ハイエンドスポーツカーで街を流すのは、とても贅沢な行為といえる。圧倒的な性能の片鱗を体で感じながら、美しいリゾートを流すのは絵になるし、あえて普通に買い物に使うのもあり。いちいち目立つのは承知の上で、あくまでもさらっと流すのが男の美学。フェラーリ・ポルトフィーノMには、そんな遊びが似合う。

流して様になる最新フェラーリ

2017年発表の「ポルトフィーノ」をさらに進化させた「ポルトフィーノM」。
2017年発表の「ポルトフィーノ」をさらに進化させた「ポルトフィーノM」。
2プラス2のGTとしてオールマイティぶりが謳われている。
2プラス2のGTとしてオールマイティぶりが謳われている。

フェラーリが似合う場所は大きくいって二つある。ひとつはサーキット。もうひとつは、優雅な海岸沿いの道だ。たとえば、南仏ニースのラ・プロムナード・デザングレ。英国人の遊歩道と呼ばれる海岸沿いの道などを“流す”といかにもかっこよい。たとえば「フェラーリ・ポルトフィーノM」などとてもよく似合うだろう。

日本では2021年1月に発表された、ポルトフィーノM。車名に「改良(モディフィカータ)」を意味するアルファベットをつけているように、従来のポルトフィーノよりパワーアップしている。最高出力は620CV(456kW)。20CVも出力が向上した。

フェラーリなんておそれ多い。と、考えている自動車好きは多いだろう。じつはフェラーリはそういうひとに向かって、「気負わず乗れるモデルですよ」と呼びかけている。

ポルトフィーノMは、快適なロングツーリングもこなすGT(グランツアラー)として開発された。格納式のハードトップをそなえ、いざというとき(たとえばプロムナード・デザングレを走るとき)、それまでクローズドで長距離を走ってきたあとでも、さっとオープンにできる。そういう走りかたもまたスタイリッシュなのだ。

パワーはたっぷりあり、加速性能は、速度域にかかわらず、ぱっとアクセルペダルを踏めば、間髪いれずに鋭いダッシュを見せてくれる。ステアリングもシャープで、ドライバーと車両との一体感はまさにスポーツカーだ。

いいものをあえて、ちょっと乱暴にあつかう美学

フルオープンでも走行中の風の巻き込みは意外なほど少ない。
フルオープンでも走行中の風の巻き込みは意外なほど少ない。
ステアリングホイールにそなわった赤色のドライブセレクター「マネッティーノ」に今回「Race」モードが新設定。
ステアリングホイールにそなわった赤色のドライブセレクター「マネッティーノ」に今回「Race」モードが新設定。

いっぽう、ごく低回転域でもしっかりトルクが出るうえ、ステアリングは上記のとおり反応がいいので、市街地でも扱いやすいのだ。車体全長が4594ミリに抑えられているのも、「エブリデイフェラーリ(毎日使えるフェラーリ)」としての長所である。

いまや稀少な格納式ハードトップがきれいにしまわれる様子は一見の価値あり。
いまや稀少な格納式ハードトップがきれいにしまわれる様子は一見の価値あり。

さらに実用性の点では、2670ミリと比較的長いホイールベースを活かして、2プラス2のパッケージがあげられる。「小さな子どものいるファミリーはこれ1台で何でも使えます」(フェラーリジャパンのフェデリコ・パストレッリ代表)という。おとなでも、そう長い時間でなければ後席に乗っていられる。

もちろん、リゾートホテルがいちばん似合うと思う。でも、ポルトフィーノMでショッピングセンターというのも、なんだかいい。いぜん、自動車大好きな俳優、ジャン=ルイ・トランティニヤン(「男と女」)が、自分がもっているフランスの田舎の農家ふうの家のぼろい納屋にランボルギーニをぼんっと無造作につっこんで駐めていたというエピソードを思い出した。

いいものをあえて、ちょっと乱暴にあつかう。その美学はよいと思う。ポルトフィーノMでも同様。いいスポーツカーなのに、たいせつにしまいこんだりはしない。どんな目的にでも、どこででも使う。そうすると、ますます愛着が強まるものである。価格は2737万円。たいへん贅沢なふだん使いだ。

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フェラーリ

この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。