ここ数年、軽自動車の走りが飛躍的に進歩している。以前は「維持費が安いから、ま、仕方ないじゃ……」と半ば妥協して軽自動車を選んでいたユーザーも少なからずいたはず。でも、いまどきの軽自動車はハンドルから伝わってくる安心感がフツーの乗用車とほとんど変わらないばかりか、メーカーごとに走りの味に個性があって「選ぶ愉しさ」まで生まれている。

ホンダNシリーズでもっとも運転が楽しいモデル

従来型のイメージを継承しつつ、モダンにアップグレード。こちらのグレードはプレミアム・ツアラー。
従来型のイメージを継承しつつ、モダンにアップグレード。こちらのグレードはプレミアム・ツアラー。
乗車時に窮屈さを感じない工夫が施されている。
乗車時に窮屈さを感じない工夫が施されている。

そうしたなかで私が特に気に入っているのがホンダのNシリーズ。市街地走行では路面からの振動をシャットアウトするしなやかさを持ちながら、高速道路ではしっかりとした安定感を生み出す絶妙な足回りが、軽自動車とは思えない快適性と操縦性のバランスを実現しているからだ。そんな魅力が評価されて、Nシリーズでいちばん大きくて装備も豪華なNボックスは2020年に新車販売台数第一位を達成。ちなみにこの記録は軽自動車だけでなく登録車(いわゆる小型車や普通車)を含んでいるもので、しかもNボックスがNo.1に輝いたのは4年連続。軽自動車だけでいえば6年連続でトップの座を守り続けているのだ。

今回、試乗したNワンは、Nシリーズのなかでもっともコンパクトな1台。そう聞いて「小さな軽自動車に魅力なんてあるの?」と思われるかもしれないが、これがオオアリなのである。

Nボックスの室内はたしかに広々しているけれど、そのおかげでボディが大きく、車種によってはNワンより50〜100kgも重い。しかも、Nボックスは背が高いので重心が高くなりがちで、この辺は走りの性能にはいずれも不利な要素。ちなみに正面から見たときにボディが占める面積が大きなNボックスは空気抵抗の面でも不利で、これは高速道路の燃費で大きく響くことだろう。

もちろん、家族みんなで乗るとか荷物をたくさん積む機会が多い人にとってはNボックスが便利。でも、室内の広さよりも走りの味が大切という人にはNワンがお勧めだ。

プレミアム・ツアラーのインテリアは本革巻きのステアリングにブラックウッド調のパネルがつく。軽自動車とは思えない上質な空間。
プレミアム・ツアラーのインテリアは本革巻きのステアリングにブラックウッド調のパネルがつく。軽自動車とは思えない上質な空間。

ちょっとかわいいプレミアム軽をお探しの貴方に!

大谷氏が推すのはベーシックなオリジナル。
大谷氏が推すのはベーシックなオリジナル。
オリジナルのインテリアはホワイトで加飾。
オリジナルのインテリアはホワイトで加飾。

実際、Nワンは驚くほど乗り心地がいい。なかでもいちばんベーシックなオリジナルが私のいちばんのお気に入り。とにかくその滑らかな足回りの動き方は軽自動車の常識を塗り替えるもので、私自身、「ああ、これだったら普段として足に買ってもいいなあ」と思ったくらい。ちなみにオリジナルはいま流行のターボエンジンではないものの、力強さは十分で、しかも街中を走る範囲であればエンジンの回転数がそれほど高くなることもなく、車内は静か。車両価格がおよそ160万円と、この手の「プレミアムな軽自動車」としてはお手頃な点も見逃せない。

このほかNワンには装備が豪華なプレミアム、ターボエンジンを搭載したプレミアム・ツアラー、スポーティな走りを重視したRSなどをラインナップ。なかでもRSはターボエンジンと6速マニュアルトランスミッションの組み合わせが用意されていることで話題を呼んでいる。

おまけに最新の軽自動車らしく先進安全装備が充実しており、衝突軽減ブレーキや誤発進抑制機能を搭載。さらに長距離ドライブで便利なアダプティブクルーズコントロールや車線維持支援システムなどという、数年前までなら高級車でも珍しかった機能を標準装備しているのだ。インテリアもデザイン性が高くてオシャレ。コンパクトカーに興味をお持ちの方には「僕は軽自動車なんか乗らないよ」なんていわずに、是非ともその仕上がりを実際にチェックして欲しい1台だ。

こちらはスポーティなRS。
こちらはスポーティなRS。
MTが選べるRSはスポーツカー好きにおすすめ。
MTが選べるRSはスポーツカー好きにおすすめ。

問い合わせ先

ホンダ

TEL:0120-112010

この記事の執筆者
自動車専門誌で長らく編集業務に携わったのち、独立。ハイパフォーマンスカーを始め、国内外の注目モデルのステアリングをいち早く握り、わかりやすい言葉で解説する。
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