働き方にはさまざまなキーワードがありますが、昨今、ワークライフバランス追求などの話題でよく見かける「時短」もそのひとつです。残業をなるべく削減しようという企業の動きも目立ち、日々の業務の中では、自分なりにさまざまな工夫を凝らしている人たちも多いのではないでしょうか。

プライベートも充実させられるよう、効率よく「時短」に取り組むには何を心がけるべきなのか。書籍『できる人の時短仕事術』の著者である経営コンサルタントの水沢博樹さんに、お話を伺いました。

■1:前提にあるのは“先読み”する力

逆算して動くと効率が上がる

結果を出す人は「先を読んでいる」と水沢さんは話します。例えば、日常のささいなことでいうと、上司から頼まれた仕事をあらかじめ準備していたり、1日のスケジュールを前もって自分で整理しておくのも大切。それを目指すためには「結果を初めに想定しておく」のが重要だといいます。

「先読み術、これは“逆算力”ともいえますが、朝の出勤時にその日のことを予測したり、1週間後、1か月後に何が起きるかを予知しておくのは、ビジネスマンにとってとても大切なことです。例えば、優秀なリーダーというのは、会議の場面でもどういうテーマで進め、どういうメンバーを集めるのかと、段取りの段階で想像していることが多い。結果から逆算するという考え方ですが、できればあらかじめ『よい結果と悪い結果』の双方をイメージしておくのも重要です」

目の前で起きたことにばかり対応していては、限られた時間はどんどん失われる一方。先を読む力を身につけられば、時短への第一歩を踏めるはずです。

■2:自分なりのマニュアルをつくり、応用する

マニュアルを見ながら進めるのではなく、経験に基づき「自分なりのマニュアルをつくる」のも、時短への鍵になると水沢さんはいいます。成功したか失敗したかを問わず、誰にとっても財産となりうる過去の経験を応用して、ビジネスの場面で活かそうということです。

過去のパターンを知っているというのは「先読み術の貴重なナレッジ」だと水沢さんは述べます。

「同じ経験をしても、身に沁みる人とそうでない人がいます。これにはのちにも触れる、本人の“当事者意識”が大きく関係しており、どんな仕事でも自分なりの役割意識を感じるのは大切で、それがないとやはりひとつひとつの業務へ積極的に取り組めません。また、これは管理職の方々に伝えたいのですが、部下を消極的にしないためには、例えば、自分にないものがあったら評価するなど、きちんと相手を尊重することが重要です」

一度、経験したことを別の業務に応用できれば、何かあるたびに調べるなどの時間も減り、時短にも繋がります。そのためには、仕事を何としてでも「自分の体と心に染み込ませる」という意識も大切です。

■3:俯瞰してやるべきことを見きわめる

一歩引いて全体を見る

会議でみんなが盛り上がっているところ、ふと「それは違うんじゃないか」と空気を変えるような発言をする人がいます。昨今、一部では“鈍感力”などと呼ばれるときもありますが、実は、この力も時短には欠かせないものです。

残業しないで結果を出す人は「俯瞰して一歩引いて全体を見られる人」でもあると水沢さんは話しますが、目の前のことだけではなく、視野を広く持ち想像することが大切だと伝えます。

「例えば、思い切って誰もいないオフィスで上司の席に座ってみるというのも、俯瞰して見るための方法ですね。ここで重要になるのは、自分の指示や仕事のプロセスの先で誰がどう動いているのかを想像するということです。そうすれば、おのずと自分が何をすべきかも見えてきますし、どの業務へと力を入れるべきなのかもだんだんとわかってきます。また、会議などできちんと道筋を立てて“水を差せる”人というのは、一歩引いて、何が必要かをみきわめる力があるともいえます」

自分のやるべきことをきっちりと見極められれば、効率よく仕事を進められるということですね。一見、空気を壊しているように見える人の仕事のスタイルを冷静に観察してみると、そのヒントに繋がるかもしれません。

■4:当事者意識を持って意識を高める

プロジェクトを進めようとするとき、すぐさま意見を出せる人がいます。何かが必要になったとき、その都度調べているようでは限られた時間も失われてしまいますが、すぐれた人たちは「当事者意識を持っている」と水沢さんは話します。

「業務にしろ企画にしろ、自分の問題として捉えている人たちは、効率的な情報の集め方などを日常的に行っています。反対に、そうでない人たちは態度が投げやりになりがちです。例えば、会議の場面でスマホをいじっていたり、誰かが何かを言うと極端に否定的な発言ばかりする人は、当事者意識を持っていない印象を受けます。こうした人たちを反面教師として捉え、日頃から、仕事に必要なものを吸収するクセをつけておけば、どんな場面でも対応できるようになるはずです」

仕事に縛られてしまうのも考えものですが、それでも、日々の遊びの中でも「ひょっとしたら仕事に使えるかも」とわずかでも思う瞬間があれば、必要なときに役立つかもしれません。

■5:限られた時間の中で「現在」と「未来」を意識する

どちらも同時に意識する

音楽の指揮者は、目の前で演奏している「現在」と、数小節先の「未来」の展開を常に読んでいるといわれます。1日後、1週間後、1か月後、1年後と、未来を見据える力も、実は時短にとって欠かせません。

それは、未来がわかっていなければ「今何をすべきか」が見えないからですが、水沢さんは「本当にやらなければならないものを見極められない人もいます」と話します。

「物理的に仕事量が多い場合には仕方ない部分もありますが、やはり、先を読める人は未来を見通しています。例えば、ラフ案の段階で確認すべきなのに、締め切りギリギリかそれを超えるまで自分なりの価値判断で品質を高めて何かをつくってしまう人などは、それが見えていない可能性があります。誰にとっても24時間しかない時間は、限られた財産です。よけいなことに手間を取られていると、今の数秒数分が、将来の多くの機会を失わせてしまうかもしれない。その危機感を常に持ちながら、業務を進めていくのも大切です」

先が読めない中で動いていては、いつまで経っても終わらない仕事に振り回されかねません。効率を求めるだけではなく、時短の本来の目的は生活を充実させるための「新しい働き方」として広まることだと水沢さんはいいます。以上のポイントを意識して、日頃の業務を見つめ直してみましょう。

PROFILE
水沢博樹(みずさわ ひろき)さん
慶應義塾大学経済学部卒業。経営コンサルタント。顧客満足、職場の問題解決のスペシャリストとして活躍中。現場改善・仕事の環境改善のための人材育成、人間関係論、チームづくり、マーケティングなど現場に即した組織活性化のための提言をおこなっている。
『できる人の時短仕事術』水沢博樹・著 ぱる出版刊
この記事の執筆者
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WRITING :
カネコシュウヘイ