馥郁たる香り、なんて、乗用車の本革内装について書かれたりする。英国だとロールスロイス、ベントレー、アストンマーティンなど高級ブランドのレザー内装を手がけた「コノリーレザーリミテッドConnolly Leather Limited」は日本でもよく知られてきた。
ところが、ボルボが2021年秋に、まもなく発表予定のピュア電動車「C40 Recharge」から、内装をレザーフリー(本革を使用しない)にすると発表。レンジローバーやアウディやマクラーレンなども、そのトレンドに従う動きを見せている。
畜産による二重のネガティブな効果
「レザーを使用しないインテリアへの移行は、森林破壊をはじめとする畜産による環境への悪影響への懸念からも進められています。人間活動による世界の温室効果ガス排出量の約14パーセントを家畜が占めていると言われており、その大部分は畜産によるものです」
ボルボは、9月に出したプレスリリースで、レザーフリーへと移行する理由について触れている。畜産というのは、牛のゲップのなかに含まれるメタンガスと関係している。
なんでも、メタンガスの温室効果は二酸化炭素の25倍と言われている(環境省のデータ)。加えて牧場のために森林を切り拓くことで、二重のネガティブな効果がもたらせている、とは環境保護に意識的なひとたちが指摘すること。
「ボルボ・カーズは、プラスチック、ゴム、潤滑剤、接着剤などの材料の一部として、あるいは材料の製造や処理におけるプロセスケミカルとして、一般的に使用されている家畜生産からの副産物の使用を減らすことにも取り組んでいます」
ボルボ・カーズのグローバル・サステイナビリティー・ディレクターであるスチュアート・テンプラー氏はそう述べている。さらにもうひとつ、動物福祉の観点からも、レザーフリーは注目を浴びている。
「動物製品を含むこれらの素材の需要を減らすことに貢献し、動物被害をなくすためにできることを行うという、倫理的な立場を強くとっています」
そもそも乗員のシートはファブリックが主流だった
テスラはいち早くモデル3でレザーフリー化を実現したし、アウディは21年に中国・上海で開催された「デザイン・シャンハイ」で、レザーを使わなくてもラグジュリーは実現できると言うファッションデザイナーのステラ・マカートニーと組んで、本革を追放した内装のピュアEVスポーツ「e-tron GTクワトロ」を出品して話題を呼んだ。
思い返すと、英国でも60年代までは、高級車の内装はファブリックだった。理由はいろいろ。ソフトなので座り心地がいいのと、張り替えなど手がかかる(富裕層でないと維持できない)など、本革とことなる魅力を持っているからだ。
近いうちに、自動車の内装でファブリックが復権するかもしれない。流行は「まずファッション、つぎに家具、そして自動車の順」とはジャガー・ランドローバーのヘッドオブデザインを務めるジェリー・マクガバン氏がかつて教えてくれたこと。波は押し寄せてくるだろうか。
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- 小川フミオ ライフスタイルジャーナリスト