フォルクスワーゲンというブランドに対して、清潔や実直というイメージを抱く人は多いだろう。何より造りの丁寧さがストレートに製品に現れているからだ。それを象徴するのがゴルフであり、パサートである。そんなイメージを守り続け、堅実なミドルクラスモデルとして特にファミリーユースで重宝されてきたパサートがマイナーチェンジを受けた。
新しくなったパサートシリーズ随一の濃厚キャラ
今回の主な変更点は3つ。内外装デザインのブラッシュアップとパワートレインの刷新、そして運転支援システムの強化である。
フロントマスクはセダン、ワゴン(ヴァリアント、オールトラック)とも、水平方向のクロームラインが強調されて華やかな表情となり存在感が増した。エンジンはガソリンユニットがこれまでの1.4ℓから最新型の1.5ℓに改められるとともに(2ℓディーゼルは従来型を踏襲)、全車に7速ツインクラッチ式ギアボックスを採用。そのラインナップのなかで唯一の4WDモデルであり、SUVテイストを強めたオールトラック(¥5,529,000)をショートツーリングに連れ出した。
直線を基調とした運転席まわりは、スイッチ類をはじめ必要な機能が手に届く範囲にきっちりと整理して配置されており、使い勝手の良さは健在。そのうえ新型ではエアコンの操作スイッチがこれまでのダイヤル式からタッチコントロール式へ変更され、操作がスマートに行えるようになった。
アウトドアで使える機能とオンスタイルでも通じる折り目正しさ
また、運転支援システムが“Travel Assist”に進化したことも見逃せない。設定した速度で前車を自動で追従走行できるアダプティブクルーズコントロールは、カメラやセンサー類が最新型に置き換えられ、ステアリングホイールには手を添えているだけでシステムを継続的に作動させる静電容量式センサーが備わったこともあって、車間や車線の保持、加減速のマナーが洗練された。
この統合制御システムの作動範囲は210km/hまで引き上げられ、どんな速度域でもリラックスして運転していられるようになったのは大きな進化だ。オールトラックに積まれる2ℓ直4ディーゼルターボは、走行中に無粋なガラガラ音や振動は伝えてこず、同じクラスのラグジュアリーモデルに匹敵するマナーの良さを身に着けている。
そんな高性能を声高に主張せず、乗員すべてが心地よく過ごせるようそっとサポートする奥ゆかしさがあるのがパサートの醍醐味。特にオールトラックはヴァリアントよりも25mm高められたグラウンドクリアランスと緻密な制御の4WDによる高い安心感で、たとえば雪深い道でもバックカントリーに分け入っていける頼もしさもある。つまりクルマとともに楽しむ趣味のフィールドを広げ、それでいてフォーマルなシーンでも存在感を放つ、オールラウンドで活躍してくれるパートナーがパサート・オールトラックといえる。
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- 桐畑恒治 自動車ライター