ドイツ人は朝食をナイフ一本で食べると言っても過言ではありません。ロベルト・ヘアダーは、刃物の名産地ドイツのゾーリゲンのメーカーです。
仕事で仲よくなったドイツ人の家族の家では、何泊もして、朝食を囲みました。
ドイツ料理にいい噂は聞かないけれど、朝食は王様の食卓と呼ばれるほど豪華。何種類ものパン、チーズ、ハム、ソーセージ、ジャムが並びます。
朝食で気づいたのは、彼らの朝食は刃先の丸いナイフ一本で何でも済ませてしまうこと。朝食のパンはブロートヒェンと呼ばれる小さな丸パンがお決まりですが、ザクザクと横に切り込みを入れて、そこにバターやチーズ、そしてレバーブルスト、ブラッドブルストなど、やわらかなペーストを削り取って挟みます。
チーズやペーストをすべて一本のナイフで、どんどん自分のお皿に取り寄せていく。盛り合わせられたハムは、ナイフの刃先で引っ掛けて上手に剥がす。その手つきに、箸の国とは違う食文化を感じたものでした。薄くしなる刃なので、パンに何かを塗るのに適するようにできています。
今は一般的なカトラリーナイフで済ませてしまうようですが、かつては寒かった冬の朝食、硬くなったレバーブルストやバター、ラードのような脂肪の塊を、ナイフでえぐるように食べたのだそうです。道具の国・ドイツでは朝食専用のナイフが生まれたのです。
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- TEXT :
- 本間美紀さん キッチン&インテリアジャーナリスト
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