男たちを輝かせる超一流ブランドの“夢”と“現実”

アートとしての革新性と衣服としてのリアリティを創造する一流ブランド。我々はランウェイ越しに見る夢の世界と、そこから地続きとなるクローゼットに並ぶ現実を同時に享受する。

エルメス|新生活に寄り添う越境的クリエイション

共生地の揃いという条件だけをなぞり、微妙な匙加減でボーダーを越えてくるスーツ。伝統素材のフランネルは深いカーキ色でカジュアルな趣も湛える。左身頃にのみ採用したラムスキン製のパッチポケットも遊び心たっぷりだ。イージーウエストのパンツは、極めて快適なはき心地を約束。インナーのニットポロには目を引くクミンカラーで、華やかな印象を添えている。フォーマルの中にカジュアルでスポーティなテイストを引用し、今季のメゾンの手法を体現したといえるだろう。ジャケット¥568,700・ポロシャツ¥172,700・パンツ¥207,900(エルメスジャポン)
共生地の揃いという条件だけをなぞり、微妙な匙加減でボーダーを越えてくるスーツ。伝統素材のフランネルは深いカーキ色でカジュアルな趣も湛える。左身頃にのみ採用したラムスキン製のパッチポケットも遊び心たっぷりだ。イージーウエストのパンツは、極めて快適なはき心地を約束。インナーのニットポロには目を引くクミンカラーで、華やかな印象を添えている。フォーマルの中にカジュアルでスポーティなテイストを引用し、今季のメゾンの手法を体現したといえるだろう。ジャケット¥568,700・ポロシャツ¥172,700・パンツ¥207,900(エルメスジャポン)
現実的に仕事着でそこまで崩せない人にも、汎用性の高い一着を用意。フォーマルなシルエットをもつ2Bスーツである。濃紺のグレンチェック柄で、ウール×カシミア製。そこにブラッシングをかけることで細かく起毛させ、さらに温かな表情を加えている。これとて、必要とあらば、エスプリが効いたシルクタイやカレなどで首元を飾るもよし。あるいは、最新コレクションに見られるようなビビッドな色のシャツやニットを差してもいいだろう。スーツ¥612,700(エルメスジャポン)
現実的に仕事着でそこまで崩せない人にも、汎用性の高い一着を用意。フォーマルなシルエットをもつ2Bスーツである。濃紺のグレンチェック柄で、ウール×カシミア製。そこにブラッシングをかけることで細かく起毛させ、さらに温かな表情を加えている。これとて、必要とあらば、エスプリが効いたシルクタイやカレなどで首元を飾るもよし。あるいは、最新コレクションに見られるようなビビッドな色のシャツやニットを差してもいいだろう。スーツ¥612,700(エルメスジャポン)

世界的な災禍のなか、我々のライフスタイルが変更を余儀なくされた。いよいよ、食住だけでなく、衣に対するマインドセットの変化も顕著になりそうな予感である。

今季の「エルメス」が、まさにその象徴といえるだろう。内や外、フォーマルやインフォーマルといった境界をあえて曖昧にし、大胆な色彩を用いる手法で、新たな価値観で服装の表現を行っているように映る。コレクションで披露したのが、リラックス感やエレガンスを漂わせるディテールのミクスチャー、あるいは、個性を強調する大胆で鮮烈な色使いだ。さりとて、奇抜というわけではなく、フランネルなどのベーシックな素材選びや快適性を生むイージー仕様など、極めて実用的でもある。

リモートワークや二拠点生活といったニューライフを生き抜く「個」に向けて、より自由で、多様な生き方を肯定する。「エルメス」の服こそ、そうした気分に寄り添い、際立たせる、そんな存在なのだ。


プラダ|再生素材こそクールという新しい時代の旗頭

装いの主役は「プラダ リナイロン」のハリやコシを生かし、たっぷり感が際立つようなビッグシルエットのステンカラーコート。ランウェイではトップボタンまで留めて袖を肘より上まで捲り上げていたのが印象的だったが、やや短めの袖丈なのでそのまま羽織っても、インナーのモヘアのタートルネックニットがさりげなく覗いてアクセントになる。ゆったりしたワイドパンツも柔かなフランネル製ゆえ、全体のエアリーなシルエットが、より一体感を増し強調されるのだ。コート¥442,200[予価]・ニット・中に着たイエローのニット・パンツ/参考商品・靴¥149,600[予価](プラダ クライアントサービス)
装いの主役は「プラダ リナイロン」のハリやコシを生かし、たっぷり感が際立つようなビッグシルエットのステンカラーコート。ランウェイではトップボタンまで留めて袖を肘より上まで捲り上げていたのが印象的だったが、やや短めの袖丈なのでそのまま羽織っても、インナーのモヘアのタートルネックニットがさりげなく覗いてアクセントになる。ゆったりしたワイドパンツも柔かなフランネル製ゆえ、全体のエアリーなシルエットが、より一体感を増し強調されるのだ。コート¥442,200[予価]・ニット・中に着たイエローのニット・パンツ/参考商品・靴¥149,600[予価](プラダ クライアントサービス)
1枚で2役こなしてくれるアイテムは、俯瞰して考えればそれだけでも省エネルギーに貢献しているといえる。そのコンセプトにも合致する「プラダ リナイロン」素材ならばなおのことだ。ナイロンジャケットにジップを備えたフーディをフェイクレイヤードした本作は、これを着脱することで2通りの着こなしパターンに。「装着」状態ならばスポーティな雰囲気が強調され、ジャケット単体使用ならば当然フォーマルな印象が香り立つ。いずれも休日には頼もしすぎる存在だ。¥408,100[予価](プラダ クライアントサービス)
1枚で2役こなしてくれるアイテムは、俯瞰して考えればそれだけでも省エネルギーに貢献しているといえる。そのコンセプトにも合致する「プラダ リナイロン」素材ならばなおのことだ。ナイロンジャケットにジップを備えたフーディをフェイクレイヤードした本作は、これを着脱することで2通りの着こなしパターンに。「装着」状態ならばスポーティな雰囲気が強調され、ジャケット単体使用ならば当然フォーマルな印象が香り立つ。いずれも休日には頼もしすぎる存在だ。¥408,100[予価](プラダ クライアントサービス)

アイコニックな素材であるナイロンに大鉈を振るった「プラダ」。2021年末には、そのすべてを再生素材にするという宣言は話題を呼んだ。とりわけ、産業界においてファッション界が遅れをとっていると指摘されるSDGs対策として一歩前に出た格好だ。

「プラダ」のもの作りを見れば、その信念や覚悟が伝わってくる。「プラダ リナイロン」と呼ばれるエコニールを用いた素材は、原料調達まで掘り下げると、その意義深さを知ることができるのだ。

埋め立てに使用される廃棄カーペットや、海や河川に残される魚網、工場から排出される繊維クズ。自然分解されることのないナイロンを、ペレット状に再生して繊維として改めて紡ぎ出しているのだ。

新たな資源の濫用を抑え、廃棄物がもたらす汚染を減らし、持続可能にする。この思いきった舵取りが、後続する者にも勇気を与えてくれる。そうしたリーダーのひとつに、「プラダ」ならなりえるはずだ。


ジョルジオ アルマーニ|カシミアを当たり前に、倣いたい帝王の姿

目に留まるのは、リズミカルなトーンワーク。グレーとベージュ、そして、グレージュの淡いトーン、大人がこなしたい3 原色といえば言いすぎかもしれないが、それらが絶妙なバランスの上に成り立っている。美しいドレープを描く、ダブルフェイスの一枚仕立てのコートにはカシミアウールを採用。カシミアのしなやかさとウールのハリが共存する。幾何学柄のニットにもカシミアを中心にアルパカなどの上質素材を使用。色合いの優しさのみならず、着心地の優しさにも貢献してくれている。コート¥737,000・ニット¥253,000・パンツ¥162,800・マフラー¥132,000(ジョルジオ アルマーニ ジャパン〈ジョルジオ アルマーニ〉)
目に留まるのは、リズミカルなトーンワーク。グレーとベージュ、そして、グレージュの淡いトーン、大人がこなしたい3 原色といえば言いすぎかもしれないが、それらが絶妙なバランスの上に成り立っている。美しいドレープを描く、ダブルフェイスの一枚仕立てのコートにはカシミアウールを採用。カシミアのしなやかさとウールのハリが共存する。幾何学柄のニットにもカシミアを中心にアルパカなどの上質素材を使用。色合いの優しさのみならず、着心地の優しさにも貢献してくれている。コート¥737,000・ニット¥253,000・パンツ¥162,800・マフラー¥132,000(ジョルジオ アルマーニ ジャパン〈ジョルジオ アルマーニ〉)
カジュアル好きには見慣れたトラッカーズジャケット。これも実はカシミア製。日本限定のカシミアコレクションからの一着だ。両胸のポケットや左右前身頃の切り替えなど、アイコニックな意匠を取り入れつつ、ラグジュアリーに仕上げている。デイリーなカジュアル服を揃える本コレクションは、まるでジョルジオ・アルマーニ氏のクローゼットを覗き見しているかのような錯覚に陥るほど。統一感あるラインナップは、ファンのみならず大人必見と断言できる。ブルゾン¥572,000・マフラー¥105,600(ジョルジオ アルマーニ ジャパン〈ジョルジオ アルマーニ〉)
カジュアル好きには見慣れたトラッカーズジャケット。これも実はカシミア製。日本限定のカシミアコレクションからの一着だ。両胸のポケットや左右前身頃の切り替えなど、アイコニックな意匠を取り入れつつ、ラグジュアリーに仕上げている。デイリーなカジュアル服を揃える本コレクションは、まるでジョルジオ・アルマーニ氏のクローゼットを覗き見しているかのような錯覚に陥るほど。統一感あるラインナップは、ファンのみならず大人必見と断言できる。ブルゾン¥572,000・マフラー¥105,600(ジョルジオ アルマーニ ジャパン〈ジョルジオ アルマーニ〉)

あまりにも有名すぎる話だが、改めて。帝王、ジョルジオ・アルマーニ氏が最も愛する素材のひとつがカシミアだ。今でこそ、玉石混淆だが、やはり至高のブランドにおいて使用されるのは世界でも最高品質のカシミアヤーンにほかならない。だからこそ、帝王が認めたそのクオリティを享受せずにはいられないのだ。

極細繊維がもたらす優雅な着心地は特別なもの、まさに夢見心地だ。当然コレクションにもラインナップされている。加えて今季は、日本限定のカシミアコレクションが登場。ブルゾン以外にも、ニットやフーディ、イージーパンツなど、多彩な品揃えとなっている点もうれしい。実際、そのラグジュアリー感とリラックス感を両得したアイテム群はデイリーに使いたいものばかり。これには、ひとえに感謝したい。

彼がTシャツとして愛用しているように、極上素材をさらりと当たり前に着る。それこそ、モダン・ジェントルマンの手本たる姿だろう。


ボッテガ・ヴェネタ|旧来の発想を刷新する独自のスタンス

今季のプレコレクション「ワードローブ02」では、生活に寄り添ったリアルクローズが集結。モヘア混のVネックニットのアーガイル柄は編んだ上からプリントを施しており、定番柄もひと筋縄では落とし込まない、自由なクリエイションに目を見張る。こうしたシーズナルのインパクトアイテムのほか、ヘリンボーン地のスラックスやインしたタートルネックニットなどのベースアイテムも揃えることで、ワードローブを構築し、装う喜びを再定義していると見る。ニット¥275,000・中に着たタートルネック¥110,000・パンツ¥121,000・ブーツ¥152,900(ボッテガ・ヴェネタジャパン)
今季のプレコレクション「ワードローブ02」では、生活に寄り添ったリアルクローズが集結。モヘア混のVネックニットのアーガイル柄は編んだ上からプリントを施しており、定番柄もひと筋縄では落とし込まない、自由なクリエイションに目を見張る。こうしたシーズナルのインパクトアイテムのほか、ヘリンボーン地のスラックスやインしたタートルネックニットなどのベースアイテムも揃えることで、ワードローブを構築し、装う喜びを再定義していると見る。ニット¥275,000・中に着たタートルネック¥110,000・パンツ¥121,000・ブーツ¥152,900(ボッテガ・ヴェネタジャパン)
自らのワードローブに欠かせないエッセンシャルなアイテムも充実させているのが「ボッテガ・ヴェネタ」だ。シーズンをまたいでも展開されるウール100%の無地ニットもまた、そうしたローテーションに入る逸品である。フォンダンと銘打ち、ベーシックながらも独自の色彩表現によって、新鮮味を加えている。当然ながら、ここに紹介した「ワードローブ02」だけでなく、来る「サロン02」など、コレクションを飛び越えて、デイリーユースで着こなせるアイテムが揃っている。¥104,500(ボッテガ・ヴェネタ ジャパン)
自らのワードローブに欠かせないエッセンシャルなアイテムも充実させているのが「ボッテガ・ヴェネタ」だ。シーズンをまたいでも展開されるウール100%の無地ニットもまた、そうしたローテーションに入る逸品である。フォンダンと銘打ち、ベーシックながらも独自の色彩表現によって、新鮮味を加えている。当然ながら、ここに紹介した「ワードローブ02」だけでなく、来る「サロン02」など、コレクションを飛び越えて、デイリーユースで着こなせるアイテムが揃っている。¥104,500(ボッテガ・ヴェネタ ジャパン)

ファッションを字義どおり捉えるなら、流行そのもの。シーズンが変われば、廃れるものも生まれてくる。

この循環構造に懐疑的な視線を投げているととれるのが、若きクリエイティブ・ディレクター、ダニエル・リー率いる「ボッテガ・ヴェネタ」だ。その新たな試みは、昨年から始めた独自カレンダーによる発表だけにあらず。メインコレクションを「サロン」、プレコレクションを「ワードローブ」と位置づけ、衣服の本質を追求して展開。ときには、旧シーズンに使用したモチーフさえ引用し、安易に過去を切り捨てない。

これは、思考停止せず、新しい形を模索した賜物と見る。ユーザーにとっては、去年の服に新作を混ぜるなど日常茶飯事。ブランドが一例を示せば、旧作を恥ずことなく着回せて、満足度も高まることだろう。

今季の「ワードローブ02」では、ジェンダーの縛りを越えたラインナップに。衣服の本質と向き合いながら、未来を見据える姿勢を感じる。

次ページ 秋冬リアルクローズの実例集
この記事の執筆者
TEXT :
MEN'S Precious編集部 
BY :
MEN'S Precious2021年秋冬号
名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
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PHOTO :
金谷章平
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菊池陽之介
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MODEL :
Daisuke
WRITING :
髙村将司
EDIT :
安部 毅(MEN'S Precious)