イタリアワイン・ソムリエセミナーは、3回にわたって開催された。ワインの産地を北部、中部、南部とイタリアを3つに区分けし、1回ずつ、それぞれの地域の特性を正確に伝える試みである。南北に長い国のイタリアは、北と南ではテロワールや固有品種が異なるため、土地に根差した個性的なワインが造られる。ひとくちにイタリアワインといっても、地域によって、はっきりと香りや味わいが違うのだ。

歴史豊かなワインの産地、イタリアワインの魅力を多角的に学ぶ

ワインジャーナリスト・宮嶋勲氏による、詳細なイタリアワインの説明。エピソードを交えながら、北部・中部・南部のワインの特徴を教授する。
ワインジャーナリスト・宮嶋 勲氏による、詳細なイタリアワインの説明。エピソードを交えながら、北部・中部・南部のワインの特徴を教授する。

イタリアワインの確かな知識を得られたのが、ワインジャーナリスト・宮嶋 勲氏の解説による第1部。宮嶋氏は、イタリア星勲章授与、グランディ・クリュ・ディタリア最優秀外国人ジャーナリスト賞受賞、キャンティ・クラッシコ名誉大使に任命されるなど、日本におけるイタリアワインのまさに第一人者である。

イタリアの特殊な地形の説明をはじめ、いかにワインの生産に向いた国であるかを紐解く。「アルプスが屏風のように囲む」「背骨のようなアペニン山脈」「イオニア海とアドリア海に挟まれた立地」といった表現は、国土の特性を映像化するようで、非常にわかりやすい。さらに、多様な固有品種の持ち味を、まるでワインを傾けているかのように詳細に、想像豊かに話す。

3回にわたる北部・中部・南部イタリアのワインの説明を通して、地域の個性や歴史的背景を詳らかにする語り口は、ぐいぐいと引き込まれる魅力があり、この後に続く第2部、ワインテイスティングの知識的な準備を整える。筆者は、宮嶋氏の講義で、まったく知らなかったイタリアワインの新しい情報が得られたことや、疑問だったいくつかの事柄が氷解し、非常に満足した。

現地イタリアの各ワイナリーのオーナーが、自慢のブドウ栽培や醸造過程などを熱く語る。ドローンを使った映像表現は、クオリティの高い短編映画のようだ。自社のワインに合う前菜の見せ方も、実に美味しそう。
現地イタリアの各ワイナリーのオーナーが、自慢のブドウ栽培や醸造過程などを熱く語る。ドローンを使った映像表現は、クオリティの高い短編映画のようだ。自社のワインに合う前菜の見せ方も、実に美味しそう。

第2部は、テイスティングに用いるワイン生産者のヴィデオを流す。ブドウ畑から醸造過程、瓶詰めの最終段階まで、ドローンなどを使った映像表現は、短編映画を彷彿とさせる豊かなストーリー。各ワイナリーのオーナーのインタビューも交え、いま彼らがワイン造りで注力しているポイントも明らかにする。この後に続く本題の、ワインテイスティングが待ち遠しくなる、よくできた構成だ。

ワインテイスティングでは、ワインの個性をデータでも解説。品種、土壌、醸造方法など、各ワインの魅力を科学的に学べる。ワインとの最高の組み合わせとなる料理も紹介する。
ワインテイスティングでは、ワインの個性をデータでも解説。品種、土壌、醸造方法など、各ワインの魅力を科学的に学べる。ワインとの最高の組み合わせとなる料理も紹介する。

そして、第3部がテイスティングである。イタリアワインに精通したソムリエが担当する。このセミナーのメインテーマであり、セミナー参加者の自宅に届いたワインの特徴を1本1本読み取る。ソムリエの方たちは、イタリアワインテイスティングの王者を決める、JETCUPの歴代の優勝者のため、色、香り、味わい、テロワールなど、各銘柄のワインを立体的にとらえるのだ。宮嶋氏の講義が下地になって、個性的な味わいがテイスティングできた。

【テイスティングした北部イタリアのワイン】

左/「ボルゴーニョ社『バローロ』2016年」。大樽熟成の伝統的なバローロ。パーカーポイント90点を獲得した最優良ヴィンテージだ。右/「カステッロ・ディ・ネイヴェ社『バルバレスコ』2018年」。ネイヴェ村のテロワールを最大限に表現する、伝統的な味わい。
左/「カステッロ・ディ・ネイヴェ社『バルバレスコ』2018年」。ネイヴェ村のテロワールを最大限に表現する、伝統的な味わい。右/「ボルゴーニョ社『バローロ』2016年」。大樽熟成の伝統的なバローロ。パーカーポイント90点を獲得した最優良ヴィンテージだ。

【テイスティングした中部イタリアのワイン】

左/「バディア・ア・コルティブオーノ社『キャンティ・クラッシコ』2018年」。有機栽培で造られたワイン。イタリアの優良ワインガイド『ガンベロロッソ』で、最高ランクのトレ・ビッキエーリを獲得したヴィンテージである。右/「ラ・ジェルラ社『ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ』2015年」。2015年のヴィンテージは、当たり年。パーカーポイント95点、ワイン専門誌『ワイン・スペクテーター』で、94点の高評価だ。
左/「バディア・ア・コルティブオーノ社『キャンティ・クラッシコ』2018年」。有機栽培で造られたワイン。イタリアの優良ワインガイド『ガンベロロッソ』で、最高ランクのトレ・ビッキエーリを獲得したヴィンテージである。右/「ラ・ジェルラ社『ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ』2015年」。2015年のヴィンテージは、当たり年。パーカーポイント95点、ワイン専門誌『ワイン・スペクテーター』で、94点の高評価だ。

【テイスティングした南部イタリアのワイン】

左/「プラネタ社『エトナ・ビアンコ』2019年」。ヨーロッパ最大の活火山、シチリア島エトナ北部の優良産地で造られるワインである。右/「シッドゥーラ社『マイア』2019年」。同ワイナリーのシンボル的なワイン。適度な酸味の爽やかな口当たりが印象的だ。

コロナが収束し、自由にイタリアンレストランに行けるようになる明日の準備として、万全過ぎるほどの知識の習得。彼らソムリエたちの店に訪れたくなるほど、的確かつ詩情豊かなワインの読み解きだった。

イタリアワインの魅力を最大限に学べるうえ、手元に届いたワインをテイスティングできるところに価値のある、イタリアワイン・ソムリエセミナー。「学びと実践」がひとつになり、リアルでの体験を超えるほどの納得感があった。それはなぜか。テイスティングで言えば、短い時間ではあったが、産地のテロワールを思い浮かべながら、自分のペースで進められるのが案外よかったのだ。

1回およそ1時間45分の充実したオンライン・セミナーは、また来年も参加したい。イタリアワインの裏側までも熟知できる感覚である。

【テイスティングを担当したソムリエの方たち】

第1回/永瀬喜洋氏(株式会社クアトロヴィーニ)
第2回/田上清一郎氏(天草 天空の船)
レストラン / 【公式】天草 天空の船
※同店にて、テイスティングしたワインのうち4種類を用意。

第3回/塚元晃氏(THE SORAKUEN)
THE SORAKUEN | 公式 | 神戸を代表する日本庭園 相楽園に佇む迎賓館
※同店にて、テイスティングした全6種類のワインを用意。

問い合わせ先

  • 日欧商事ホームページ
  • イタリアワイン・ソムリエセミナーは、一般の参加が可能。今年の参加費は¥30,000(税込)。セミナーの応募や6本のワインの詳細は以下メールアドレスまで。
    日欧商事株式会社:info@jetlc.co.jp

今年の秋から、イタリアワイン・ソムリエセミナーのテーマに沿った、ワイン・メーカーズ・ディナーやセミナーを開催する予定。これも注目!

この記事の執筆者
ヴィットリオ矢部のニックネームを持つ本誌エグゼクティブファッションエディター矢部克已。ファション、グルメ、アートなどすべてに精通する当代きってのイタリア快楽主義者。イタリア在住の経験を生かし、現地の工房やテーラー取材をはじめ、大学でイタリアファッションの講師を勤めるなど活躍は多岐にわたる。 “ヴィスコンティ”のペンを愛用。Twitterでは毎年開催されるピッティ・ウォモのレポートを配信。合わせてチェックされたし!
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