MEN'S Preciousファッションディレクターの山下英介が、バッグを新調した。素材は山葡萄のつる! とあるイベントで見かけ、「自分も!」とオーダーしたのは、迫力の横幅60㎝! 素材の持つ雰囲気、そしてサイズ感も考慮したという独創的バッグの佇まいをご覧あれ!

メンズプレシャスの校了も終わり、一段落していた初冬のある日、私のもとに届いた巨大な荷物。

宛先には「匠の箱」と。

こんなもの注文したっけな???と思いつつビリビリと包みを開けてみると・・・。こ、これかあ〜! 

そう、この春注文していた、山葡萄のつるを使ったかごバッグが届いたのでした! あと請求書も。オエー!

機内持ち込みサイズのリモワがすっぽり入ってしまうという、無謀な大きさ!

サイズは縦42㎝、マチは16㎝、横幅はなんとトランク級の60㎝! 正直いって日常を過ごす上では無駄な大きさです。満員電車には乗れません。ちなみに女性の場合ストッキングが伝線しまくりらしいです。当たり前ですが既製品ではありません。おそらくこんな不便なかごバッグを所有しているのは、僕と「テーラー羊屋」オーナーの西口太志さんだけでしょう。なんつったって、こいつは西口さんが所有しているそれをマネしたのですから・・・! 

昨冬とあるイベントで、このかごバッグを所有していた西口さんを見つけた瞬間、そのあまりの迫力に一目惚れ。メンズプレシャス夏号のバッグ特集で取材させていただくと同時に、これをつくっている作家さんをメモ。そのバッグが秋葉原にある「匠の箱」で取り扱っているということを調べて、僕もマネっこオーダーしてしまったのです!

このとんでもないかごバッグをつくってくれたのは「みちのく蔓工芸所」。山形県の米沢市、豪雪地帯にある小さな工房です。かごバッグというと、そこらへんに生えている植物から枝をタダでちょちょいと採取して、編み上げりゃいいと思っている人も多いと思いますが、それは大きな間違い。このバッグの素材である山葡萄のつるは、人里離れた山奥で他の木々に巻きついて自生している植物。その採取には落石、転落、遭難、そして時には熊に襲われる危険もあるらしく、冗談抜きで命がけの作業とのことです。梅雨の時期にしか取れないこの蔓をナタで切り落とし、乾燥させなめし、木型に合わせて丁寧に編んでいく・・・。こんな重労働、誰もやりたくないですよね? 製品が高価なのも後継者難なのも、最近じゃ安価な中国製が出回っているのも納得です。

使えば使うほど、レザーに負けないツヤが生まれてくるらしい。楽しみ!
内部には帆布製のインナーバッグが仕込まれており、非常に便利。こちらも葡萄の蔓の汁で染められています。
底部はイントレチャートのように緻密に編まれています。

そんな希少な葡萄の蔓を60㎝というビッグサイズに編み上げたこちらは、レアであることは言うまでもありませんが、単に珍しいからつくったわけじゃありません。一種異様な迫力というか・・・モードな雰囲気すら漂わせる点こそが最大の魅力なのです。

フィレンツェのテーラー、「ロリス・ベストルッチ」でオーダーした、ツイードのカントリージャケットとコーディネート。国境を超えたカントリースタイル!

こういったカントリー系のアイテムと相性がよいのは言うまでもありませんが、これが普通のサイズだったとしたら、どうでしょう。今にも蕎麦を打ちそうな、風流オヤジ的バイブスを醸してしまうでしょうね!? このサイズ感だからこそ、モードな迫力が生まれてくる。そしてポール・ハーデンなどのアルティザナルモード系ワードローブの存在感にも負けないのです!

以前くるみの木の皮を使ったかごバッグを持って、パリやフィレンツェを歩いたときは、現地のマダムたちにモテモテでした。こんなの持ってたらどうなるかな?と想像してしまいますが、エコノミークラスじゃ無理だろうな〜。

この記事の執筆者
MEN'S Preciousファッションディレクター。幼少期からの洋服好き、雑誌好きが高じてファッション編集者の道へ。男性ファッション誌編集部員、フリーエディターを経て、現在は『MEN'S Precious』にてファッションディレクターを務める。趣味は買い物と昭和な喫茶店めぐり。