2021年1月12日(火)にオンラインカンファレンス「Reshape the World - 女性起業家たちが世界を変える」が開催されました。本イベントは「産官学グローバル連携によるEDGE NEXTプログラム(Global Tech EDGENEXT)(東京大学コンソーシアム)、お茶の水女子大学」の主催、そして世界有数のラグジュアリーメゾン「カルティエ」の特別協賛によるもの。
カルティエは、2006年より社会にインパクトを与える女性起業家の支援を通じて、変革の推進を目的とする国際アニュアル アントレプレナーシップ プログラム「カルティエ ウーマンズ イニシアチブ(CWI)」を設立し、いままで数多くの女性起業家を支援してきました。
カンファレンスには、そのカルティエ ウーマンズ イニシアチブの2020年度受賞者から、2名の女性起業家が登壇しました。
女性起業家を支援する「カルティエ ウーマンズ イニシアチブ(CWI)」とは?
カルティエがグローバルに展開する国際ビジネスプランプログラムが、カルティエ ウーマンズ イニシアチブです。2006年の設立以来、女性起業家たちの貢献に光を当て、ビジネスの発展とリーダーシップスキルの促進に必要な、経済的、社会的、人的支援を行うことで、起業家たちの可能性を最大限に発揮する支援を行ってきました。
このプログラムは、国や分野を問わず、女性が主導あるいは所有するビジネスを対象としています。また、国連のSDGs(持続可能な開発目標)に定義される持続可能な社会的・環境的インパクトを与えることを目的としたビジネスであることが条件となります。
2020年度は、7つの地区から各3名、計21名の女性起業家がフェローとして選出され、最終選考で各地区1名の受賞者が選ばれます。
計7名の受賞者には賞金10万ドルが、そして残り14名のフェローには賞金3万ドルがそれぞれ授与されました。
そして最終的に、7名の受賞者と14名のフェローには、ファイナンシャルアドバイザリーサービス、個別の戦略コーチング、メディアへの露出、国際的なネットワーク構築の機会が与えられ、さらにINSEADエグゼクティブプログラム(ISEP)への参加資格も。
この14年間にカルティエ ウーマンズ イニシアチブは、合計56か国の240人の有望な女性起業家を認知し、そのビジネスを支援するために300万ドル以上の賞金を提供してきました。
2020年度受賞者が日本の若い起業家をインスパイア!
文部科学省における次世代アントレプレナー育成事業の一環として「産官学グローバル連携によるEDGE NEXTプログラム、お茶の水女子大」の主催、カルティエのコラボレーションのもと、2021年1月12日(火)に開催されたオンラインカンファレンス「Reshape the World - 女性起業家たちが世界を変える」。
第一部のインスピレーショントークには、カルティエ ウーマンズ イニシアチブ、2020年度の受賞者であるジョアンヌ・ハワースさん、そしてナディア・ガマル・エル・ディンさんの2名の女性起業家が参加。チャットには2人へ、参加者から多くの質問が寄せられ、世界をリードする女性起業家への関心の高さが伺えます。
その後のセッションでは、全国各地にある5つのEDGE-NEXTのコンソーシアムから7チームの女子学生を中心に、ビジネスプランが発表されました。お茶の水女子大学 理事・副学長でEDGE-NEXT(Glonal-tech)責任者である三浦徹さんや、ファシリテーターを務めた、女性社長.net主宰でお茶の水女子大学 客員准教授の横田響子さんが思わず唸ってしまうようなリアリティあるプランも登場。
続くパネルディスカッションでは、ゲストとして2020年度の受賞者が再登場。ビジネスを始めるきっかけや、起業の経験談、ビジネスを始めてみての苦労や今後の課題について話した後、起業に必要な資質や社会へのインパクト、女性としての経験値が起業に役立つかなど、興味深いテーマが討論されました。
環境保護と母親支援が地球の未来を変える!2020年度受賞者2名へインタビュー
Precious.jpは独自に、2020年度受賞者2名へビジネスを始めるきっかけや苦労、ビジネスプラン、女性起業家として働くことについて話を伺いました。
■1:女性起業家に制約はない!未来の地球環境を守るゲームチェンジャー
カルティエ ウーマンズ イニシアチブ、2020年度の受賞者のひとり、ジョアンヌ・ハワースさんは飲食業界で複数のビジネスを創業し、その1つであるBoxes To Goにて、オーストラリア最大シェアの食材キット宅配サービス会社HelloFreshのアウトソーシングパートナーとしてビジネスを展開する中で、海洋汚染の原因となるマイクロプラスチックの一つ、ポリスチレンに代わるサステナブルな容器はないかとリサーチを開始。
使い道のない羊毛を用いて、生鮮食品や薬品など温度に敏感な商品を輸送するための環境に配慮した断熱パッケージを製造するビジネスを立ち上げ、大量のポリスチレン容器製造の阻止や農業経営者の収入増など多大なインパクトを与え、多くの世界的な賞を受賞しています。
「22歳以降、私はいろいろな企業を立ち上げてきました。とてもやりがいがあって、振り返れば自分が創り上げた実績を確認できるので、私は起業することが大好きです。
ドイツ企業がオーストラリアでミールキットを立ち上げ、豪州初ということで、6年前、私たちの会社がパッケージの依頼を受けたのですが、当初は梱包材として週に55,000個のポリスチレンの箱を使用していたんです。そういったなかで廃棄物を”排出していた側”から、”なくすために闘う側”へなりたいと考え始めるように。
自分の信条と、またサステナブルな梱包材についてのビジネスチャンスも感じたことをきっかけに起業しました。自分たちが環境を破壊している、と実感したからこそ、このビジネスが生まれたんです」
「世界的企業を目指しています。私たち企業の使命はサプライチェーンからポリスチレンを撲滅することにあり、そのためにはグローバルな展開が必要です。現在はオーストラリアの東側と、ニュージーランドで展開していますが、今後は東南アジアも予定しています。2050年には海中の廃棄プラスティックの量が魚の量を上回ると予測されており、本当に緊急事態だと思います。
海にあるプラスティックの9割が10の河川を経路としており、そのうち8つの川がアジアにあり、今後10年間の対応で海の1万年先の姿が決まってしまいます。
まずはオーストラリア全体に事業を拡大すべく、タスマニア島にも拠点を置く予定です。現在、投資500万ドルを募っておりますが、将来的にはアジア全体に展開したいと考えています」
「ゴミの分別やリサイクル、地域の活動としてクリーン作戦などに積極的に参加しています。しかし最も効果的なのは、いまのビジネスを早く成長させること。海洋プラスティックの問題は特にアジアでは深刻です。ポリスチレンは、海洋生物の生態系にも影響をもたらします。
恐ろしいことに、ポリスチレンは500年経たないと分解されません。私たちのプロダクトはゲームチェンジャーであり、日本でも展開できれば、と思っています。日本は大量のシーフードを消費していると同時に、輸送で多くのポリスチレンも使用していますから」
「私には、ビジネスだけでなく生きる上でのモットーとして『何がなんでも諦めない』というのがあります。それを私の人生全ての側面で貫いています。困難や失敗などで前へ進めない、と思ったこともありますが、両親は情熱を持って一生懸命やれば絶対できる、という考えを教えてくれました。
女性として制約や限界があるとは感じたことがありません。逆にそれが有利に働くこともあると感じています。とはいえ、今朝参加した会議で参加者に女性は私一人でマイノリティだと感じましたし、オーストラリアの会社の女性役員は30%です。確かに困難はあります。しかし自分のプロダクトが世界を変える!という自信と情熱があれば絶対できます」
「無理と思ったことでも情熱を持って挑めば成し遂げられる、と思っています。私がこの会社を立ち上げたように、読者の方も勇気を持って起業していただければ嬉しいですね」
■2:250万人が利用!母親をあらゆる面でサポート
P&Gのマーケティング部を経て、第1子出産後、子育ての疑問に対する回答や必要なサポートを受けられる環境が整っていないことへの気づきから、エジプトの母親たちを包括的にサポートするプラットフォームとしてRahet Ballyを創業した、ナディア・ガマル・エル・ディンさん。
母親たちのあらゆる疑問に的確にかつ無料で応えるために、わずか1か月で100名を超える医師やエキスパートを集めました。自身も子育てと両立させながら、母親たちの精神、身体、感情などあらゆる面でのサポートを続けています。現在同社は250万人を超える母親たちに、オンラインと対面の両方からさまざまなサービスを提供し、彼女たちの健康、幸せ、そして穏やかなマインドを保つことに貢献しています。
「母親となった私自身と、周りの母親たちのニーズからビジネスアイディアが生まれました。
私は母親になって、子育てに莫大な費用がかかること、そして私の国にはサポートがないことに気が付きました。そのため、母親が子供の生活の質を損なうことを避け、最高の店でサービスを受けられるよう、赤ちゃんグッズに関するディスカウントカードを作ったのです。
また、産後ダイエットをしたくても、運動中に子供の世話をする人を雇うことが難しい現状に気づきました。そこで、全ての年齢の子に対する無料のベビーシッターサービスが付いた、フィットネスと栄養管理のプログラムをスタートさせました。
さらに母親には社交や読書、昼寝といった自分自身の時間が必要と感じ、母親向けの複合施設である『The Cloud』を立ち上げました。そこではライブストリーミングによって子供たちを見守れるので、母親は昼寝したり、作業や読書したり、美容サービスを楽しみ、ワークアウトもできます。
そして、エジプト初の母親向けポータルサイトをローンチしました。妊娠から更年期障害まで、記事やガイドを通じて必要な情報全てが得られます。私のビジネスはこれまでになかった新機軸であり、とてもやりがいを感じています」
「2020年にエジプトで大きな注目を浴び、現在は毎月50万人の母親が私たちのサービスを利用していることをとても嬉しく思っています。ビジネスは急激に成長しており、エジプト以外の地域での展開も期待しています。母親業はグローバルであり、どこの母親もサポートを必要としていますから。
新しい市場に私たちを浸透させ、できるだけ多くの母親に影響を与えるという使命に賛同してくれる投資家との出会いを願っています」
「私は、行動を起こすことができる、強い女性たちによる企業であることを誇りに思っています!
私たちは、社員がベストな状態でいられるよう継続的にトレーニングし、非常に柔軟な職場環境を提供しています。母親は子供を仕事に連れてくることができ、また、産休の取得も強く推奨しています。そして、母親たちは女性からサービスを受けることが、昔も今もそしてこれからも一番だと信じています」
「夢を追い、自分を信じ、自分が自身のヒーローになること。そして誰にも邪魔させないことです」
「私には母、祖母、夫と息子の素晴らしい家族がいます。彼らは私の誇りと喜びであり、私を信じて応援してくれる頼もしい存在です。家族とは、できるだけ多く向き合う時間を持つようにしています。仕事と家族の存在が私にパワーを与えてくれる源ですね」
カンファレンスのオープニングで、カルティエ ジャパン プレジデント&CEOの宮地純さんは「170年以上の歴史のなかで、女性はいつの時代もカルティエの原動力であり無限のインスピレーションを与えてくれる存在でした。現在も顧客の多くは女性ですし、カルティエの社内では多くの女性が活躍し、性別を問わず才能ある人材を登用する文化が根付いています」とジェンダーギャップのない社風について言及しました。
カルティエ ウーマンズ イニシアチブの活動は、まさにメゾンの哲学に通じるもの。今年開催のドバイ万博には民間企業として唯一「ウーマンズ パビリオン」を共同出展予定で、引き続きあらゆる女性を称え、支援して行くのだそうです。
そんな世界的企業が支援する女性起業家とカンファレンスに参加した若い「起業家の卵」たちの、パワーに溢れて輝く様子は、暗いニュースが多い昨今、よりよい社会にむけて前向きに進んでいこう、という明るい希望を大いに感じさせてくれるものでした。
問い合わせ先
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 神田朝子