フィレンツェで行われている服の見本市がピッティ ウォモ。その靴バージョンが、1年に2回、ミラノで開催されている「ミカム」(the MICAM)です。今年2回目の開催となった9月のミカムでは、来場者数 が47,187名、出展社数 は1,441社 (内イタリア出展社797社/外国出展社644社)という世界トップレベルの規模で開催され、2018年の春夏の最新商品(男女)が会場に並びました。

 ここでは、ニューヨークの有名百貨店から盛岡の靴屋さんといった具合に、規模は違えど、靴には一家言持っているバイヤーや目利き店主が、会場のあちこちで仕入れや情報交換をしている姿が見られます。まさに、「足元の流行は、ミカムから発信される」と言い切っても過言ではありません。

ラグジュアリーブランドが発信する新潮流

ラグジュリーブランドも出店するミカムでは、ピッティ ウォモではあまり見かけないモード系のスタイリングをした男女(特に女性の来場者が多い!)が目立ちます。モード系と言っても、ミラノでの開催ということもあり、エッジの効いたパリのモードとは違う大人の品格のあるスタイリングがポイントです。
ラグジュリーブランドも出店するミカムでは、ピッティ ウォモではあまり見かけないモード系のスタイリングをした男女(特に女性の来場者が多い!)が目立ちます。モード系と言っても、ミラノでの開催ということもあり、エッジの効いたパリのモードとは違う大人の品格のあるスタイリングがポイントです。

 ピッティウォモのスナップからリアルな服のトレンドが読み取れるように、靴に関してはミカムのスナップを見れば、靴のトレンドのみならず、靴と服のコーディネートの最旬版がチェックできます。特に注目したいのが、ピッティ ウォモには参加していない、イタリアを代表するラグジュアリーブランドのブース。今回は高い影響力を持つブランドのブースから、靴の新潮流を探っていきます。

ラグジュアリーをまとめたパビリオンの入り口を入ると、巨大な靴のオブジェがお出迎え。中ではお洒落なバーバーが髭剃りの実演を行っていました。こうした柔軟な発想は、イタリアならでは。
ラグジュアリーをまとめたパビリオンの入り口を入ると、巨大な靴のオブジェがお出迎え。中ではお洒落なバーバーが髭剃りの実演を行っていました。こうした柔軟な発想は、イタリアならでは。
バーバーのスタッフも、靴とソックスにしっかりと気を使っているのがわかります。
バーバーのスタッフも、靴とソックスにしっかりと気を使っているのがわかります。

 ラグジュアリーのパビリオンの一番奥には、イタリアを代表するブランドが別格の扱いで展示されていていました。このスペースに並んだブランドは、ショップさながらの照明やディスプレイ什器、壁にはシーズンのイメージビジュアルを並べていました。ブランドによってはCEOまで視察に来たり、モデルのような容姿のスタッフに最新の服を着せて接客したりするなど、気合いの入ったプロモーションを展開。
 ラグジュアリーブランドのブースを回って、改めて会場全体を見ると、ラグジュアリーブランドが打ち出すものがトレンドの先頭を走り、続いて世界中の靴メーカーや工房がアレンジして追従し、やがて流行が拡大してマーケット全体が活性化するという流れが実感できました。

ご存知、ジョルジオ アルマーニのブース。
ご存知、ジョルジオ アルマーニのブース。

ノータイのスーツにはローファーを!

この男性がはくモデルは、1953年当時を思い起こさせる様なラウンドトゥですが、甲の部分がやや長めになっていてかなりモダンに見えます。これぞ傑作デザインの素晴らしいところで、オリジナルデザインをリスペクトしながらも、微妙に現代風のアレンジが加えられています。
この男性がはくモデルは、1953年当時を思い起こさせる様なラウンドトゥですが、甲の部分がやや長めになっていてかなりモダンに見えます。これぞ傑作デザインの素晴らしいところで、オリジナルデザインをリスペクトしながらも、微妙に現代風のアレンジが加えられています。

 グッチのブースにいたスタッフもほとんどがホースビットローファー。ただし、よく見るとトゥの丸みやかかとの高さに違いがあったり、スリッパになっていたりと、バリエーションが豊かになってきています。
 ところで、ノータイ&スーツにローファーという着こなしは、日本のビジネスマンも取り入れたいスタイルだと思うのですが、いかがでしょうか? 個人的には、ノータイでスーツを着る時に、レースアップ(紐付き)の靴をはくのは、ちょっとチグハグな気がします。そういうときは、やはりローファーがぴったりかと。とはいえ、この御仁のように、ホースビット付きまで素足履きまでいくと、かなりリラックス感出ますので、職種を選びますが……。

こちらは、今、日本の女性誌でもよく取り上げられている、ホースビットローファーのサンダルバージョン。これにファー(毛)がついたものが秋冬バージョンで出ていますが、9月のミラノのモンテナポレオーネ通り(東京・青山のような通りをイメージしてください)界隈では、これを履いて歩く人を何人も見ました。そうなんです、これは室内履きではないのです!
こちらは、今、日本の女性誌でもよく取り上げられている、ホースビットローファーのサンダルバージョン。これにファー(毛)がついたものが秋冬バージョンで出ていますが、9月のミラノのモンテナポレオーネ通り(東京・青山のような通りをイメージしてください)界隈では、これを履いて歩く人を何人も見ました。そうなんです、これは室内履きではないのです!
 

ちなみに、グッチにインスパイアーされたこの手のサンダルは他のブースでもたくさん目にしました。ブリテッィシュスタイルも華麗にはきこなす!

イタリアを代表するドレスブランドも!

こちらの御仁は、エルメネジルド・ゼニアのCEOのゼルド・ゼニアさん。スーツ&ブーツは、今年の秋冬のドレスのトレンド。一見プレーントゥに見えますが、紐部分が見えないので、足元がシャープに見えます。
こちらの御仁は、エルメネジルド・ゼニアのCEOのゼルド・ゼニアさん。スーツ&ブーツは、今年の秋冬のドレスのトレンド。一見プレーントゥに見えますが、紐部分が見えないので、足元がシャープに見えます。

 上の写真は、今年のトレンド「ブリティシュ スタイル」と言うこともできます。なぜなら、その昔、ロンドンブーツに始まり、カーナビーブーツなどを世界中に流行らせたのは、英国だったのですから。

今回の1回目のレポートのラストはスニーカー。人気を博したスタンスミス系のスタイルがブームで終わらず、靴業界の新しい流れを確実に作り出しています。この方もエルメネジルド ゼニアのスタッフの方ですが、イタリアを代表するドレス系ブランドまでもが、スニーカーをミカムで発表しているのです。そのうえ、ドレスシューズは展示なしという潔さ!
今回の1回目のレポートのラストはスニーカー。人気を博したスタンスミス系のスタイルがブームで終わらず、靴業界の新しい流れを確実に作り出しています。この方もエルメネジルド ゼニアのスタッフの方ですが、イタリアを代表するドレス系ブランドまでもが、スニーカーをミカムで発表しているのです。そのうえ、ドレスシューズは展示なしという潔さ!

ジョルジオ アルマーニも「紐なし」を発信!

ジョルジオ アルマーニのブースでも、スニーカーが目立つところにディスプレイされていました。
ジョルジオ アルマーニのブースでも、スニーカーが目立つところにディスプレイされていました。

 上の写真の、ジョルジオ アルマーニのスニーカーには、これから流行るであろう要素が含まれています。どこかおわかりでしょうか? 答えは、「紐なし」。これまでにも、アメリカのスケーターブランドのカジュアルなスニーカーで紐なしがありましたが、上質な素材で紐なし(スリッポン)というのが、スニーカーの新潮流です。特に女性のものは、ここから更に進化した、ウィングチップやキルトタッセルなどのデザインのスリッポンスニーカーが数多く発表されています。
 今回は、ここまで。次回11月14日の回では、イタリアの靴ブランドの中でも、ピッティ系の服に似合いそうなところにフォーカスしてレポートしたいと思います。

この記事の執筆者
『メンズプレシャス』創刊時から、数多のスタイリングで活躍する。とりわけ、高度なテクニックを必要とする、グレーやベージュの淡い色調を、実にリアルで品のいいコーディネートに落とし込める感性の持ち主だ。紳士が知っておくべき伝統的な着こなしの奥義を、ロジカルにつくり上げる名人である。
EDIT&WRITING :
大西陽一
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