雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は、「Blueprint for Free Speech」UK&アイルランド プロジェクトディレクター、ナオミ・コルビンさんの活動をご紹介します。

ナオミ・コルビンさん
「Blueprint for Free Speech」UK&アイルランド プロジェクトディレクター
ロンドン大学でロシア語とヨーロッパ政治経済を学ぶ。出版業界での、ヨーロッパにおける版権を扱う仕事を経て、’10年のチェルシー・マニング事件をきっかけに、メディアや政治家へ働きかける活動家に。その後、現職に。

真実を明かした内部告発者を保護。知るべきことを知りうる社会へ

「表現の自由を守る」(※)ことを目的に、国際的な活動を行っているNGO団体「ブループリント・フォー・フリー・スピーチ」。ナオミさんはここで、組織内部の犯罪や汚職を暴露する「内部告発者」を保護するための体制づくりに取り組んでいる。きっかけは、’10年に、アメリカ陸軍兵士であったチェルシー・マニングが約73万件もの機密文書を内部告発サイトに漏洩した事件だった。

「非常に有益な内部告発だと感じたと共に、後の、トランスジェンダーとしての彼女の過酷な刑務所生活や待遇を知って許せないと思いました。彼女の母親がイギリス出身だったため、彼女をイギリスに帰化させて、この国の法律で裁くことで、その人権を守れれば、と、活動を始めたのです」

団体では毎年、困難な状況で倫理に従い真実を明らかにし、社会に前向きな変化をもたらしたことを称えた「内部告発者賞」を選定。脅迫や暴力、失業の危機にさらされ、多くのものを失う可能性がある内部告発者を守ると同時に、内部告発という行為の社会的貢献を、国民に広く知らせている。

【SDGsの現場から】

●国内で行われる内部告発に関わる裁判の動向も注視

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告発サイト「ウィキリークス」共同創設者のジュリアン・アサンジの公判にも記者を派遣。

●国際的な会議やワークショップにも積極的に参加

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アテネで開催された欧州議会の内部告発者改革推進ワークショップに専門家として参加。

「表現の自由に関しては、時代の変化と共に、新たな事象が出現しています。昨今ではインターネット上の発信者へのセキュリティ問題、コロナ禍での医療現場での内情告発、国際的な事件での各国の法制度の違いなどが増加しつつあり、こうした将来的な問題に備えることも仕事の一部です」

当たり前の生活が守られ、よりよい世の中になっていくこと。彼女の想いは、シンプルで、熱い。

「社会が知らなければならないことを、つねにクリアにできる体制をつくる。意義ある仕事に関われることに、喜びを感じています」

※表現の自由とは…1948年にパリ国連総会で採択された「世界人権宣言」第19条に、「すべての人は、意見及び表現の自由に対する権利を有する」とある。

PHOTO :
Sayaka Hirakawa
WRITING :
剣持亜弥(HATSU)
EDIT&WRITING :
大庭典子、喜多容子(Precious)