先頃フルモデルチェンジを果たしたレンジローバー。その変更内容によれば新型はこれまでよりもさらに動的/静的質感が高まっているように見受けられるが、だからといっていまのレンジローバーが一気に古びてしまったかといえば決してそんなことはない。現行型レンジローバースポーツに試乗し、改めてその思いを強くした。
SVRの技術を全力投入したスポーツレンジ
ランドローバー・ファミリーのラインアップにレンジローバースポーツが加わったのは2005年のこと。走りに主眼を置いたこの初代モデルは、当時はディスカバリーをベースに仕立てられていたが、2014年登場の2代目から本流のレンジローバーと同じアルミモノコックをベースとした、名実ともにレンジローバーのハイパフォーマンス・スポーツバージョンに生まれ変わった。それから8年、細かなブラッシュアップを重ねて熟成され、試乗車の“SVR ジャパンSVエディション”をリリースするに至った。
車名に付く“SVR”はジャガー・ランドローバー社のビスポーク部門SVO(スペシャル・ビークル・オペレーションズ)が手掛けたことを示し、専門のエンジニアチームによる吸排気系や足回りのチューンにより、パフォーマンスは“歴代最速のレンジローバー”を謳うまでに向上。エクステリア/インテリアにもその手はおよんでいて、トップ・ラグジュアリーSUVのレンジローバーとはひと味異なる世界観を生み出している。
大排気量V8の胸のすくフィーリングを味わうためにある
その特徴のひとつでもあるバケットシートに身を預けてスターターを押し込むと、レンジローバースポーツは轟音とともに目覚めた。野太い低音が響くその様子はスーパースポーツカーのよう。実際、スロットルを踏み込んでいくと、5ℓV8スーパーチャージャーはさすがに575PS、700Nmという強大なパワーを発揮するだけあって、スロットル操作に対しての反応は鋭く、2.5トンにもおよばんとするSUVをドライブしてしまうことを忘れさせる。
専用のスポーツサスペンションは、こと乗り心地においては通常のレンジローバーに比べるとかなり硬めに感じられるが、大きなボディが不用意な動きを見せずに安心感を与えて続けてくれるという点を差し引けば、十分に許容の範囲内に収まるものと言えるだろう。ボディはミシリとも言わず、路面の凹凸は見事にやり過ごし、風切音の類いも見事に遮断されているから、室内は平穏そのもの。この点はラグジュアリーSUVのトップに君臨するレンジローバーの美点がしっかりと受け継がれている。
冒頭で述べたようにレンジローバーは新世代モデルがまもなく上陸する。基本ユニットはターボエンジンに置き換わるから、新しいレンジローバースポーツもそれに倣うだろう。そう考えれば、いまのレンジローバースポーツが積む大排気量V8と伝統的な機械式スーパーチャージャーによる滑らかかつ胸のすくような加速フィールを味わえるのは、これが最後のチャンスかもしれない。大胆さと繊細さが同居する英国車らしい仕立てと、ドライビングダイナミクスを追求した純粋性を持つレンジローバースポーツSVRは、現行型の集大成であり、粋人向けのベストチョイスと言えるだろう。
【ランドローバーレンジローバースポーツSVRジャパンSVエディション】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,855×2,020×1,800mm
車両重量:2,460kg
駆動方式:4WD
エンジン:4,999cc V型8気筒スーパーチャージャー
最高出力:425kW(575PS)/6,500rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/3,500~5,000rpm
価格:¥21,650,000
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- TEXT :
- 桐畑恒治 自動車ライター
- PHOTO :
- 篠原晃一