雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動を連載でご紹介しています。

今回は建築家で「Tecma Redグループ」創立者・出版部門ディレクターのイネス・レアルさんの活動を紹介します。

イネス・レアルさん
建築家、「Tecma Redグループ」創立者・出版部門ディレクター
マドリードの大学で建築を学ぶ。スウェーデン人の夫と1993年から6年ほどストックホルムに暮らし、建築におけるサステナビリティに触れる。マドリードに戻り、’00年に起業。スマートシティに関する第一人者として活動。

情報を発信し、行政と人をつなぐスマートシティ化のキーパーソン

「建築家、ノーマン・フォスターは、『建築家は未来をデザインする仕事だ』と言っています。建築業界が環境に与える影響は非常に大きい。私たちは’00年、建築業界の技術者に向けて、インターネットを通じて、よりエコロジカルな建物や街づくりに必要な情報を発信し始めました。まだサステナビリティという言葉もあまり聞かない時代でしたが、このときにはもう、エネルギー効率を最適化させるスマートビルディングのことを書きました」

イネスさんと夫は、建築家としてさまざまな施工をしながら、「業界にエネルギー、サステナブル、新技術に関する知識を普及させる」ことを使命とし、次々とウェブサイトを開設。’14年にはスマートシティ(*)に関する情報を、国の推進方策に先駆けてスタートさせた。翌年、スペイン初のスマートシティ会議が開催されたときから、主催に携わっている。

スマートシティとは…AIやICTなどの先進的技術を活用して、都市や地域の機能やサービスを効率化・高度化しようとする考え方。持続可能な都市を目指す。

【SDGsの現場から】

建築に関わる注目度の高い国際会議を主催

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民間と行政の間をつなぎ、マドリード、ひいてはスペインの近代化を促進させるイネスさん。

マドリードのスマートシティ化促進のために尽力

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市の自転車専用道路は130キロを超えた。市民の通勤意識の変化も実感している。


「今ではさまざまな業界から問い合わせがあります。サステナビリティやスマートシティのことなら私に、という感じで(笑)」

新しいビルをほとんど建てず、旧市街などは景観保全のための規制も厳しいマドリードだが、自転車通路が拡張されたり、小型電気バスが走り始めたりと、確実にスマートシティ化は進んでいる。

「いちばん大変なのは、人々のメンタリティの変革。これは、政府や行政がリードしていかなければなりません。スペインでは最近、炭鉱の採掘が禁止になりました。それで仕事を失う人はいますが、サポートをしながら、次世代へ向かっていかなければ。自分と周りの人を幸せにするための環境を考え、未来のために、現在を変えてゆく。できる、と信じています」

PHOTO :
Javier Peñas
WRITING :
Yuki Kobayashi、剣持亜弥(HATSU)
EDIT&WRITING :
大庭典子、喜多容子(Precious)