雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は、文具メーカー「TOPTEAM」経営、エミリー・シャンさんの活動をご紹介します。

エミリー・シャンさん
文具メーカー「TOPTEAM」経営
浙江省温州市出身。温州市内の大学で国際貿易を学び、貿易会社での仕事を経て’03年に文具の貿易会社「TOPTEAM」を設立。’11年より自社ブランドを確立。世界80か国にユーザーをもち、「ウォルマート」などとも取引する。

健康だけでなく環境にも意識を!中国でエコな文房具を発信

欧米向けのオリジナル文房具を製造・販売していたエミリーさんの会社が、中国国内でにわかに注目を集めたのが’16年のこと。

ある自治体の調査で、小学生が使うプラスチック素材のブックカバーの4割に、環境ホルモン(※)など健康被害を及ぼす物質が含まれていることがわかったためだ。そこで、欧米の厳しい安全基準を満たすエミリーさんのブランドの製品が話題になったのである。

「エコな文房具、と聞けば、日本では『ゴミにならない』『焼却しても有害物質を出さない』といった、環境への影響に焦点が当たることが多いと思いますが、中国ではまだ『健康的かどうか』が問題になる段階。

もちろん、子供の健康のために私たちの商品を選んでくださるのはうれしいことですが、環境にも配慮してものを選ぶ、という貢献の気持ちは、中国ではまだまだ発展途上だと感じます」

中国の小学生は、学校で夕方まで授業があり、帰宅後も2~3時間は机に向かう。実習系の授業はなく、とにかく机上学習をするので、教科書はボロボロ。そのため、ブックカバーは必需品なのだ。

エミリーさんの会社の製品は、素材の安全性はもちろん、本来なら剥がしたあとに捨ててしまう剥離紙側も塗り絵になっていて、表紙との間に挟み込めば、自分だけの教科書としてカスタマイズもできる。

「ようやく、学校関係者、教育関係者のなかにも、『文房具はただ使うものではなく、子供の心を育てるもの』という考えが芽生えてきたように思います。勉強や仕事の効率を上げるという文房具の使命は追求しつつ、さらに私たちは、消費者の心に何かを与える文房具をつくっていきたい。まだまだ頑張らなくては!」

【SDGsの現場から】

●すべての商品を自社工場で製造している

環境に負担のない素材を使用。「コロナ禍以降、原材料の高騰が続いているのが悩み」
環境に負担のない素材を使用。「コロナ禍以降、原材料の高騰が続いているのが悩み」

●好きなサイズに切って使えるエコブックカバー

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大気や土壌に負担のない素材でつくられている、主力アイテム。剥離紙は塗り絵仕様に。

※環境ホルモンとは…内分泌撹乱物質の通称。環境中に排出され、生物の健康に影響を与える化学物質を指す。ダイオキシンやPCBなどが該当する。

PHOTO :
長舟真人
WRITING :
剣持亜弥(HATSU)
EDIT :
大庭典子、喜多容子(Precious)
取材 :
萩原晶子