「第二のお年頃」――それは、いわゆる更年期。女性なら誰もが迎える、心身が揺らぎやすい時期です。人生100年といわれる時代にあって、その半ばに、なんだかモヤモヤ、ザワザワしている人も多いのでは?

『Precious』12月号では、『「第二のお年頃」が私を育む、未来を開く』と題し、人生の先輩や同年代の方が「第二のお年頃」とどう向き合い、どう楽しんだか、インタビューやアンケートと共にご紹介しています。

今回はその中から、女優のいとうまい子さんへのインタビューをお届け。現在は研究者の顔も持つ彼女が、「第二のお年頃」をどう慈しみ、どう乗り越えたのか、伺いました。

女優のいとうまい子さん
いとうまい子さん
女優、研究者
(いとう まいこ)1964年生まれ。女優業のかたわら自身が所属するテレビ番組制作会社も経営。2010年から早稲田大学で学び、ロコモティブシンドロームを予防するロボットを研究する。現在は抗老化をテーマに東京大学と共同研究中。AIベンチャー企業「エクサウィザーズ」フェロー。

40代からの大学進学。頑なであることをやめたら、新しい世界が広がりました

女優、研究者のいとうまい子さん
女優、研究者のいとうまい子さん

女優で研究者のいとうまい子さんの「お年頃」の歩み方年表

44歳  結婚
45歳  早稲田大学人間科学部eスクール入学
48歳  帯状疱疹を発症
49歳  早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程に進学
51歳  同博士課程に進学
52歳 「ライトスタッフ」代表取締役社長就任
54歳 「エクサウィザーズ」フェロー就任

「恩返しを」から始まった思いもよらぬ学びの10年

大学に入学したのが45歳のとき。3年間予防医学を学び、ゼミはロボット工学。卒業後は大学院へ。現在は博士課程に在籍中で、抗老化の研究をしています。仕事は続けながら週に3〜4日、必要なら毎日、研究室に行って、培養中の細胞の様子を見ています。10年前には、まさか白衣と手袋姿で、ピペットで試薬を垂らす日々が自分に訪れるなんて、想像もしませんでした。

40代から50代の心身が揺らぎがちな時期に、私を突き動かしていたのは、入試の面接で言われた「あなたのような職業の人はすぐ辞める」という言葉。これが、「周りの人に恩返しをしたいから、土台になるものを学んでみよう」というふわっとした進学動機を、「絶対4年で卒業する」と燃え上がらせてくれました(笑)。

女優の仕事を続けながら、オンデマンドで授業を受け、そのレポートを毎週日曜の24時までに提出。期末試験だロケだ家事だといろいろ重なっても、「大丈夫」と徹夜で乗りきる。そんなことを続けていたら、とうとう3年生のとき帯状疱疹を発症してしまって。お医者さんは「高齢者の症状です」と。無理がきかなくなっているんだと思い知らされました。

MAIKO SEMBOKUYAによるイラスト
イラスト/MAIKO SEMBOKUYA(CWC)

自分の半分ほどの年齢の子たちと学ぶのは、体力的にはやっぱりつらい。しんどいときは、どうしても、『できない自分』ばかりが目につきます。でも、自分をほめてあげられるのは自分しかいない。だから私は毎朝、鏡の前で何かほめる!「歯みがきできた」でもほめる!できないことがあっても「今はそういう時期」と自分を労り、小さなことでいいから、気持ちを元気にする要素を見つける。それをくせにしていくと、心も体も楽になります。

あとは、『乗っかること』。そもそも、私が研究者になったのも、出会いやアドバイスに「いいかも」と乗っかっていった、まったく予期せぬ結果です。頑なで近視眼的だと、新しい世界はやってこないし、見えない。顔を上げて、ひょいと乗っかることができれば、つながりがどんどん増えて、違う世界が開けていく。ワクワクします。そっちのほうが絶対楽しい。だから、もし人生をやり直すなら、今度は20代で「私はアイドルじゃない!」なんて言わず、ゴリゴリのアイドルをやりますね(笑)。

年齢を重ねた世代だからこそのキャリアもプライドも大切にもったままでいい。ただ、そのもち方を変えてみるだけ。その先にはきっと、毎日が楽しくなるご褒美が待っています。

 

ILLUSTRATION :
MAIKO SEMBOKUYA(CWC)
EDIT&WRITING :
本庄真穂、剣持亜弥(HATSU)、喜多容子(Precious)