アストンマーティンの日本法人がうわさの新型車「ヴァルハラ」を日本で公開した。2021年11月1日、プレスを招いてお披露目されたヴァルハラは、V8プラグインハイブリッドシステムを後車軸より前に搭載。アストンマーティンにとってV12プラグインハイブリッドの「ヴァルキリー」に次ぐ2台めのミドシップモデルだ。
007最新作にもちらりと登場!
「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」で予想以上にかつてのアストンマーティンDB5が活躍したため、アストンマーティンはちょっとレトロスペクティブな方向へ行くのか、と思っているファンがいるかもしれない。
じっさいは、古いことをやっているようで、しっかり前に進むのが英国。クルマの世界における好例は、F1の開発だ。設計者やファクトリーの数は伝統的に英国が多い。レースで勝利を得るための先進技術の数かずは、1950年代から続く英国のファクトリーから生み出されることが少なくない。
2021年からF1に参戦しているアストンマーティンも同様だ。V8あるいはV12をフロントに搭載した後輪駆動のスポーツカーを得意としてきたいっぽう、ここにきて、新世代のミドシップスポーツを次々に送り出すようになった。
さきの「ノー・タイム・トゥ・ダイ」でもちらりと姿を見せたヴァルハラ。4リッターV8ツインターボエンジンを使ったプラグインハイブリッドで、エンジンとモーターの合計出力は950馬力と発表されている。後輪はエンジンとモーターで駆動、前輪はモーターのみで駆動するフルタイム4WDとなる。
排ガス規制が強まる欧州では、今後、内燃機関では走れない街区が増えてくると予想されている。そのため、ヴァルハラも24キロは完全なEV走行ができるようになっているのだ。
完全限定生産で2023年後半にデリバリー開始
AMGのCEOだったトビアス・ムアーズ氏を新CEOに迎えたアストンマーティンでは、当初のスタイリングを大きく変更。東京・青山のショールームでベールをとられたヴァルハラは、従来のDBシリーズなどと近いフロントノーズを持つ、アストンマーティンのいわゆるDNAを色濃く反映したデザインとなった。
全体のデザインは凝りに凝っている。車体のまわりの空気を取り込んだり、抜いたり、車体に貼り付けたり、あるいは剥がしたりと、最適な空力効果を得るための付加物は、そのままレースカーとして通用しそうだ。
「すべてのディテールには機能的な意味があります」と、発表会当日、ビデオで出演したチーフクリエイティブオフィサーのマレク・ライヒマン氏。実車を見る機会があれば、ぜひ周囲を何度も回って、凝ったディテールを堪能してもらいたい。
デリバリーが始まるのは23年後半という。これからはいたずらに台数を増やすのではなく、稀少性を持つモデルも大事にしていきたいというのが、アストンマーティン・ラゴンダ社の考えのようだ。
そのためヴァルハラも完全限定生産。いま世界各地のディーラーでプリオーダーをとっているところだといい、それによって生産台数が変わってくる可能性がある。ただし、999台を超えることはないそうだ。それでいて、総生産台数1万台超えが、当面の目標。DBXのようなSUVが、販売台数押し上げの役割を担うことになるだろう。
ヴァルハラの価格は、1億200万円。日本の市場では稀少なアストンマーティンの人気が高いため、「(この価格でもヴァルハラの)生産台数の10パーセントにあたる受注があるのでは」と日本法人では話している。
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- 小川フミオ ライフスタイルジャーナリスト