古い英国車ファンならよくご存知のMGが、まもなく、こんなカタチで登場する。なんてお伝えしたら、きっとビックリするだろう。これ、2021年9月に発表された「R RYZR」。着る自動車として、提案されている。
まるで電気仕掛けのリカンベント
MGは、日本でもMGBやMGミジェットといった2人乗りのオープンライトウェイトスポーツカーで人気を博したブランド。現在は、上海汽車集団(SAIC MOTOR)のバックアップを受けて、SUVを含めてミドルクラスの乗用車の生産を行っている。
「R」は、MGのなかでピュアEVのために設立されたブランド。ボルボでいえばポールスターに相当するといえばいいだろうか。そして今回の「RYZR」は、SAIC MOTORがロンドンに設けたアドバンスデザインスタジオによるコンセプトモデルだ。
注目点は、馬車の時代から続く箱型にこだわることなんてないんじゃないの、という発想の大転換。電気モーターをリアに搭載してのセミオープンのボディは、自転車の「リカンベントrecumbent」を思わせる。
2輪感覚で体を傾けて乗りこなす
じっさい、「RYZR」は、自動車と自転車の中間的な乗りものとして考えられたとか。「将来のアーバントラベルのために、利便性が高く、敏捷で、実用的で、そしてエキサイティングな存在になるでしょう」。デザインディレクターのカール・ゴッサム氏は述べている。
3輪バイクのようにハンドルバーで操舵するのでなく、自転車のようにからだを傾けて(リーンさせて)曲がる。そこも自転車的な要素だ。
かつて2005年にメルセデス・ベンツも、リーンさせて操舵する自転車のようなコンセプト「F300ライフジェット」を発表したこともあるように、人間の感覚に沿って操縦できるという点で、自転車はひとつの究極の姿と、自動車メーカーじしんが認識しているのかもしれない。
パンデミックに見舞われた世界で、公共交通機関でなく、また、CO2排出量の多い従来の自動車でなく、高価な高性能EVでもない、あたらしいかたちのパーソナルな移動手段を求めているひとに訴求したい。それが作り手の考えという。
- TEXT :
- 小川フミオ ライフスタイルジャーナリスト