3人のジェントルマンたちによるお洒落の哲学を宿したスタイリング
不変のルールが存在するクラシック・テーラリングを現代の感覚で表現する|マーク・チョー

ルールに対して、「厳格に守っているルールは少ししかありませんし、変化をもたせる部分は常にあると思っています」と語るマーク・チョーさん。そのなかで絶対に守るべきことがある。「紳士はロングホーズを選ぶのが最も賢い選択です。短いソックスは落ちやすいものですが、ロングホーズは落ちないし見た目もずっといい」。アメリカの’50~’60年代のスタイルを好むマークがオリジナルで開発したテーラーケイド×アーモリーのビスポークスーツ『モデル99』はクラシックスタイルをモダナイズした好例だ。

「常に不変の着こなしルールのなかでも、特に変わらないのは色使いでしょうか。意識して選ばない限り、本能的に周囲になじむ、落ち着いた色使いを好む傾向があります。ロンドンで長い間そのような色に囲まれて育ったせいかもしれません。スタイルでは特に近年のブリティッシュスタイルが好きなのですが、それは軍服など伝統的な服からの引用や、ユーモアがありながらも落ち着いた色使いだったりするからだと思います」

「アメリカのスタイルが好きなのは気楽さがあり、よい意味で大味なところ。トラウザーズはきついものをはいてはいけない。すっきりとした、長さのあるシルエットを作るためには、ゆとりのあるものをはく必要がある。ジーンズはサイズがきつすぎず、シンプルなデザイン、ウォッシュがあまりかかっていないものを時間をかけて育てていくのが好きです。一方シャツのシルエットは逆。シャツの襟は首にピッタリ沿っているべき。ネクタイを締めなくても、ゆるい襟元は格好よくない」
モダニズムが生む新たなクラシック
クラシックスタイルを通して現代的な装い(モダニズム)を表現することは可能なのか? 自らクラシックスタイルの標榜者であるアーモリーのマーク・チョーさんはこう語る。「それは可能だと思います。現代的な装いはファッション業界によって決められたメインストリームの流行を追うことより、自分の指標で自分のスタイルを見つけていくこと。これはインターネットが可能にした、近代的な民主主義の世界で生きていくうえでのある一面だと思います。
だれが流行を支配するかという昔のファッションヒエラルキー(階級)の大部分がソーシャルメディアによってなくなったのです。これによって人々が好きに装うことの幅が広がり、周囲に合わせることは期待されていない。SNSにより、世界中の人と自分の装いを披露し合い、何を着ているか話し合うことができるようになりました。
ファッションはローカルからグローバルへ移行し、日本にいても世界中の自分と近い考えの人々を見つけることができる。たとえ周りが似たような服装をしていなくても、自分のスタイルに自信をもち、居心地よく過ごせることは、非常に大きな変化だと思っています。
こうした変化のなかでクラシック・テーラリングという、長い間着られているスタイルの服を時代錯誤にならずに着ることができるのは、現代感をクラシックを通じて表現できるという証ではないでしょうか。つまり、モダニズムによってクラシックは新しい命を与えられているのです」
現代的な装いといえばその時期のトレンドが必ず話題となるが、彼はトレンドに関しても明確なスタンスをもっている。「流行は追いたくない、この点に関してはとても敏感です。多くの人が必要以上に盛り上がっているものを見ると懐疑的になってしまいます。あまり考えずに流されるのが好きではないのです。とはいえ、仕事上は何が好まれているか知る必要があります。お客様に服をすすめるには、それがよいものであること、さらに着る人の環境に合っていることが非常に重要だからです」
クラシックスタイルの基本は変わらないというが、時代を経て変わったものはあるのだろうか?
「年を重ねるにつれ、自分をより理解できるようになり、自信がつきました。他の人に認めてもらうために特別なものを身につけようと思うことはほとんどありません。自分が気に入っていて、自分を表現してくれるものを着ています。最近、少し不完全なものもいいなと思うようになりました。以前よりもスポーツコートを多く着ますし、シンプルで質のよいコットンチノもすごく好きですね」
多くのファッショニスタは自らのアイコン的存在を語ることが多い。アイコンとする人物は?「特にいないですね。他の人たちにはそのスタイルがあり、私には私のスタイルがあります。彼らが素敵に見える服装が私に似合う、もしくは私がすべき服装とは思わないのです。ファッションとは現代を感じることであり、社会全体の表現です。一方で、スタイルとは、どんなものを、どう着るかにより、自分自身を表現するものだからです」
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2021年春号より
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- PHOTO :
- 川田有二
- STYLIST :
- 櫻井賢之
- HAIR MAKE :
- 宇津木 剛(PARKS)
- MODEL :
- Daisuke