男のファッションでいうと、ネクタイなしでディナーの席に出席できるようになったのと似ているかも。そう思うのが、このところ人気のプレミアムSUVだ。ホテルに乗りつけたってサマになってしまう。たとえば、三菱自動車が2022年1月に発売した新型「アウトランダーPHEV」もそんな1台だ。
独自の4輪駆動方式で曲がるのが楽しい!
三菱といえば、かつてのパジェロ、それにランサーエボリューション。大きなヒットはスポーティな4輪駆動車だ。新型アウトランダーPHEVも、ヒットの系譜に連なるのに十分な魅力がある。三菱車に縁がなかったひとも、いちど乗ってみることを勧めたいほどの出来のよさ。
アウトランダーは、全長4.71メートルに、(モデルによっては)3列シートをそなえた余裕あるボディのSUV。2.4リッター4気筒ガソリンエンジンに、外部充電式のバッテリーで駆動されるモーターを前後1基ずつ搭載する、ツインモーター4WDという独自の4輪駆動方式を採用している。
特長は、数多い。最大で87キロ、バッテリーだけで走行するEVモード。日産と共同開発した新設計プラットフォームに、S-AWCと名づけられた後輪はモーターで駆動する全輪駆動技術を組み合わせた、走りのよさ。それと3列シート7人乗りモデルも用意されたこと、などがぱっと思いつく。
昨今の三菱車は、2020年12月に発表されたエクリプスクロスPHEVでも感じられたように、とにかく曲がりが楽しい。クルクルというと語弊があるけれど、ワインディングロードをこんなに楽しく駆け抜けられるクルマがあるだろうか、と(ややオオゲサだけど)思ってしまう。
アウトランダーPHEVは、SUVでありながら、やはりワインディングロードが楽しい。アウディのSQ5やRSQ3といったスポーツSUVほどの“カリカリ”さはないものの、長距離も問題ない快適性とのバランスがよい。
エクステリアデザインは、アクの強さが少し薄まり、ボディ各所にはマッシブなふくらみが与えられるいっぽう、全体としてのびやかでエレガンスをより強く感じさせるようになった。万人ウケするスタイリングだ。
インテリアは、北米などでいまトレンドの、水平基調のダッシュボードを採用。広々感が強い。同時に、操作系のフィールにこだわったと三菱自動車の開発者が言うとおり、指先からも上質感が伝わってくる。
いい例はシフトレバー。日産自動車では、ノート系に用いている、ジョイスティックタイプのものを、アウトランダーPHEVを担当した技術者は、さらにフィールを煮詰めたという。遊びをなくし、文句なしに気持ちいいと思ってもらえる操作感を追求したそうだ。
砂利道もぬかるみにも対応したドライブモード付き
気持ちよさは、ドライブフィールでも実現している。さきに、曲がりが楽しいと書いたが、市街地での走りも洗練されている。ハイブリッドなので、アクセルペダルを離すと制動がかかり、それによって駆動用バッテリーに充電を行う回生ブレーキが採用されている。
市街地ではとくに、回生ブレーキの効きの強さが任意で選べる。減速などはアクセルペダルを緩めただけでぐっと制動力が立ち上がるので、慣れるとけっこう楽チン。制動力のせいで、走りがややギクシャクすると感じられるばあいは、回生ブレーキの効きを弱めるとよい。
ドライブモードセレクターは、大型のローターを用いていて、オーバーシュート(ちょっと行きすぎてから戻るフィール)の感覚は、一時期のBMWのiDriveを思い起こさせる。
直立位置は「ノーマル」。時計まわりに回すと「ターマック」(舗装路での曲がりを楽しむとき)、「グラベル」(砂利)、「スノー」それに「マッド」(泥濘)と、状況に応じてエンジン出力や全輪駆動システムの制御がかわる。反時計まわりだと「エコ」と「パワー」(加速性がうんと上がる)が設定されている。
選ぶモードで、キャラクターは明確に変わる。「せっかくなので明確なほうがいいと思いました」と、開発者が言うとおり。私が市街地と高速道路を運転したかぎりは、パワーモードはほとんど必要ないぐらい。ノーマルで十分だ。
価格は、もっとも装備が充実し3列シートが標準の「P」が532万700円から、「G」は5人乗りが490万4900円から、7人乗りが499万6200円から、そして2列シートのみの「M」が462万1100円からとなっている。
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- TEXT :
- 小川フミオ ライフスタイルジャーナリスト