最良のメルセデス・ベンツのセダンはSクラスだとしたら、最適なセダンはCクラス。日本で乗るのにちょうどいいサイズに加えて、ディーゼルエンジンのC220dは快適な乗り心地で、満足度が高いと思う。

一度慣れると乗り換えたくなくなる心地よさ

片側130万画素の超高機能ヘッドランプ搭載。
片側130万画素の超高機能ヘッドランプ搭載。
全長4755ミリ、全幅1820ミリ、全高1435ミリのボディを2865ミリのロングホイールベースのシャシーに載せている。
全長4755ミリ、全幅1820ミリ、全高1435ミリのボディを2865ミリのロングホイールベースのシャシーに載せている。

2021年6月に日本でも発表された新型Cクラス。特徴のひとつは、エンジンに「ISG」が装着されたことだ。インテグレーテッド・スタータージェネレーターといい、発進時などにモーターの力を使ってエンジントルクを上積みする機構。よりスムーズな走りと、燃費に貢献してくれる。

もうひとつ、新型Cクラスの特徴をあげるとしたら、デジタライゼーションのさらなる進化だ。自動運転に向かっている(と思われる)「インテリジェントドライブ」機能の数かずをはじめ、11.9インチの大型モニターを備えたインフォテイメントシステム、生体認証によるシートポジションなどの調節機能、さらにスマートデバイスによる各種操作の範囲拡大など、まさに枚挙にいとまない。

今回、海外メーカーの日本法人が加盟する日本自動車輸入組合が実施した試乗会で体験した「C220dアバンギャルド」。搭載されている1992ccディーゼルエンジンは、147kW(200ps)の最高出力と440Nmの最大トルクを発生する。太いトルク値から想像できるとおり、低回転域からもりもりと、というかんじで力が湧き上がるのが、走らせたときの魅力だ。

足まわりは少し硬めかなと思わないでもないが、それでも、日本市場にまっさきに導入されたC200ガソリンモデルで体験したAMGラインの硬さに対して、快適方向にしっかり振れている。ゴルフなどで比較的長距離ドライブが多いひとなどには、とくによさそう。

ステアリングホイールの操作に対する車体の動きは、あいかわらず、Cクラスの最良の部分。Sクラス、Eクラスという看板セダンに連なる、むかしからメルセデス・ベンツが継承してきた、ドライバーがクルマとダイレクトにつながったような、気持ちのいい操縦感覚が味わえる。

剛性感の高いシャシーとともに、しっかりとした、という印象の走りは、メルセデス・ベンツの最大の美点。メルセデス・ベンツのセダンに慣れてしまうと、ほかのブランドに移りにくいとはよく言われること。Cクラスも例外でないだろう。

対話型インフォテインメントシステム「MBUX」がさらに快適に

インフォテイメント用の大型モニターもさることながら、クロームや艶のありなしなど、“いいもの”を好むユーザーの真理をついてくる。
インフォテイメント用の大型モニターもさることながら、クロームや艶のありなしなど、“いいもの”を好むユーザーの真理をついてくる。
バケットシートの形状といい幅広のセンターコンソールといい、ドライバーの包まれ感は高い。
バケットシートの形状といい幅広のセンターコンソールといい、ドライバーの包まれ感は高い。

オプションで「リアアクスルステアリング」を選ぶこともできる。前輪の切れ角と車速に応じて後輪も操舵。低い車速では前輪と逆方向に最大2.5度まで後輪が向き、それによって狭い場所での取り回しがよくなる。いっぽう、時速60キロを超えると、後輪は同位相で動く。そのため車線変更時などの安定性が増す。

Cクラスはそもそも取り回し性がいいので、リアアクスルステアリングはわざわざエクストラコストで選ぶべき装備かどうかは、いろいろな場面で使ってみないと、にわかに判断できないというのが、私の本音。

全長4755ミリ、全幅1820ミリのボディは、先代より全長で65ミリ、全幅で10ミリとサイズが大きくなっているものの、日本の市街地で扱うにはけっして悪くない。Cクラスというと、小さなセダンという印象がぬぐえないひともいるかもしれないけれど、じっさいは、後席スペースを含めて、十分すぎるほど余裕あるサイズだ。

乗っていて、これは便利、と思うのが、進化・熟成が進んだ対話型インフォテインメントシステム「MBUX」。音声認識性能が上がったというだけあって、走行中にナビゲーションシステムを使って目的地を音声入力するのがうんと容易になったかんじだ。

ARナビゲーションもオプションで用意された。さきに、まずEクラス、つぎに新型Sクラスに導入されている“拡張現実”のコンセプトを取り込んだナビゲーション。車両の前面に広がる現実の景色がモニターの一部に映し出され、進むべき道路が矢印で示される。「直感的に判断できる」のがメリットとは日本法人。

新型Cはいろんな意味で大きくなった

エアベントに設けられた照明の色は任意で変えられる。
エアベントに設けられた照明の色は任意で変えられる。
面の張りを強調したスタイリング。
面の張りを強調したスタイリング。

生体認証システムによって、ドライバーの指紋か声を認識するのも、新型Cクラスのデジタライゼーション技術だ。それによって、シート、ステアリングホイール、サイドミラーといった運転ポジションが登録した位置に動き、同時に、コックピットディスプレイの表示スタイルも事前に登録したものへと切り替わる。

スマートデバイスとの積極的な連携も、日常的には使いやすいと感じるドライバーも多そう。スマートデバイスの操作で、車両のウインドウやスライディングルーフの開閉、ドアの施錠と解錠、スマートデバイスで検索した目的値を車両のナビゲーションに転送、車両の走行距離、燃料計、平均燃費などをスマートデバイス上に確認……と、できることは多い。

デジタル化によって快適性を上げていこうというのがメルセデス・ベンツのコンセプトのようで、じっさいに、Cクラスに乗っていると、その恩恵に浴することが出来そうに思える。クルマってそれだけじゃないだろう、と一家言あるひとにとっても、走らせて気持ちのいいC220d、無視できない存在になっていると思う。

C220dアバンギャルドの燃費はリッター18.5キロ(WLTC)。価格は679万円。価格もりっぱ。Cクラスはいろんな意味で“大きく”なったのだ。

問い合わせ先

メルセデス・ベンツ

TEL:0120-190-610

この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。