雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は、国連ハビタット福岡本部本部長補佐官 星野幸代さんの活動をご紹介します。

星野 幸代さん
国連ハビタット 福岡本部 本部長補佐官
(ほしの さちよ)阪神淡路大震災を経験したことをきっかけに勤めていた外資系投資銀行を退社。神戸大学大学院で都市政策を専門に学ぶ。2004年から国連ハビタット福岡本部に勤務する。イラク担当専門官を経て現職。

世界が注目する「福岡方式」で発展途上国のゴミ問題を解決

星野さんは、SDGsの目標の11「住み続けられるまちづくりを」を担当する国連ハビタットの職員として、途上国のゴミ問題に取り組んでいる。世界的に評価の高いゴミの埋め立て技術「福岡方式」(※)で、大きな成果を上げてきた。

’17年、エチオピアの首都アディスアベバのゴミ山の一部が崩落し、推定200人が死亡。4週間後、星野さんは専門家と現地へ。

「ゴミ山の広さは42ヘクタール、高さ50メートル。40年以上にわたって、未分別のあらゆるゴミが堆積していました。私たちはまず、ゴミ山の崩落した部分を中心にゴミの層を開削し、棚田のような安定勾配をつくりました。そして、福岡方式の基本となる、ゴミ山にガスを抜く管を設置し大気に放出するとともに空気を送り込むことで、有機物の分解を促してゴミを効率的に減らし、浸出水の排出と調整を図ったのです。1年間の事業期間中、私は通算3か月を現場のゴミ山で過ごしました」

ゴミ山で暮らす人は2000人ほど。そこで生まれ、育ち、死んでいく人も多い。子供たちの多くは学校に行けず、読み書きができないために、仕事はゴミ拾いをするしかないという悪循環もある。

「作業員は現地の人を雇用。アクシデントも多いですが、特性を見極めて仕事をお願いしていきました。課題も答えも現場にある。そのことを学んだ日々でした」

その後も世界中からオファーがある。ケニア、ミャンマーで対応し、次はソマリアに行くという。

「ゴミの現場は、都市の裏側の凝縮です。地球温暖化から貧困まで、ゴミはあらゆることにつながっているんです。ゴミをきちんと管理できる、安全で清潔な都市づくりを目指す。それが私の使命です」

【SDGsの現場から】

●エチオピアの現場で出会った10代の女の子たちと交流

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「学校に行きたいけど、家族のためにごみ拾いの仕事をしなければ」という話を聞く。

●福岡の企業がもつ技術を海外に移転。水問題にも生かす

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雨水を地下にため、微生物の力で水質を上げて活用。ケニア等難民キャンプに設置。

※福岡方式(通称)​とは…準好気性埋立方式の廃棄物埋め立て技術。機械で空気を入れるのではなく、微生物の発酵熱を利用して埋立地内に空気の対流を起こす。

PHOTO :
石川浩太郎
WRITING :
剣持亜弥(HATSU)
EDIT :
大庭典子、喜多容子(Precious)
取材 :
佐々木恵美