あらゆる場面でのマスク着用がすっかりノーマルになってしまったこのご時世。コロナの第6波や花粉症の季節の到来で、今後もしばらくマスク生活は続きそうだ。ウイルスや花粉から身体を守るうえで欠かせないマスクであるが、肌に与える影響はあまり知られていない。今回は、マスクが男性の肌に与える影響とその対策についてアナウンスしたい。

まず、マスクが男性の肌にどんな影響を与えるのかについてお伝えしよう。

細胞目線で考えると、マスクが男性の肌にもたらすメリットはほとんどない。むしろデメリットだらけであることを、念頭に置いておこう。マスクが肌に与える6つの悪影響は以下のとおりだ。

■1:高温多湿環境による過乾燥

高温多湿環境による過乾燥が、肌荒れを引き起こす原因に
高温多湿環境による過乾燥が、肌荒れを引き起こす原因に

マスクを着用していると、内側の温度が外気温より1℃上昇し、汗をかく。汗はマスク内では蒸発しにくいため、肌表面に長時間残り、それが刺激となり肌荒れを引き起こす原因に。

また、高い湿度に長時間さらされた皮膚は、水分を含み膨張する。その状態でマスクを外すと、皮膚周りの環境の湿度・温度が低下し、角層内に取り込まれた水分が急激に失われ「過乾燥」の状態に。入浴後、肌の乾燥が気になるのと同じメカニズムだ。

マスクをはずした後、肌にツッパリ感を感じることがないだろうか?このツッパリ感は、過乾燥による角層の物理的な収縮により認識されるのであるが、繰り返されることでバリア機能が低下し、肌荒れの原因となるので注意したい。

■2:摩擦によるバリア機能の低下

マスク着用によって知らないうちに肌バリアが低下していることも。適切な対策で乾燥や肌荒れ対策を
マスク着用によって知らないうちに肌バリアが低下していることも。適切な対策で乾燥や肌荒れ対策を

通常、肌にはバリア機能が備わっていて、肌表面は皮脂膜によって守られている。また、角質細胞内には肌の水分を維持する「NMF(Natural Moisturizing Factor:天然保湿因子)」があり、セラミドなどの細胞間脂質が角質細胞の間を埋めることで、水分を保持している。

バリア機能は体内の水分蒸散を防ぐだけでなく、微生物や化学物質などの異物が皮膚内部へ侵入するのを防ぐ大切な働きがある。

わずか0.02mmと非常に薄くデリケートな角層が、マスクの線維と擦れ合うことで角質が少しずつ削られ、バリア機能が低下する。バリア機能が低下すると、外部刺激を受けやすくなり、乾燥や肌荒れなどを起こしやすくなるので注意が必要だ。

また、繰り返し洗って使う布マスクを使用している場合は、繊維の間に残った洗剤の成分が刺激になってしまう場合もあるので、なるべく化学成分の入っていない無添加の洗剤を使用しよう。

■3:高温多湿環境によるアクネ菌の繁殖

男性の肌トラブルの代表例であるニキビ。若年層に多いトラブルであるが、マスク生活が長引くにつれて、40代男性でもニキビに悩む人が増えている。

そもそも、温度・湿度がともに高く、皮脂分泌が増えるマスク内はアクネ菌や雑菌が増殖しやすい環境だ。

さらにマスクの摩擦により防御作用がはたらいて、不要な角層が肌の表面に溜まる「角質肥厚」が起こる。毛穴の入り口に皮脂が溜まることでニキビができてしまうのだ。

また、ニキビと似たような症状として「あせも」が起こる可能性もあるので要注意。大量の発汗に伴い、汗に含まれる塩分やほこりなどで汗管がつまり、汗の正常な排出が妨げられることで起こる発疹である。

■4:摩擦によるメラノサイトの活性化

シミのもとになる色素である「メラニン」。本来は体の防御機能のひとつで紫外線からDNAを守る役割がある。そのメラニンをつくりだすのが基底膜にある「メラノサイト」と呼ばれる細胞である。外部刺激がきっかけで活性化し、メラニンを過剰につくりだしてしまう場合も。この状態が続くとシミになってしまう。

シミの原因となる外部刺激は、紫外線、大気汚染物質、有害化学物質、ストレス、タバコなど色々あるが、マスクによる肌への摩擦もメラノサイトを活性化させて、シミを発生させる原因になり得ることを覚えておいてほしい。

また、肝斑という左右対称にできやすいシミがある人は、メラノサイトが過活動状態にあるので、特に注意が必要だ。摩擦でシミが悪化し、マスクで擦れる頬骨の位置に肝斑ができやすい傾向にある。

■4:紫外線の影響

美意識の高いジェントルマンのなかには、日焼け止め愛用者も多いだろう。

しかし、マスクで擦れる部分は日焼け止めが落ちやすく、紫外線の影響を受けやすくなるので、塗り直しや擦れに強いタイプのセレクトが必須だ。

なかには、マスクを着用していれば日焼け止めは必要ないと思っている人もいるようだが、マスクは紫外線を透過する。日焼け止めを塗ることに抵抗がある人は、紫外線カット効果のある素材でできたマスクを選ぶといい。
すでに肌にトラブルが起こっている場合は、紫外線吸収剤が入っていないノンケミカルタイプの日焼け止めを選ぶとベター。

帽子やサングラスなどを併用して、物理的に紫外線から肌を守るのも有効だ。

■6:活性酸素による肌の老化

マスクによる外的刺激は酸化ストレスとなり、活性酸素の発生を促す。活性酸素はタンパク質やDNAを傷つけ、肌の老化を招く。

活性酸素が繊維芽細胞などを攻撃すると、肌の潤いやハリを保つのに必要なコラーゲンやエラスチンの生成に影響が出る。シワやたるみの原因となるので気をつけたい。

マスクとの正しい付き合い方は?

マスク着用が当たり前だからこそ、知っておきたい正しいマスクの付き合い方

とはいえ、このご時世、マスクなしの生活を送るのは難しい。マスクが肌に与える悪影響を理解したうえでマスクを装着し、肌に負担をかけない方法をお伝えしよう。

■1:定期的にマスクの中を換気する

マスクが必要のない時はなるべく外し、着用を最小限にとどめるのがいちばんだ。着用している場合は、換気がよく、まわりに人がいない場所では定期的にマスクを外して蒸れを逃すといいだろう。                  

■2: 汗をこまめに拭き取る

汗の成分が刺激になることもあるので、汗をこまめに拭きとること。拭き取る際は肌を擦らないように、そっと押さえつけるのがコツだ。

■3:摩擦を軽減する

マスクと肌が接触する部分に、あらかじめワセリンやクリームなどの保湿剤を塗っておくと、摩擦を軽減できる。保湿効果もあり一石二鳥だ。マスクの下にシリコン製などのマスクプロテクターを挟むのも一案。

■4:適切なサイズを選ぶ

マスクは小さすぎても大きすぎても肌に刺激や負担を与え、肌トラブルの原因に。自分の顔の形や大きさに合ったものをセレクトすること。

これからもしばらく続くであろうマスク生活。マスクが肌に与える影響を理解しながら、肌にかかる負担を減らす工夫をしていくことが大切だ。

西嶌暁生(にしじま あきお)さん
医学博士、形成外科専門医
筑波大学大学院卒業。2児の父。『恵比寿形成外科・美容クリニック』のメディカル・ディレクターおよびメンズ美容医療の担当医。形成外科・美容医療の専門医として、10年以上にわたり肌のダメージに向き合い、肌細胞の再生(cell repair)をキーワードにアンチエイジングに取り組む。メンズ美容においては、男性特有の悩みや肌の特徴を踏まえ、自身の細胞を最大限に活性化するため、内・外・心からのアプローチを提唱する。
この記事の執筆者
名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
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