スポーツカーもかくやの走りを体験させてくれる電動車が、ポルシェ・タイカン。そこに追加されたのが、大きめの荷室のボディと、オフロードパッケージまで選べるタイカン・クロスツーリスモだ。乗ると、こんなぜいたくなステーションワゴンってあるか、と思うほど。
約1200リッターの荷室を備える旅仕様
日本には2021年9月に発表されたタイカン・クロスツーリスモ。年が明けて22年にようやく乗ることができた。チャンスをくれたのは、JAIA(日本自動車輸入組合)が開催した、ジャーナリスト向けの試乗会だ。
じぶんでも、毎日のように新車に乗っているつもりになっていたが、乗り逃しはあるもので、今回のタイカン・クロスツーリスモはそのうちの1台。タイカンのセダンに感心していただけに、私にとっては、ぜひとも乗りたいモデルだった。
はたして、試乗したタイカン4クロスツーリスモ(以下・クロスツーリスモ)は、文句なくいいクルマだった。全長4974ミリの余裕あるサイズのボディがもたらす快適性と、低重心のスポーティな操縦性、そして、合計出力350kWの電気モーターで前後輪を駆動する全輪駆動システムのパワフルさ。
ポルシェ本社は、クロスツーリスモのことを「Bold capability」と表現。タイカンがもつ可能性(性能)をさらに挑戦的に拡大したコンセプトのモデル、といった意味だろうか。挑戦的とは、私の解釈では、セダンを作っていればあるていどの市場を確保していられるが、そこにとどまらず、もっと製品としての可能性を探ってみたいというメーカーの意図を意味しているはずだ。
パナメーラ・スポーツツーリズモとコンセプト的に通底するスタイリングをもったクロスツーリスモ。トランク容量は446リッター。後席を倒すと積載量は1212リッターに拡大する。
タイカン4クロスツーリスモは満充電での航続距離360キロ。トランクにスポーツギアを積み込んで郊外へドライブしたいというひとは、オプションの「パフォーマンスバッテリープラス」を装着すれば、航続距離は最長484キロまで伸ばせる。
シューティングブレークに通じるコンセプト
長距離は、かなり得意科目のようだ。ミシュランタイヤのロードノイズが多少聞こえるいがいは、静粛性がうんと高い。車重は、バッテリーが大きいだけあって2.2トンあるが、いっぽうでいわゆるバネ上荷重が重いことでしっとりした乗り心地が実現している。
最大トルクはシステム合計で500Nm。電気モーターなので、アクセルペダルを踏み込んだときの加速は、ほぼ瞬時。エンジンのように、ややあってどーんっとトルクが出てくるのではない。クロスツーリスモは、加速したいというドライバーの意思に瞬時に応えて、短距離選手のように駆け出す。
さきにスポーツギアの話をしたとおり、クロスツーリスモの特徴は、セダンよりオフロードでの使い勝手を上げているところにある。最低地上髙はセダンより約20ミリ上げてあり、セダンの127ミリに対して146ミリが確保されている。オプションでオフロードパッケージを選ぶと、さらに10ミリ上がる。
英国には伝統的にシューティングブレークというステーションワゴンのバリエーションが存在する。クーペを改造して荷室をつけたモデルで、じっさいは狩りに使うとのことだが、最大の魅力はスタイリッシュさにある。クロスツーリスモのよさもまさにそこ。
1341万円の価格を中心に、日本におけるタイカンシリーズ全体のなかでの位置づけをみると、ベースモデルとして後輪駆動の「タイカン」(300kW、1203万円)があり、「タイカン4クロスツーリスモ」(350kW)はその次。「タイカン4S」(390kW、1462万円)の下に位置する。
クロスツーリスモ・シリーズとしては、今回のモデルの上に、「タイカン4Sクロスツーリスモ」(420kW、1534万円)と、「タイカンターボクロスツーリスモ」(500kW、2056万円)が設定されている。ぜいたくな布陣である。
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- 小川フミオ ライフスタイルジャーナリスト