日々の食生活に欠かせない、お米。全国各地でブランド米が誕生し、スーパーや百貨店のお米売り場には、本当に幅広い銘柄が並んでいます。
なかでも今、脚光を浴びているのが、自然豊かな山形県のブランド米「つや姫」です。平成22年に本格デビューして以来、日本穀物検定協会の食味ランキングの最高評価「特A」を7年連続で獲得し、消費者からも高い評価を得ています。
現在は輸出拡大にも力を入れ、国内外で支持を集めている「つや姫」。なぜこれほど大ヒットしているのか、JA全農山形の米穀部 米穀集荷販売課課長の八鍬正浩さんにお話をうかがいました。
■高価な「つや姫」が中国や台湾の富裕層に買われている!
JA全農山形では、米ハワイ州、中国、台湾に「つや姫」の輸出を行っています。
また国内での米消費量の減少から、和食人気が高まっている海外に目を向け、新たな顧客の獲得を目指しているそうです。平成28年度の実績としては、中国に約10,000kg、米ハワイ州に約9,000kg、台湾に約3,000kg相当量を輸出しました。
ハワイ州の場合は、ニジヤマーケット、マルカイ、ドンキホーテなどの量販店への輸出が4割、レストランなどの業務用が6割。台湾では量販店への輸出が10割となり、なんと海外の一般家庭でも「つや姫」が食べられている状況なのです。
ただし、中国や台湾、ハワイでは、現地産のお米が安価で手に入るため、高価な日本産のブランド米は、富裕層が購入していると考えられます。
今年1月には、中国・上海の髙島屋で「つや姫」の販売が行われました。精米2㎏/袋で約3300円と、山形県内のスーパーの販売価格約1,100円に比べると、約3倍もの価格。これほど高価格でもしっかり購入されたのだそうです。それほどの魅力が「つや姫」にはあるというわけです。
■つや姫には一度食べたらクセになる「独特の粘り」がある
国内外で知名度が高まっている「つや姫」。一体、どのような魅力があるのでしょうか。
八鍬さんは、「お米自体は嗜好品ですので、個人によって好みが異なります。一般的に言われているのは、つや姫には粘りやコシの強さを感じられるということです。この食感が、多くのお客様の好みに合っているため、値段が高くても、リピーターに繋がっているのだと思います。ほかのブランド米でも、見た目の白さや、食べたときの甘さというものは感じられますが、つや姫はそれらに加えて、粘りやコシが強いことが大きな特徴です」と言います。
山形県は、清らかな水と豊かな土壌、昼夜の寒暖差の大きさなど、米づくりに優れた条件がそろっています。「つや姫」は山形県が10年の歳月をかけて開発した品種であり、高品質を守るために厳しい基準が設けられているのです。
まず、「栽培適地マップ」を定め、気象や地理条件から「つや姫」に適したエリアで栽培されています。さらに生産できるのは、一定の要件を満たし、山形つや姫ブランド化戦略推進本部から認定された農家のみ。栽培基準を有機栽培米、または特別栽培米に限定し、安全安心な米づくりに取り組まれています。
また品質基準も厳しく、収穫後にたんぱく質の含有率といった基準をクリアしなければ、「つや姫」として売ることができません。高いハードルが設定され、限られた形で生産されていることが、このお米のブランド力を高めているのです。
「つや姫」の価格は年々上がっており、28年産のつや姫の相対価格は17,200円/60kgと、新潟コシヒカリを超す価格となっているそうです。
「同じ山形県のブランド米・はえぬきと比較しても、つや姫は5kg袋で、500~600円ほど高いお米です。手頃に食べられるお米の需要がある一方で、価格が高くても欲しいという固定需要がつや姫にはあります。家族の小規模化により、お米を食べる量自体も少なくなっています。せっかく食べるならよいもの、おいしいお米を食べたいと考える方が増えているのではないでしょうか」(八鍬さん)
■つや姫は「冷めてもおいしい」ため、おにぎりにピッタリ
ここまでで見てきたように、「つや姫」は山形を代表する高級ブランド。売り上げは、山形県内が4割、県外が6割ほど。ただし県内の量販店から、贈答品として県外に贈られる方も多いそうです。「つや姫」の人気が高まるにつれ、「つや姫」の煎餅やアイス、米焼酎や日本酒など、「つや姫」を原料とした多様な商品の販売もされるようになってきました。
「つや姫」の食べ方としては、チャーハンなどに調理をせず、お米自体の味がよくわかるように、そのままお茶碗によそって、和定食のような形で食べるのがおすすめとのこと。一粒一粒に甘みや粘りを感じることができるでしょう。また、つや姫は粘りが強いお米なので、冷めてもおいしく、おにぎりにも向いているそうですよ。
おいしく、贅沢感のあるお米を食べることは、お腹を満たすだけでなく、日々の暮らしを豊かにしてくれるでしょう。もちろん実際に食べてみなければ、自分の好みに合うお米かどうかはわかりません。ぜひ一度、味わってみてはいかがでしょうか。
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 椎名恵麻