盆栽とは、とても手のかかる生き物だ。枝1本、葉1枚まで神経を配る必要があり、わずか1cmの違いが美観を左右する。毎日朝と夕方、欠かさず水をやらなければならず、種類によって、適切な水の分量も違う。美しい盆栽を育てるために、太陽の動きに合わせて鉢を回転させて、日のあたり方を調整したりと、ひと鉢のなかに巨木が再現された凝縮美が盆栽の醍醐味であるが、それは手間ひまの結晶ともいえるひとつの作品でもある。

盆栽の静かな成長が心に力を与えてくれる

盆栽を育てるのは大変そうかもしれないが、手をかければかけるほど、盆栽のゆっくりとした、しかし確実な成長に気づくことができる。一見まったく変わらないように見えて、昨日にはなかった小さな葉が生まれているのを発見すると、たまらなく愛おしい気分になるのが盆栽だ。ものいわぬ盆栽が、確かに生きていることを実感できるのが、わずかな変化だろう。

成長中のエゾマツ

10年ほど前に山採りされたエゾマツ。今年初めて針金かけを行い、これから育てていくところだそう。「今は葉の層が薄いが、5 年ほど経つと綺麗に育ちそう」とジョーンズ氏。
10年ほど前に山採りされたエゾマツ。今年初めて針金かけを行い、これから育てていくところだそう。「今は葉の層が薄いが、5 年ほど経つと綺麗に育ちそう」とジョーンズ氏。

盆栽の世話に没入していると、自分の心が澄み渡っていくのを感じることができる。とてもスローではあるものの、穏やかな生命力に満ちあふれた盆栽と触れ合うことで、とかくせわしない現代生活から束の間解放され、心が充実していくのを実感できるはずだ。

盆栽入門には 「小品」 もおすすめ

「小品」と呼ばれる小さな盆栽は、初めてのひと鉢としてもおすすめ。松や紅葉など親しみのあるものから、果実を観賞する「実みもの物」と呼ばれるものまで種類も豊富だ。
「小品」と呼ばれる小さな盆栽は、初めてのひと鉢としてもおすすめ。松や紅葉など親しみのあるものから、果実を観賞する「実みもの物」と呼ばれるものまで種類も豊富だ。

奥の深い盆栽の世界であるが、気軽に始めてみるのもいい。最初のうちは、間違えて枯らしてしまうかもしれないが、同じ失敗をしないよう注意して、もう一度育てればいいのだ。静かな盆栽たちの可憐さに気づけば、日々の世話もまったく苦痛ではなくなることだろう。

Tree House Bonsai

2018年にジョーンズ氏が開いた、日本初の外国人オーナーによる盆栽園。約4,000坪の敷地を有し、200鉢ほどの盆栽を育てている。外国人観光客向けに盆栽講座も実施。将来は敷地内に旅館を建てて、和文化を世界に紹介する総合施設にするのが夢だそう。
2018年にジョーンズ氏が開いた、日本初の外国人オーナーによる盆栽園。約4,000坪の敷地を有し、200鉢ほどの盆栽を育てている。外国人観光客向けに盆栽講座も実施。将来は敷地内に旅館を建てて、和文化を世界に紹介する総合施設にするのが夢だそう。

問い合わせ先

  • Tree House Bonsai TEL:029-811-6486
  • 住所/茨城県稲敷郡阿見町若栗1228
    ※新型コロナウイルスの影響により一部情報が変更となる可能性があります。最新情報は公式HPなどでご確認ください。
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MEN'S Precious編集部 
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MEN'S Precious2020年秋号より
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アダム・ジョーンズ(盆栽師)
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