時間や労力をかけずに日常生活に取り入れられる「メンズ美容」を、現役ドクター・西嶌暁生氏が指南する連載がスタート。月に一度、そのシーズンに合う“旬”な情報を発信する。連載第1回は、男性機能と深く関わりがあり、若々しくきれいな肌をつくるうえで不可欠なミネラル「亜鉛」について。
11月から冬にかけて旬となるのが、「海のミルク」と言われるほど栄養豊かでおいしい真牡蠣だ。牡蠣には亜鉛が豊富に含まれていると聞いたことはあるだろう。今回は、男性美容と亜鉛についてお伝えしよう。
セックス・ミネラルと呼ばれる亜鉛
「亜鉛をたっぷり取ると、精能力がアップする」…、一度くらいこんな話を耳にしたことがあるのではないだろうか? これは少々誇張された俗説ではあるが、まったくの嘘ではない。
亜鉛は筋肉、骨、肝臓などの他に、男性の前立腺にも多く分布している。さらに、前立腺で分泌される前立腺液が精液の一部になり、精子の運動機能を助ける役割を果たすのだ。それゆえ、亜鉛は「セックス・ミネラル」と呼ばれることがあるのだが、亜鉛は多くの男性で不足しているのが実情だ。
実はその亜鉛こそが、強くきれいな肌をつくる源になるのだ。
医療の現場で再確認した亜鉛と皮膚の関係
私が亜鉛と皮膚の関係を強く意識するきっかけになったのは、実際の臨床の現場である。これまで形成外科医として、多くの患者さんの床ずれ(褥瘡)を治療してきた。床ずれの主な原因のひとつは栄養不足であり、その中でも、「亜鉛不足」の患者は他の患者に比べ、傷の治りが圧倒的に非常に遅いのだ。そして、傷の治りが遅い患者に、栄養剤による亜鉛の補充療法を行うと、それまでよりもスムーズに傷が治っていったのだ。
つまり、傷をスムーズかつ綺麗に治す亜鉛は、強くきれいな肌をつくるうえでも必要だと考えている。
なぜなら、「キズを治す力=皮膚の再生力=美肌の成分」であるからだ。
亜鉛は新しい細胞つくりの立役者
亜鉛は、DNAやタンパク質の合成に働き、細胞の新生を促す。
新しい細胞をつくるには、遺伝子の情報を写す、タンパク質を合成するなど、化学反応がスムーズに進まなければならないのだが、この反応を進めるための酵素には亜鉛が必要不可欠なのだ。
亜鉛が不足すると、細胞分裂がはかどらず、成長障害、爪や皮膚の異常、脱毛、免疫力の低下、味覚障害などを引き起こす。
とくに、成人では、皮膚、爪、髪の毛、腸粘膜など「新陳代謝が活発な器官」ほど、亜鉛不足の影響を受けやすい。ちなみに冒頭で出てきた精子づくりも同様だ。
男性が亜鉛不足に陥りやすい4つの理由
■1:アルコールの摂取
アルコールの代謝に亜鉛が利用されるため、アルコール摂取の機会が多い男性は亜鉛不足に陥りやすい。また、アルコールは尿中への亜鉛の排泄を促すはたらきも。私自身もアルコールが好きなのだが、以前に血液検査による栄養解析(オーソモレキュラー)を受けた際、亜鉛不足が顕著で、これはまずいと思って生活習慣を見直した経験がある。
■2:加工食品(コンビニ食)の摂取
加工食品に含まれるポリリン酸ナトリウム(リン酸塩)などは亜鉛の吸収を阻害する。ただでさえ、亜鉛の吸収率は約30%と低めなのに、さらに低下してしまうので気をつけたい。どんなに多忙でも加工食品に頼りすぎるのは考えものだ。
■3:糖質過多の生活
亜鉛はインスリンの材料になる。そのため、糖質の摂取により過剰にインスリンが出と、亜鉛が不足に陥りやすい。炭水化物に偏った食事を好む男性は要注意
■4:亜鉛の摂取不足
単純に、普段の食事からの摂取が足りていない場合も。令和元年国民健康栄養調査によると、男性は成長期の12歳ころからすでに亜鉛取得量が推奨量を満たしておらず、女性よりも不足している傾向がある。
食事制限をしている男性は、より摂取量が低下しがちなので気をつけたい。
亜鉛不足を解消する食事メニューとは?
成人以降の男性の場合、亜鉛の推奨摂取量から2mgほど足りていない。この2mgを日々の食生活の中で取り入れるヒントをレクチャーしていこう。
【外食メニューの場合】
No.1は言わずと知れた牡蠣料理だ。生牡蠣70g(小2個)になんと亜鉛が約9.2mgも含まれているのだ。亜鉛は、ビタミンCやクエン酸と一緒に摂ると、キレート作用により体内に吸収されやすくなるので、レモン汁をかけて食べるのは理にかなった食べ方だ。
あとはレバー料理もおすすめだ。豚レバー50gには3.5mg、牛レバー50gには1.9mgの亜鉛が含まれている。
【自宅メニューの場合】
イチ押しは空豆。調理法は焼いても蒸してもOK。空豆10粒(50g)も2.3mgの亜鉛を含有。手軽に亜鉛を補給したい場合は、カニ缶がおすすめだ。30gにも1.9mgの亜鉛が含まれている。
「セックス・ミネラル」である亜鉛が、男性のインナーケアを支える重要な栄養素であることがおわかりいただけただろうか?
これからの忘年会シーズン、亜鉛の含有量で食事やつまみメニューを選んでみるのもいいかもいれない。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
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- EDIT&WRITING :
- 新田晃代