自動車界のトレンドはなにか。先刻ご承知のとおり、電動化だ。フランスのルノーも熱心なメーカーのひとつだ。日本市場では、同じフランスならプジョーとシトロエンにやや遅れをとっている感があるものの、さにあらず。2021年6月30日に「eWays(イーウェイズ)」と名づけたオンラインで今後の大胆な取り組みを発表した。

大衆的なEVを作る技術を蓄積してきた

公開された次期メガーヌはEV用プラットフォームを使用。
公開された次期メガーヌはEV用プラットフォームを使用。
オンラインで説明するディメオCEO。
オンラインで説明するディメオCEO。

おもしろかったのは、ルノーは自社の近い将来のピュアEVの計画をして「エレクトロポップ」と名づけていたこと。モニター内に登場したルカ・ディメオCEOじしん「ちょうどかつて(80年代?)の英国のバンドブームのときのような言葉だけれど、ルノーもヒットを連発する自信があるので、こういうタイトルにしました」という意の発言をしていた。

ルノーのエレクトロポップ、つまり同社のピュアEVラインナップは、あたらしく開発した専用プラットフォームを持つモデルで構成される。ひとつは、次世代の「メガーヌ」、もうひとつは新世代の「5(サンク)」だ。

新世代メガーヌと5は、22年中の発売が予定されている。さらに、25年までに、10にのぼる電動車(うちルノーブランドは7モデル)が送り出されるという。電動化するスポーツカーのアルピーヌも予定されている。

「電動車は高い、という時代は過去のもの。ルノーは(2019年にモデルチェンジした)航続距離400キロを誇るゾエのように、買いやすいEVを作る技術を過去10年で蓄積してきました。5はポップ(ポピュラー=大衆的人気)なモデルにする自信があります」

開発の総指揮をするジル・ルボルニュ氏は、今回のプレゼンテーションでそう説明している。

「ルノーは、25年の時点で、ピュアEVとハイブリッドの構成比をラインナップの65パーセントまで引き上げ、さらに30年にはバッテリー駆動のモデルで90パーセント。欧州でもっともグリーン(環境適合性が高い)ブランドになることをめざします」(ディメオCEO)

カングーもEV化への階段を上りはじめた

22年に発表されるピュアEV「5」。
22年に発表されるピュアEV「5」。
開発の総指揮をするジル・ルボルニュ氏。
開発の総指揮をするジル・ルボルニュ氏。

車両の販売だけでなく、生産からリサイクルまでの環境適合性を引き上げることも、ルノーの大きな目標だという。そのために、工場での再生エネルギーの使用をはじめ、パートナー企業と組んでリサイクル率の高いバッテリー、そしてその先には、高効率のソリッドステートバッテリー開発まで視野に入れているとする。もちろん、バッテリーのリサイクルプログラムなども喫緊の課題だ。

バッテリーの自社生産は、昨今の自動車メーカーのトレンドといえる。背景には、半導体の供給不足などとともに、サプライヤーに任せていると、自動車の生産計画に大幅な狂いが生じることへの懸念があるのだ。

いっぽう、このところ、世界各地のルノー系の生産工場で、コスト削減プログラムなどに反発する従業員のストライキが頻発。ディメオCEOは、これからのEVシフトをベースにした生産体制はフランスを中心に行われ、国内の雇用を守る、と今回の記者発表会で説明。海外の状況は、今後明らかになっていくだろう。

新型「5」(右)は72年発表のR5のイメージを踏襲。
新型「5」(右)は72年発表のR5のイメージを踏襲。

日本への導入計画は未定とルノージャポンではしている。ただし、日本のベストセラーである商業車ベースの「カングー」もまもなく、EV化が容易な新開発のプラットフォームを使った新型へとモデルチェンジすることがうわさされていたり、時代のトレンドは、おおきなうねりでルノーの製品を変えていっている。

日本車やドイツ車ほど日本の路上で眼にする機会こそ多くないものの、乗れば自動車好きの心に刺さる内容をしっかり持っているのがルノー車だ。今後におおいに期待したい。 

この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。