕事を始める。卒業後独立。建築家として住宅設計も手がけている。
PHOTO :
Naoko Takahashi
WRITING :
剣持亜弥(HATSU)
EDIT :
大庭典子
RECONSTRUCT :
難波寛彦