ジビエの季節到来! 中目黒にぜひとも足を運んでみたい店がある。それは、国産ジビエが充実していることでマニアックな肉好きからも一目置かれる「ラ・ブーシェリー・デュ・ブッパ」だ。
ラ・ブーシェリー・デュ・ブッパ[中目黒]L.O23:30
自慢の熟成肉の料理を選び抜いたこだわりワインでいただく
夜が更けても人々が行き交う中目黒駅から、昭和の香りを残す中目黒銀座商店街に入る。目指すは「ラ・ブーシェリー・デュ・ブッパ」。商店街を突き当たって少し脇に逸れたビルの地下に、その店はある。
マニアックな肉好きたちには評判の店のためグループ客も多いが、23時近くになると、その賑わいも収まり落ち着いてくる。そんな時間に訪れる、ひとり飯の特等席は、厨房でシェフが料理の仕上げをする様子を見ることができる、カウンターの一番奥の席だ。
熟成肉とジビエ料理を極めた店として知る人ぞ知る店。入ると、まず目に入るのが、店の奥の壁際にある冷蔵庫。中に肉がぶら下がる様は、肉屋そのもの。店名にあるブーシェリーとは、フランス語で肉屋の意味なのである。
その冷蔵庫は、正確にはドライエージング冷蔵庫というもので、オーナーの神谷英生シェフが5年間の試行錯誤の末に編みだした、いわゆる熟成庫。伝統的なジビエ料理は、野生の動物を捕獲後すぐに料理するのではなく、数日かけて熟成させることで、臭みを消し、逆に肉の芳香を醸し出させ、さらに肉の水分を抜いて肉質を柔らかくする。この熟成の工程をレストラン内で行えるように工夫したのが、このドライエージング冷蔵庫なのだ。
とはいえ、ただ肉をぶら下げておけばいいというものではない。熟成庫は4つに仕切られたおり、それぞれ違った機能を持っている。肉の性質や状態、熟成の度合いなどによって場所を移し替えたり、湿度と温度の調整を繰り返したりしながら、2週間から長いときには5週間もかけて、ゆっくりと熟成させていく。その調整をしているのは、神谷シェフのもとでその技を学んだ石崎真紀シェフだ。
さて、カウンターに着いたら、いよいよ至福の時が始まる。手元のメニューには、強い信頼関係を結んだ猟師から仕入れている国産ジビエをはじめ、厳選した国産牛や黒豚を使った料理の数々が並ぶ。その中から深夜のひとりカウンター飯におすすめのメニュー3品を、石崎シェフが選んでくれた。
前菜はシャルキュトリーの盛り合わせ。シャルキュトリーとはハム、ソーセージ、パテ、テリーヌなどの肉を加工したものの総称で、彩りも美しいこのひと皿には、黒豚やイノシシ、シカなどを使った「シャルキュトリー」がおよそ10種も盛り合わせてある。
そして、熟成させた肉の凝縮された旨味を堪能することができる炭火焼料理は外せない。石崎シェフがミディアムレアで出してくれた「本州鹿の炭火焼」は、しっとりとした食感。噛みしめるたびにじんわりと広がる旨味がたまらない。
もうひと皿は、「ラ・ブーシェリー・デュ・ブッパ」のスペシャリティ「鹿のブータン ノワール テリーヌ仕立て」。ブータンノワールとは本来は豚の血と脂によるソーセージのことだが、これは鹿肉を使ってテリーヌのような四角い形に仕上げたもの。口の中に広がるほのかな甘みが絶妙で、驚きのひと皿。ジビエに慣れてない人にも受け入れやすく、また、これを目当てに訪れる客も多いという。
そして、酒。料理に使う肉は、95%が国産肉という「ラ・ブーシェリー・デュ・ブッパ」の酒類の揃え方の特徴は、国産のワインを充実させていること。「肉もワインもベクトルを揃える」という趣旨によるもので、「熟成によって味がまろやかになった肉は、癒しの滋味溢れる優しい日本のワインとの相性がいい」とマネージャーの山﨑武指さん。
まだまだ一般に知られてない日本のジビエの話や国産ワインの話を、深夜のひとり客ならではの気軽さでシェフやマネージャーから聞きながら、旨い肉料理とワインをいただく。そのひとときこそが、なににも勝るご馳走かもしれない。
※価格は税込。席料は別になります。
【お問い合わせ】
■ラ・ブーシェリー・デュ・ブッパ
東京都目黒区祐天寺1-1-1 リベルタ祐天寺B1
TEL:03-3793-9090
営業時間/18時~25時 ラストオーダー25時/日曜 18時~24時ラストオーダー23時30分
定休日/月曜日、月に一回火曜日休み
アクセス/中目黒駅より、徒歩約8分
http://dubuppa.com
- TEXT :
- 堀 けいこ ライター