ワイン選びに迷ったとき、ラベル=エチケットのデザインの気に入った1本を手にする、なんてこと、あるのではないだろうか。同じようにワインのボトル自体も、形や色が様々。改めて見ると、けっこう美しい。ならば、中身を美味しくいただいた後に、ワインボトルを花器として使おう。それもラベルが付いたまま、インテリア気分で。
シンプルな花姿が魅力的な「カラー」を飾る
2本のワインボトルに1本ずつ挿し入れた花の名前は「カラー」。薄くて張りのある麻のハンカチーフをくるりと巻いたような花形が特徴で、名前の由来にはいくつかの説があるが、カトリックの尼僧が着ける白いカラー(襟)からきているとも言われている。ところが、この花びらに見える部分は仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれるガクで、花はその中に隠れている棒状の部分。上の写真のように、光が当たると中の棒状の花がうっすらと透けて見えるというのも神秘的だ。
すらりとしたラインが美しいカラーには、白をはじめ、ピンクや紫、黄色、緑などの色が揃う。そして、花丈は30〜120cmと品種によってかなりの幅がある。そんな中から、ワインボトルのサイズに合わせて挿したのは、小振りで使いやすいことで人気の高いキャプテンシリーズのキャプションプロミスという品種。選んでくれたのは、恵比寿「GINKGO」のオーナー・フローリスト山岡まりさん。今回のようなワインボトル2本を使ってのアレンジなら、「カラーの茎のラインを生かして2本をクロスさせたり、平行に並べたりすると、インテリア感覚でスタイリッシュなアレンジができます」と山岡さん。もちろん、個性的な姿のカラーは、ワインボトル1本での一輪挿しでも十分な存在感がある。
ちなみに、YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)に、「古い本のページをめくったらカラーの匂いがした」という歌詞(英語)で始まる「バレエ」という曲がある。作詞・作曲・ヴォーカルは高橋幸宏さん。メンズプレシャス2020年春号の巻頭企画「衣食住遊」のインタビューに登場した高橋幸宏さんが、「この曲は画家のタマラ・レンピッカのことを歌った曲。カラーは彼女の絵に頻繁に登場する、あの白い花で、僕が一番好きな花です」と語っている。興味が湧いたら(ご存知なかったら)、『レンピッカ カラー』で画像検索してみてはいかがだろう……。
アレンジの名脇役「スノーボール」を主役に!
白ワインが入っていた透明のボトルに山岡さんがいけた花は、スノーボール。アジサイを小さくしたような鞠形の黄緑色の花は、どんな花とも相性がよく、色鮮やかな花々を引き立てることから、“アレンジの名脇役”として人気となっている。そんなスノーボールを主役に格上げ。カッコいいデザインのラベルとの共演を楽しもう、というわけだ。
黄緑色の花が咲き進むと白っぽくなることからスノーボールの名前で呼ばれるが、ビバーナム・オプルスという別名を持ち、和名は「西洋手毬肝木」。その姿を長く楽しむために、いける前や元気がなくなったときに行っておくといい“水揚げ”の方法を、山岡さんが教えてくれた。
まず、水に浸す部分の枝の切り口をできるだけ長めに斜めにカット。すると、その断面の中心部に白い繊維状のものが見えてくるので、それをナイフやハサミの刃先で掻き出すように取り除く。そうすることで、葉っぱ、そして花に、水が行き渡るようになる。このような“水揚げ”のひと手間をかけることも、花との付き合いの楽しみになる。
スノーボールは、日が経つと、密集した花の部分の重さにより、おじぎをするように下向きに曲がってしまっうことがある。そうなったら下の方の枝を思い切ってカットして、高さの低い花器に活け替えて、低重心のアレンジ(vol.1を参照)にして楽しむのもおすすめだ。
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- TEXT :
- 堀 けいこ ライター
- PHOTO :
- 島本一男(BAARL)
- 取材協力 :
- GINGO
- 参考書籍 :
- 「花屋さんに並ぶ植物がよくわかる 「花」の便利帖(KADOKAWA)」