ボルボカーズが「コンセプトリチャージ」なるバッテリー駆動のピュアEVをまもなく発売と発表した。しゃれたおとなのプレミアムモデルというおもむきだ。

2021年6月30日にオンラインで開催された「Volvo Cars Tech Moment」で公開。あたらしい時代のプレミアムSUVという印象の好ましいコンセプトである。ルーフの前後長が長く、ビデオを観るかぎり、室内はリビングルームのように居心地がよさそうである。

EV時代の新しい顔を持つ

従来のラジエターグリルが廃されたフロントフェイスが斬新。
従来のラジエターグリルが廃されたフロントフェイスが斬新。
ボルボのデザインを統括する英国人、ロビン・ペイジ氏。
ボルボのデザインを統括する英国人、ロビン・ペイジ氏。

紹介したのは、ボルボカーズのヘッドオブデザイン、ロビン・ペイジ氏。「レス・バット・ベター」、よりシンプルにすることでよりよくする、という考えをベースにしたとする。その考えは、すっきりとしていながら、力強さを感じる外観からもよくわかる。

「レス」とはたとえば内燃機関をなくすことも含まれる。それによってフロント部分は、インバーター用のラジエターをおさめ、法規制をクリアする衝撃吸収の要件を満たせばいいだけとなる。室内は従来のように、排気管や、(全輪駆動なら)プロペラシャフトを通すためのトンネルもなくなり、スペース効率がうんと向上すると、ペイジ氏。

新しいパワートレインで走ることを強調するために、従来のラジエターグリルはあえて廃され、アイアンマークと呼ばれるボルボのエンブレムがLEDで灯されるだけというデザインとなりそうだ。

「新しい世代のトールハマーのデザインも考えました」。ペイジ氏のディレクションの下、デザインチームはヘッドランプの意匠も大胆に変更。基本デザインは従来のものを受け継ぎつつ、技術によってあたらしさを創出した。

ヘッドランプを点灯すると、隠れていたメインビームのユニットが、デイタイムラニングライトの背後から現れる。イメージはかなり新しいものの、周囲の車両は、あたらしいボルボとすぐに認識してくれそうだ。

XC90に代わるラグジュアリーSUV

ウインドシールドの上についているのがLiDARのセンサー。
ウインドシールドの上についているのがLiDARのセンサー。
プレミアムクラスのSUVなのでサイズの余裕はありそう。
プレミアムクラスのSUVなのでサイズの余裕はありそう。

インテリアは、シンプル。実際にこのクルマが発売されるときに物理的なスイッチがどれだけ設けられるかは現時点では不明だ。現時点ではスイッチが見当たらない。眼をひくのは15インチと巨大なモニタースクリーンがダッシュボード中央にそなわること。

これまでのボルボの「センサス」用モニタースクリーンと同様。テスラなみに大きな液晶コントロールパネルで、たいていの操作を行うことになるだろうか。あるいはひょっとしたら、実用化される際は、ボイスコントロールやジェスチャーコントロールの採用もありうる。

あたらしい技術でいえば、LiDAR(ライダー)が注目だ。レーザー光と衛星ナビゲーションを組み合わせ、先の路面の凹凸を細かく認識する技術だ。メリットは多い。ナビゲーションの精度があがること、路上の物体の検知が正確に行われること、さらに、電子制御サスペンションのダンピングコントロールもより緻密になること、とすらすらとあげられる。

後部座席はスライドレールに沿って斜めの移動が可能。
後部座席はスライドレールに沿って斜めの移動が可能。
SUVというよりステーションワゴンとのクロスオーバー的な外観。
SUVというよりステーションワゴンとのクロスオーバー的な外観。

ボルボは2030年にはラインナップの完全電動をめざすことを宣言している。今回のコンセプトリチャージは、同社にとって初のピュアEVとして設計されたモデルとして、その嚆矢とみてよいだろう。

現行のXC90の後継ともいわれる、コンセプトリチャージ。「車名がどうなるか。従来ボルボではSUVにはXCの名を冠してきましたが、今回は新世代のモデルということもあり、新しいコンセプトになるかもしれません」。

オンラインのプレゼンテーションにペイジ氏とともに姿を現したホーカン・サミュエルソンCEOはそう語っていた。発売は2022年と、サミュエルソンCEO。さきに日本でもお披露目されたピュアEV「C40」など、ボルボの勢いが増してきたようだ。

 

この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。