仕事の打ち合わせで会った英国人に「なぜカフリンクスをしないのか?」と問われた。逆に、なぜするのか問い返すと、「ユーモアだ」と答えた。カフリンクスはドレスアップした紳士が集うビジネスやパーティなどの社交場で、唯一遊び心を盛り込めるアイテムだという。それが会話の契機になり、新たな出会いにつながる。上手く使わないのは機会損失というわけだ。特に、カフリンクスに忍ばせたユーモアのセンスで人となりが見られるそうだ。興味を持ったが、いきなり俳句の読み合わせ会に放り込まれたようで、敷居が高そうな印象を感じた。
紳士の装いに残された最後の聖域!
ある日、たまたま観ていたイタリア映画『甘い生活』(1960年)に芸能記者役で出演していた、マルチェロ・マストロヤンニが身につけていたカフリンクスに目が止まった。まるで人を食ったような、ポップでキッチュなデザインである。スキャンダル記事のネタを探して夜の街を奔走する記者は気どる必要がない。自分が面白いと感じたカフリンクスを気軽に選び、笑い飛ばせばよいのだ。マルチェロの軽妙洒脱な振る舞いと、カフリンクスの選び方が格好よく、衝撃を受けた。
それ以来、カフリンクス選びが楽しくなった。カフリンクスが並んでいるコーナーを見つけると、面白いデザインがないかとワクワクして、必ず立ち寄る。縁日の夜店に群がる子供のようで、いたずら盛りだった頃の悪企みを思い出す。そんな気分で、そで口にユーモアを仕掛けている。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2018年秋号
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- WRITING :
- 織田城司