靴磨きとは、買った時のような輝きを取り戻すことではない。本当に必要なのは靴に使用されている革や使用者に合わせた手入れが必要だ。それ以外にも1日履いたら1日休ませる 汚れていたらブラシをかけ、使わないときはシューツリーを使い保管するなど日々の手間も必要になる。

知るべし!素材別、靴磨きの超絶技巧

©Getty Images

超絶技巧1:スムースレザーの場合、大切なのはつま先とかかとの輝きだ!

つま先とかかとの鏡面磨きに加えて、靴をより美しく立体的に見せる技を手がける。コバに沿ったすぐ上の革の部分も磨き上げ、つま先とかかとの輝きをつなげることで一体感が生まれ、立体的に靴が磨き上げられるのだ。
つま先とかかとの鏡面磨きに加えて、靴をより美しく立体的に見せる技を手がける。コバに沿ったすぐ上の革の部分も磨き上げ、つま先とかかとの輝きをつなげることで一体感が生まれ、立体的に靴が磨き上げられるのだ。

本格靴の素材は、スムースレザーが主流である。カーフやコードバンなどの表革がその代表で、靴磨きの対象になることが最も多い素材だ。ゆえに靴磨きは、第一にスムースレザーの磨き方を知ることが重要である。

まず、注意する点は、靴全体を一様に輝かせないこと。靴をピカピカに磨くと、かえって品が失われる。靴を立体的により美しく見せるには、つま先とかかとを強調して磨くのがポイントだ。

つま先とかかとを磨き上げるコツは、靴の汚れを取り、乳化性のクリームをなじませた後、油性のワックスをつま先とかかとに塗り、光らせます。磨くときは、ワックスをTシャツのようなやわらかいコットンの布に少量つけて、つま先とかかとにのばして、少し水をつけて磨くのがポイント。

磨きの作業は、ひたすら「ワックスを塗る、水を垂らして磨く、再びワックスを少量塗る、水をたらして磨く……」こと。このサイクルを繰り返すことで、つま先とかかとが、まるで鏡のように輝き出すのである。

鏡のように輝いたつま先とかかとは、ワックスで革の組織を埋めて膜をつくった状態。美しい輝きを放つだけではなく、水を弾き、革を保護する効果もある。


超絶技巧2:エキゾチックレザーの場合、いぶし銀のツヤ感をしっとりと出す!

しっとりとした控えめなツヤは、エキゾチックレザーの個性が生きる。時間をかけて磨くことで、より革になじむ、いぶし銀のようなツヤ感が生まれる。リザードの斑が立ち上がったような、美しい質感だ。
しっとりとした控えめなツヤは、エキゾチックレザーの個性が生きる。時間をかけて磨くことで、より革になじむ、いぶし銀のようなツヤ感が生まれる。リザードの斑が立ち上がったような、美しい質感だ。

靴の素材に使われる表革には、代表的なカーフやコードバンのほかに、クロコダイル、リザード、オーストリッチなどのエキゾチックレザーがあり、スムースレザーとは異なる個性的でゴージャスな足元を演出できる。

但し、その派手な佇まいの靴を、正統的なスーツに合わせて程良く見せる必要がある。だからこそ、上品に仕上げる靴磨きが鍵をにぎるのだ。エキゾチックレザーは、靴全体をしっとりとした控えめなツヤで覆うのが、むしろ美しい。

控えめな輝きに仕上げる靴磨きのポイントは、スムースレザーと変わりなく、仕上げにもワックスを使わずに、乳化性のクリームのみで磨き、エキゾチックレザーに、しっとりとした品のある光沢になる。リザードは、適度に力を入れ、滑らすように靴全体を一気に磨きあげる。クロコダイルの場合は、リザードよりも斑が大きいため、斑のひとつひとつを磨くイメージで、指でクリームを載せていくのがおすすめだ。

スムースレザーに比べて、クリームが浸み込みにくいエキゾチックレザーは、より時間をかけて磨く根気のいる作業になる。


超絶技巧3:スエードの場合、毛並みの色調をムラなくそろえる!

消しゴムや紙やすりも使って、スエードの靴を手入れをし、ダークブラウンのスエードの色調を整えて、やわらかな毛並みがよみがえった仕上がり。スムースレザーの輝きとは違い、素材が息を吹き返すような感覚が、手入れの到達点となる。
消しゴムや紙やすりも使って、スエードの靴を手入れをし、ダークブラウンのスエードの色調を整えて、やわらかな毛並みがよみがえった仕上がり。スムースレザーの輝きとは違い、素材が息を吹き返すような感覚が、手入れの到達点となる。

革の裏面を起毛させた素材がスエードである。スムースレザーやエキゾチックレザーと同様に、本格靴に多用される革だ。スエード靴の手入れは、磨くのではなく、スエードの毛羽立ちを補修するのが主眼。

「素材をリフレッシュさせる」ような感覚が、手入れの要諦である。スエード靴の傷みは、つま先やはきジワ部分の毛足の乱れと、靴がこすれて色が落ちたものに大別できる。

まず、毛足の手入れは、ブラシでスエードの毛並みを丁寧にそろえ、もしスエードの毛が長く毛羽立っていればカットします。ブラシをかけても落ちない汚れは、消しゴムや砂消しゴムや、目の細かいサンドペーパーを使ったりすることで汚れを落とすことができる。仕上げの基準は、靴全体のスエードの毛並みと靴の色調がムラなくそろうこと。メンテナンス後の靴は、まるで息を吹き返したようにスエードがやわらかくなる。靴の色に合わせた防水カラースプレーをかけることで、はっ水効果も上がり、汚れもつきにくくなるのである。


以上、素材別靴磨きのポイントを紹介した。プロのような美しい仕上がりを目指すなら日々の積み重ねが必要ではあるが、愛用の1足を自身の手で手入れをするのも楽しいことだろう。手塩にかけた1足ほど愛おしいものはない。

この記事の執筆者
名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
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