キャリアを積んで輝く女性は、さっそうと仕事をこなし、周りの人たちからも「あの人は話も上手」と評価されるもの。
でも、大きな仕事をテキパキとこなしていくことは、簡単なことではないですよね。なかでも、クライアントと共同作業でプロジェクトを進めたり、部下や後輩を動かしたりするときは、意志の疎通に手間取ってしまうことが多々あります。あげく、「言った、言わない」「そういうことだとは思わかなった」などのやり取りで、無駄な時間を重ねてしまうことも。
ビジネススキルのなかでも「話し方」が大切なことは周知のとおりです。一方で、「話し方」を習得する機会は多くはありません。そこで、メンタル心理カウンセラーで『10秒でズバッと伝わる話し方』(扶桑社)著者の桐生 稔さんに、「伝わる話し方」のコツを3つ、教えていただきました。
■1:相手が知りたいことを瞬時に察知する「ニーズファースト」
「伝わる話し方」のコツの1つ目は、「ニーズファースト」という概念にあります。
例えば、クライアントの責任者から「一昨日頼んだ企画書、どんな感じ?」と尋ねられたとしましょう。
そこで、多くのビジネスウーマンは「相手に何を伝えようか」と考えますが、できるビジネスウーマンは「相手が知りたいことは何か」をまず考えます。
「どんな感じ?」と尋ねる相手が知りたいのは、おそらく進捗と納期。なので、「未着手ですが来週の水曜日には提出いたします」と、無駄な情報を挟まずに簡潔に答えることが理想的です。
このときに気をつけたいのは、あくまでも「ニーズファースト」ということ。「結論ファースト(結論から先に述べる)」という手法がありますが、「どんな感じ?」との質問に「未着手です」と結論だけを答えても、最悪、「聞きたいのはそんなことじゃない(こっちは納期が知りたいのだ!)」と言われてしまうかもしれません。「結論ファースト」ではなく、あくまでも「ニーズファースト」ということを忘れないでください。
桐生さんは、「ニーズファースト」の根本にあるのは「相手に興味を持つとこと」といいます。
例えば、普段からクライアントが「このプロジェクトのゴールはどこ?」など、「ゴール」という言葉を繰り返し使っていたら、その人は「結果」にこだわる人だということがわかります。一方で、「このプロジェクトをどう進めるの?」と聞いてくるクライアントなら「過程」への思いが強い人でしょう。
クライアントが何に力点を置いているのか、社内なら、社長や役員たちがどこへ会社の舵取りをしようとしているのか?などに注力し、聴くということを毎日行うことで「ニーズファースト」のスキルは磨かれます。
気配りが得意な女性は多いはず。その気配り力を活用して、相手の言うことをよく聴き、できる女性を目指しましょう。
■2:無駄を省いて強いインパクトを残す「ズバリ発想法」
桐生さんは、できるビジネスウーマンは「話が短いです」といいます。しかし、どうしても、「話が長い!」や「だから何?」と言われてしまう人も、少なからずいることでしょう。
そんなときに役に立つのが「ズバリ発想法」。
例えば同僚に「あなたのチャームポイントを3つ、教えてください」と聞かれた場合、あなたは「明るい」、「笑顔」、「ほめるのが得意」と答えるかもしれません。
そこに重ねるように「あなたのチャームポイントは、ズバリ、何ですか?」と質問されたとします。すると、あなたは3つの中から1つを選んで「笑顔」と答えます。
人間は「ズバリ、何?」と質問されると、数ある答えのなかから、2番目以降の要素を瞬間的に強制カットして、一番のものを1つ選び出すことができるのです。「行ってみたい国はズバリ、どこ?」と尋ねられれば、行ってみたい国リストのなかから「ズバリ、フランスです」。「趣味は、ズバリ何?」と聞かれれば、数ある趣味のなかから「ずばり、登山です」といったように。
「ズバリ発想法」を仕事に応用するには、普段から、心のなかで「ズバリ」とつぶやきながら話をするよう意識することが効果的です。それを繰り返していけば、大切なことを短く簡潔に話すことができるようになります。
また、「ズバリ発想法」は、何かをプレゼンする際にも役に立ちます。
例えば、自己紹介を依頼された際、「私の趣味は〇〇で、家族は〇〇で、住まいは〇〇で」などと浅く広く説明するのではなく、「ズバリ、一番好きな趣味」だけの話をするとします。
「私は登山が大好きです。年に10回は登ります。…」など登山のことだけを時間いっぱいを使って話したら、「登山のことをずっとしゃべっていた人」として、相手の心に残りますよね。聞き手も山が好きだったり、登山に関するプロジェクトを温めていたりした場合、後々の人間関係にも発展しやすいはず。
また、桐生さんは、心理学で「ギャップの法則」と呼ばれる手法を用いると、絶大な効果があるとも。
「ギャップの法則」とは、例えば映画だったら、裕福な家庭に生まれた人がそのまま大成功していくよりも、貧しい家庭に生まれた人が大成功していくストーリーのほうが、ギャップがあって面白いと感じるというもの。
最近は、趣味でキックボクシングを始めたり、ジムで鍛えあげた腹筋の写真をSNSにアップしたりする女性が増えていますが、自己紹介で「私の趣味はキックボクシングです。週に2回は必ずジムに通っています」など、“女性なのにキックボクシング”とギャップを感じさせるようなことを話すと、強いインパクトが残せるそう。
ギャップを生みだすには、「普段の自分なら『やらないだろうな』ということにチャレンジするとよいと思います」とは、桐生さん。具体的には、「普段の自分なら『行かないだろうな』という会合に参加してみたり、普段の自分なら『行かないだろうな』というお店に入ってみたりするだけで、大きな違いが生まれてくると思います」とのこと。「ギャップがズバリと出てくるようになると、強烈なインパクトを残せるようになります」。
「ズバリ発想法」を身につけて、さらに自分を磨けば、どんどん輝く女性になれそうですね。
■3:無駄を生むことを防ぐ「Goalファースト」
最後は、無駄な話や議論自体をカットしてしまう「Goalファースト」という概念。
桐生さんは、無駄な会議や会話が生まれるのは、Goalが不明確なためといいます。
そこで役に立つのが、「何のためにやるのか?」と目的を一番最初に設定してしまう「Goalファースト」。会議ならば、「今日はA案かB案かを決めることをGoalとする」、最終段階の前のミーティングだったとしても、「今日は材料を出し合い、アイデアを2つに絞ることをGoalとする」と最初にGoalを設定してしまえば、目的を達成することに集中でき、無駄な話し合いを省くことができます。
Goalファーストの概念を身につけるには、桐生さんは「日頃から自分に対して、Goalがなんなのかを質問する習慣を身につけることが役に立ちます」と伝授。
「例えば、わかりやすいのは、自分に『なぜ、この会社で働いているのですか?』と質問してみること。部下や後輩に資料作成を指示したのなら、『なぜこの資料をつくってもらう必要があるのか?』と、目的を自分に質問してみる。飲み会なら、『なぜ自分はその飲み会に参加するのか?』などなど。日々、行っていることにも、例えばメールひとつにしても、必ず目的があるはずです」
そして、自分に質問を向けたら、次に、相手にも「なぜ」という質問を向けてみると、スキルはさらに磨かれます。
「例えば、キャリア女性がクライアントの経営者に『なぜ創業したのですか?』と聴いてみることは、すごくよいことだと思います。名刺をいただいたら、『何をされているのですか?』よりも、『なぜこの事業を始めたのですか?』と聴けば、経営者の方は『よくぞ聞いてくれた!』とばかりにいろいろな話をしてくれて、盛りあがると思います」
桐生さんは経営者の方と名刺交換をする機会が多いそうですが、年配で熟練した経営者ほど、性別を問わず、「なぜ創業したのですか?」と聞いてくるといいます。
「なぜ」と質問することを繰り返し、目的を明確にするGoalファーストを身につければ、「あの人の話はテキパキとしてわかりやすく、そのうえ、話をするのもとても上手」との評価を勝ち取ることができるでしょう。
以上、3つの「伝わる話し方」のコツを紹介しました。
桐生さんは「伝わる話し方は、能力ではなく、スキル」と断言します。つまり、技術を習得すれば誰にでもできるということです。それならば、始めない理由はありません。取り入れやすそうなポイントからさっそく実践して、できる女性を目指しましょう。
『10秒でズバッと伝わる話し方』桐生稔・著 扶桑社刊
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 竹内みちまろ