今やすっかり耳慣れた言葉「サステイナブル(=Sustainable)」。「持続可能な」という意味のこの言葉は、地球を取り巻く環境が大きく変化している今、これまで以上に大きな役割をもつ言葉といっていいでしょう。

とりわけ「食」の世界では、限りある資源をどう使うのか、どう残していくのかは切実な問題。それゆえ、地産地消やフードロス問題など、トップシェフたちは早くから「持続可能な」仕組みづくりを意識してきたのです。

「ラグジュアリー」と「サステイナブル」の共存。一見すると両立しないように思えるこのふたつの言葉と共に進化する、ラグジュアリーレストランの「今」に迫りました。

今回ご紹介するのは、ヴィーガン・メニューに取り組む一つ星レストラン「ファロ」です。

ガストロノミーとヴィーガンを同じテーブルで楽しむ、多様性を認め合う——「FARO(ファロ)」

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ランチのヴィーガンコースより、メイン「大根テリーヌのソテー バルサミコソース」。大根本来の甘みとうま味がしっかり感じられるシンプルな大根もちのソテーの上には、色鮮やかな4種の大根スライスが。玉ねぎの甘みとバルサミコの甘酸っぱさが効いたソースと、発酵ごぼうパウダーの香ばしさがたまらない。見た目に麗しく、まるでステーキのようにメインにふさわしい食べごたえのある逸品。

2018年、能田耕太郎氏がエグゼクティヴ・シェフに就任。「イタリアのスターシェフが、日本へ逆上陸!」と話題に。それもそのはず能田シェフは2017年以来4年連続ミシュラン一つ星を獲得しているローマの「ビストロ64」のオーナーシェフ。このたび「ファロ」でも一つ星を獲得しました。

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キーカラーのブルーとシルバーでまとめられた美しい店内。

その能田シェフが就任当初から取り組んでいるのが動物性食材を使わないヴィーガン・メニュー。

「今でこそ『ヴィーガン』という言葉は浸透してきましたが、それでもまだストイックなイメージが強いように思います。僕が目指すヴィーガンは、ガストロノミーな観点でも楽しめるもの。ヴィーガンの方だけではなく、おいしく食べて体の中からきれいになりたいと思う人にも楽しんでいただきたい。

見た目も美しく驚きのあるひと皿を、目でも舌でも楽しんでいただければ」

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「高野山」オリエンタルヴィーガンコースよりカラフルな「ミネストローネ茶漬け」。玄米の上には、かぶやビーツ、さつまいもなど6種の野菜と、菊芋やクロレラ、かぼちゃなど6種の野菜パウダーが。豆を炊いただしをかけていただく優しい味はやみつきに。

日本各地から取り寄せた食材を余すことなく使いきる。それは厨房やスタッフ全員にも通じるスピリット。

「『スタッフ全員がフードキュレター』を目指しています。僕自身が全国を巡り生産者とのつながりを深めることはもちろんですが、各スタッフが生まれ故郷の食材や文化を今一度学び、愛をもってプレゼンしてきます。結果として今、スタッフの地元の食材を使うことが多いんです(笑)。

ヴィーガンというスタイルを通して多様性を学ぶほか、自身の郷里を知るということもサステイナブルな視点だと思います」

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全国から取り寄せる野菜は150種以上。

【Sustainable Point】すべての食材を有効活用

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うまみ調味料として活用。

天災で熟さなかった緑のミニトマトも仕入れ、コンブチャで発酵させ、うま味調味料に。野菜の皮や芯は野菜パウダーにするなど(上記のお茶漬けで使用している)、食材は形を変えてすべて使いきります。

問い合わせ先

  • FARO(ファロ)
  • 営業時間/ランチ12:00~13:30(L.O.)、ディナー18:00~20:30(L.O.)
    定休日/日曜祝日、月曜、夏季(8月中旬)、年末年始
    メニュー/ランチコース:ラピド(5品)¥6,500、ヴィーガン(6品)¥8,000・ディナーコース:ガストロノミー(8品~)¥15,000、ガストロノミーヴィーガン(8品~)¥12,000
  • ※すべて税込、サービス料10%別。
  • ※要予約
  • TEL/0120-862-15003-3572-3911(共に受付11:00~22:00)
  • 東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル10F

PHOTO :
篠原宏明
EDIT&WRITING :
田中美保、佐藤友貴絵(Precious)