たくさん荷物を積んで走るにしても、SUVではなくステーションワゴンがいいという人はいるはず。国産車の選択肢は少ないが、高速走行を前提とする欧州車なら、魅力的なワゴンが見つかる。上品な佇まいと外部充電式のハイブリッド車である「V90 リチャージ プラグインハイブリッドT8 AWD インスクリプション」なら、自然豊かな地を目指す旅と抜群の相性を示す。

最適解は“プラグインハイブリッド”

存在感がありながらイカつくないデザインは、景色の中においてもよくなじむ。
存在感がありながらイカつくないデザインは、景色の中においてもよくなじむ。
フラッグシップらしく伸びやかで優雅なフォルムが特徴のV90。このT8のほかに3タイプのマイルドハイブリッド搭載車が用意される。
フラッグシップらしく伸びやかで優雅なフォルムが特徴のV90。このT8のほかに3タイプのマイルドハイブリッド搭載車が用意される。

サステナブルな未来を築くために自動車メーカーができること。そのひとつが車両の電動化だ。豊かな水と緑に囲まれる北欧で生まれ育ったボルボは、地球環境を守るという命題を肌感覚で理解し、二酸化炭素排出の削減に有効な車両の電動化に積極的な姿勢を見せている。ブランドの代名詞である安全性の高さはそのままに、同じレベルのバリューとして環境性能の向上に力を注ぎ、2030年にはEVのみを生産するメーカーになることを公言している。

もっとも、現時点では模索をしながら歩みを進めている状況というが、ひとつの方策として注目すべきはプラグインハイブリッド車の拡充だ。ボルボはグローバルで7モデルを展開しており、そのうちの6車種にプラグインハイブリッドを用意する。

そもそもプラグインハイブリッドはどういうものかといえば、既存の内燃機関(ガソリンやディーゼルエンジン)に、バッテリーと駆動力を発揮する電動モーターを組み合わせたもの。

プラグインは文字どおり家庭用電源などにコンセントを挿して充電が可能なことを表し、従来のハイブリッド車よりも容量の大きなバッテリーを搭載することで、モーター駆動での走行距離を伸ばしている。純粋な電動モーター車、つまりEVが抱える航続距離の不安や充電インフラ(設備)が十分に整っているとはいえない現状における最適解として、主軸となっているパワートレインである。前置きが長くなったが、今回はそんなボルボ製プラグインハイブリッドのフラッグシップモデルである「V90 リチャージ プラグインハイブリッドT8 AWD インスクリプション」でショートトリップに出かけた。目的地は軽井沢である。

ラグジュアリーリゾートのような上質移動空間

清潔かつ上質なインテリア。縦型のセンターディスプレイに空調やオーディオ類の機能が集約され、タッチパネル操作が可能。
清潔かつ上質なインテリア。縦型のセンターディスプレイに空調やオーディオ類の機能が集約され、タッチパネル操作が可能。
ホールド性や掛け心地が抜群のフロントシート。後部からの衝撃を吸収するリクライニング機構が備わる。
ホールド性や掛け心地が抜群のフロントシート。後部からの衝撃を吸収するリクライニング機構が備わる。

全長5m近いのびのびとした優雅なワゴンボディは、大人5名とその人数分の荷物を余裕で積み込める大空間を確保。荷室はゴルフのキャディバッグ4名分が軽く収まるといえばその広さが想像しやすいだろうか。つまり大人のバカンス用のパートナーとしては最適の存在である。

そんな使い勝手の良さを持ち合わせながら、決して実用車然とした機能主義に陥っていないのがV90の特徴だ。ナチュラルな素材がもたらす質感と雰囲気を大事にした試乗車の室内は、ダブルステッチで丁寧に縫い合わされた柔らかな風合いのパーフォレイテッド・ファインナッパレザーで覆われ、アルミニウムパネルやチャコールの木目パネルのアクセントが清廉さと温かみを演出。

原音再生に忠実なBowers&Wilkins製プレミアムサウンド・オーディオシステムが豊かな音場を提供してくれる。
原音再生に忠実なBowers&Wilkins製プレミアムサウンド・オーディオシステムが豊かな音場を提供してくれる。

室内にしてすでに高級リゾートに来たような満足感に包まれる。ボルボの骨子は安全と記したが、それを肌で実感するのがシートの作りのよさだ。頸椎保護のためにしっかりと設えられたヘッドレスト一体型シートの剛性の高さはもちろん、乗員が身を委ねた際の面圧が綺麗に分散され、つまりしっかりと体を包み込みながら適切な着座姿勢を保ってくれるため、長距離を走っても疲れを感じることが少ない。非常にいいシートである。

パワートレインは2ℓ直4ガソリンエンジンにターボチャージャーとスーパーチャージャーを組み合わせ、そのうえで交流同期式の電気モーターを組み合わせて4輪を駆動する構成。そのマナーはとにかく丁寧でスムーズだ。パワーと燃費を高効率で両立しているプラグインハイブリッドは必要に応じて(積極的に)モーターを駆動させているから、走行中のノイズはほとんど無いに等しい。

掛け心地の良いシートと静謐な室内環境に身を委ね、B&W製スピーカーから流れるクリアかつ臨場感溢れる心地よい音楽に耳を傾けていたら、あっという間に軽井沢に到着してしまった。東京から軽井沢までの高速走行では途中ちょっとした渋滞に遭いながらもオンボード燃費は13.6km/リッターを達成。ほぼ2トンという重量級のモデルということを考えれば上々の値である。環境性能に優れた上質な移動空間として、V90は高いパフォーマンスを備える一台ということを早くも見せつけられた。※後編(9月8日配信)に続く

後退時に危険を察知した場合には警告音で知らせ被害軽減ブレーキを作動させるなど、後方への備えも万全。目的地の「THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田」については後編にて。
後退時に危険を察知した場合には警告音で知らせ被害軽減ブレーキを作動させるなど、後方への備えも万全。目的地の「THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田」については後編にて。

【VOLVO V90 RECHARGE PLUG-IN HYBRID T8 AWD INSCRIPTION】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,945×1,890×1,475mm
車両重量:1,980kg
駆動方式:4WD
トランスミッション:8速AT
エンジン:1,968cc 直列4気筒ターボ+スーパーチャージャー+電気モーター
最高出力:233kW(318PS)/6,000rpm
最大トルク:400Nm/2,200〜5,400rpm
モーター最高出力:前34kW/2,500rpm 後65kW/7,000rpm
モーター最大トルク:前160Nm/0〜2,500rpm 後240Nm/0〜3,000rpm
価格:¥10,140,000

問い合わせ先

ボルボ

TEL:0120-55-8500

この記事の執筆者
自動車専門誌『CAR GRAPHIC』で編集記者として取材・執筆から進行管理のデスク業務を担当したのち、ライター・エディターとして独立。専門知識を軸に読み手の知的好奇心を刺激する記事の執筆を心がける。
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